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第186話 捜査会議は居間で!

「ちょ、ちょっと待ってよジェイ。それってつまり、フライヤ先生が犯人って事?」

 思わず腰を浮かせたのはモニカ。彼女はフライヤの事を「そんな事する人じゃない!」と言える程知っている訳ではない。

 しかし、華族学園の講師をしている事もあって「お堅いけど良い人」という印象を抱いていた。

 明日香も同様だったが、何を言えば良いのか分からず、ジェイとモニカの顔を交互に見ている。

「私も信じられないわね……。そりゃフライヤ先生はお堅くて、口煩くて、厳しくて、お堅い人だけど……」

「……何か恨み事でも?」

 獅堂が思わずツッコミを入れた。

「エラ、学生時代も結構自由人だったみたいだから……」

 今ジェイが「学生時代『も』」と言った事に獅堂は気付いたが、あえてそれを口には出さなかった。エラが笑みを浮かべてジェイを見つめていた事に気付いたからだ。

 ジェイも視線には気付いていたが、今は獅堂もいるからとスルーして話を続ける。

「落ち着け、フライヤ先生が犯人と言っている訳じゃない」

「現時点では……って話だよね?」

 ジェイがフォローしようとするが、モニカは彼が口に出さない内心を見抜いていた。

 ジェイがそう言っているのは、まだ証拠が無いからであって、疑っていない訳ではないと。

「違うのか? 俺はてっきり……」

 獅堂がそう言ったように、確かにフライヤは怪しい。

「送金先が『神愛の家』ってだけだ。不正で得た金を寄付されたからと言って、不正の罪に問われないだろ?」

「そうですよね!」

 明日香は頷いた。寄付を受けた事自体は罪にはならないのだ。

 更に言えば眉我の方は、不正していたという話は出ていなかった。

 状況的には怪しくあるのだが……。

「どうする、隊長? 次は『神愛の家』に聞き込み行くか?」

 やる気を見せて自分から提案してきた獅堂。しかしジェイは腕を組んで考え込む。

 モニカ達の反応から分かる通り、フライヤは周囲の人達から「良い人」だと思われている。ジェイ自身も悪印象は抱いていない。

 もしフライヤがクロであるとすれば、彼女は周囲を騙し切っている事になる。そんなフライヤの下に獅堂を送り込んで、情報を引き出せるかと言うと……難しいだろう。

「……いや、そっちは世木のルートで当たってみる。明日は引き続き、眉我を探ってみてくれ」

「まだ調べる事が有るのか?」

 そのため獅堂をフライヤに当てない事にしたジェイ。しかし獅堂は足踏みして前に進んでいないと感じたようで、不満そうに眉をひそめる。

「世木の件を考えると、眉我の方も同じように不正をしていた可能性が考えられる。モニカ、一人借りるが、大丈夫か?」

「ん、おっけー」

「獅堂、モニカの家臣は商会の従業員で財務に強い。眉我の屋敷を調べてくれ」

「待ってくれ、隊長。屋敷は極天が調べていた。何も残ってないかも知れんぞ」

「それなら極天の本部に行ってくれ。その時は世木と眉我が『神愛の家』に寄付していた事と、それで眉我も不正をしていた可能性を疑ってる事は伝えてもいい」

「ん? それはいいのか?」

「奴が不正していたなら、極天も無関係じゃないさ」

「どこから不正取得してたかって話だよねぇ」

 うんうんと頷くモニカ。仮に眉我も不正をしていたとすれば、極天騎士団から手に入れていた可能性が高いという事だ。

「なるほど……分かった、明日はそちらを調べてみよう」

 ひとまず納得した様子の獅堂。

 この不正の調査、彼をフライヤに当てないという事が第一だが、必要な事でもあった。



 という訳で獅堂は、明日の朝ここで合流して内都に向かう事にして、今日のところは帰宅した。

 ジェイは先程の「も」の件で、エラに引きずられて二人一緒に入浴中である。

 今頃絞られているだろうなと思いつつ居間に残っているモニカ。明日香も一緒なのだが、彼女は何やらそわそわしていた。

「どうしたの?」

「その、なんと言うか……もどかしいです!」

「はい? ……ああ、自分で動けないから?」

「多分それです!」

「多分なんだ……」

 明日香自身、よく分かっていない。だからこそのもやもやなのだろう。

 現在ジェイ達は、登下校以外はあまり出歩かない日々を送っている。臨時の部隊を作った事で、日々の巡回からも外されていた。

 これらは町で集会をし、中央と地方の対立を煽っている者達に接触されないようにするためだ。

 下手に接触を持つと、それをどう歪めて利用されるか分からない。

 実際それを狙っているのだろう。最近はチラチラとこの家の様子を窺う者達が現れ始めていた。

 特にダイン幕府の姫である明日香を巻き込む訳にはいかない。下手をすれば両国の和平が御破算になってしまう。

 それ故にここ数日の明日香は、ほぼ軟禁状態。鍛錬をしようにも庭は監視されているため、ジェイの魔法で影世界に『潜』らなければいけない有様だ。

 明日香の性格上、フラストレーションが溜まるだろうという事はモニカにも理解できた。

「あ、そうだ」

 ここでモニカが思い付いた。

「いっそ遠出しちゃおうよ」

「えっ? でも、出掛けちゃダメなんじゃ……」

 モニカの提案に、戸惑う明日香。獣車に乗って出掛けたら、島を出る前に件の者達が接触してくる事が容易に想像できた。

 明日香も状況を理解できていない訳ではない。ジェイに迷惑を掛けたくないという思いが強いからこそ、今はおとなしくしているのだ。

 そしてそれはモニカも同じだ。彼女も無謀な提案をしている訳ではない。実のところ、彼女も実質軟禁状態の現状に思うところがあるのかも知れない。

「だから、ジェイの魔法を使って行くんだよ! 影を通って!」

「あっ……そっか!」

 そう、モニカの提案は、ジェイの魔法『影刃八法』が生み出す影世界を通って、見つからないように遠出してしまおうというものであった。

 今回のタイトルの元ネタは、ドラマ『捜査会議はリビングで!』です。



 『魔神殺しの風騎委員 世界平和は業務に入りますか?

 ~勇者と魔王の魂を受け継いだ俺ですが、そこまで責任持てません~』


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