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1巻発売記念SS「ロマティズ・リポート」

『魔神殺しの風騎委員 世界平和は業務に入りますか?

~勇者と魔王の魂を受け継いだ俺ですが、そこまで責任持てません~』

1巻は本日発売です。

 ロマティ=百里=クローブ、一年白兎組のジェイ達のクラスメイトである。

 野外用制服で短いポニーテールを揺らしながら、カメラを手に走り回るその姿は、入学後一月もすると広く知れ渡っていた。

 新聞の発行を任されている百里家の長女であり、報道のサラブレッド。放送部の期待の新人である。

 そんな彼女が入学して以来注目しているのは、ジェイとその婚約者達。

 自分と同い年でありながら王国を守った英雄『アーマガルトの守護者』と、敵国であったダイン幕府の姫との縁談と言うだけでも注目度は高い。

 そこに内都華族の大物である冷泉宰相の孫娘と、地元大商会の娘が加わった縁談トリプルブッキング。話題には事欠かないというものだ。


「やっぱりすごいなー……」

 自室で魔動カメラで撮った写真を机の上に並べながら呟くロマティ。

 写真に映っているのは、もちろんジェイ達。今日も商店街でひとつの事件を解決した時に写した物だ。

 机の上に並んだ写真の中から、ロマティは一枚を手に取る。

 そこにはジェイと明日香が映っていた。商店街の人達の歓声を浴びて、それに手を振って返している明日香。隣のジェイは彼女とは違う方向を向いている。

「なんて言うか……手慣れてますねー」

 ロマティ自身は、戦闘に関しては学生レベル以上ではない。しかし、家業の手伝いで数多くの本職騎士を見てきた。それ故に見る目に関しては、それなりに自信が有る。

 そんなロマティには理解できた。この時ジェイは、周囲を警戒しているのだ。

 事件を解決した直後だが、残党がいる可能性を考えていたのだろう。彼女が先程呟いた通り、実に手慣れている。

 『アーマガルトの守護者』のネームバリューも有り、一年男子の中では評判もトップクラスだ。

 彼等に注目しているのはロマティだけではない。そのような彼等を評する声を集めるのもまた、彼女の取材の一環であった。



 まずジェイだが、男子からの評価は半々だ。

 具体的には、騎士としての実力を高く評価するか、三人の婚約者の存在に嫉妬の炎を燃やすかである。

 その一方で、女子からの評価はやはり高い。

 若き英雄『アーマガルトの守護者』であり、風騎委員になってからも順調に活躍して見せている。そして何より辺境伯家の嫡男。

 言い方はアレだが、女子から見ればあらゆるニーズにお答えする夢のような男子である。

 ただし、入学時点で既に三人の婚約者がいる訳だが。

「三人もいるんだから一人ぐらい増えても……って考える人が少なくないのがまた……」

 評価を聞いて回ったロマティは、そういう声も聞いていた。

「……ま、大丈夫でしょうねー」

 しかしロマティ自身は、ジェイの事を簡単に隙を見せるようなタイプではないと評価していたので、この件について本人には特に伝えていなかった。

 知って、変に意識する事が無いようにという判断である。

 まとめると縁談関係で妬む者もいるが、それ以外からは概ね高評価だ。ただし、良い事ばかりではないと言ったところだろう。


 続けては明日香。

 最近まで敵対していたダイン幕府の姫なのだが……。

「明日香ちゃん、すごい」

 彼女の評価は意外にも高かった。町の人達の歓声を受けている先程の写真もそうなのだが、彼女は皆から好かれるタイプだ。

 少なくともロマティが取材した範囲では、彼女を嫌っている人は見つからなかった。

「まぁ、明日香ちゃんを恨もうとかは思えないよねー」

 天真爛漫な元気娘。敵国の姫とは思えないのも無理は無い。

 かく言うロマティも、既に明日香と友達になっている。

「……ハッ! もしやこれが姫のカリスマ!?」

 そう呟いたロマティだったが、普段の明日香を思い出して、すぐに首を横に振った。

「うん、カリスマじゃないな。カリスマじゃ」

 友達としてのひいき目も有るかも知れないが、なんというか親しみやすい。それが明日香という少女であり、周囲の評価であった。


 次にエラ。

 ロマティが手に取った写真には、クラスの女子達に囲まれて談笑する彼女の姿が写っていた。

 彼女の評価もまた、半々に分かれていた。

 男女で分かれているのではない。高評価であるか、「変な人」かだ。

「卒業生なのに制服着て学園に来てる時点でー……うん」

 なお、後者の方が多数である。

 ロマティの取材によると、エラを高く評価しているのは主に同じクラスの女子達だった。

 学園について詳しい彼女は、身近にいれば非常に頼りになる。相談役としてこれ以上の人がいない。

 エラは頼りになる。それは確かなのだが、同時に掴みどころが無い人でもあった。

 なんと言うか自由なのだ。そうでなければ卒業生なのに制服を着てもう一度学園に通おうとはしないだろう。

 それ故に遠目に見ている他のクラスの者達からの評価が「何あれ怖い」になってしまうのも無理の無い話である。

 かく言うロマティは、エラをどう評価しているかと言うと……。

「先輩達も、エラ姉さんには頭上がらないんだよねー」

 放送部の先輩達のエラへの対応を見て、「よく分からないけど、もの凄い人」という至極妥当な評価になっていた。


 最後にモニカ。

 ロマティは三枚の写真を並べるが、どれもモニカがメインで写っていない。ジェイ、明日香、エラ、それぞれの陰に隠れているのだ。

「う~ん、目立ってない」

 唯一の平民出身者である彼女、平民のくせに生意気なと考える者はゼロではないだろう。ジェイの手前、実際に口に出す者は今のところいないが。

 そういう反応も予想されるため、あえて目立たないようにしている処世術――

「……そういう風に思ってた事もあったなー」

――と思っていたが、ジェイ達を見てきたロマティは気付いた。

 あれは素だ、素の性格だと。元々目立つ事を好む性格ではないのだろう。

「でも、いつまで隠れてられるかなー?」

 ただ、ロマティは別の事にも気付いていた。

 というのもモニカは、なんと言うかサポートが上手いのだ。いつも三人の影に隠れているが、同時に上手く三人を助けている。

 特にジェイとは、時折息が合っている……いや、通じ合っている所を見せており、幼馴染という関係の深さを垣間見せていた。

 そのサポート能力は、領主夫人としての素養の高さにつながる。

 今は目立たず過ごせているが、いつまでも隠し通せるものではないだろう。

 それが周囲に知られた時彼女の評価はどうなるのか。それはロマティにも分からなかった。

 今回は、周囲から見たジェイ達の評価でした。


 活動報告でキャラクターデザインラフを公開中です。

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