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1巻発売記念SS「この教育者、教育に悪過ぎるゥッ!!」

『魔神殺しの風騎委員 世界平和は業務に入りますか?

~勇者と魔王の魂を受け継いだ俺ですが、そこまで責任持てません~』

1巻は7月5日発売です。


※入学してすぐの頃の話です。

「……すっごいよね」

 掃除の手を止めたモニカが、()()を見上げながら呟いた。

 ここはポーラ華族学園、入学式を行った大講堂。定期的に生徒が清掃を行うのだが、その最中の出来事だった。

 彼女の視線の先には、この大講堂のシンボルとも言える物。華族学園の創設者『賢母院』ポーラの肖像画だ。

 そのままモニカが肖像画を見上げていると、モップを手に元気良く駆け回っていた明日香が気付いて近付いて来た。

「あたしも聞いた事があります。ホントにすごい人だったらしいですね」

「あ、ダインの方でも有名なんだ?」

「セルツとダインが分かれる前から活躍されていた方らしいですし」

 セルツ連合王国とダイン幕府、どちらも祖は魔法国時代に召喚された武士。

 『賢母院』ポーラは魔法国時代の人であるため、ダイン幕府でも彼女の事は語り継がれていた。

 魔法国末期を生き抜いた彼女は「無能な領主は民に迷惑だ」という考えに至り、領主となる華族を育てるために華族学園を設立したと言う。

 結果としてセルツは繁栄し、周辺の四国を加えて連合王国となった。

 連合王国発展の礎を築いた偉人、偉大なる教育者として彼女の名は今に伝えられている。


「……何食べたら、あんなのおっきくなるんだろ?」

 だが、モニカが注目していたのは別の所だった。

 具体的には肖像画に描かれた優し気に微笑む『賢母院』の顔、その少し下辺りだ。

 普段はパーカーを着ているし、大ボリュームのふともものおかげか目立っていないが、モニカもなかなかのものを持っている。

 そして明日香は、それを更に上回っている。ジェイの婚約者の中では一番大きい。

 しかし……『賢母院』ポーラは、その遥か先の高みにいた。

「…………実は盛ってる?」

 写真ではなく肖像画なので、その可能性は有る。

「いや、それは無いか……そもそも何のために」

 しかしモニカは、自らその可能性を否定した。

 そもそも学園の大講堂に飾る創設者の肖像画の胸を、どういう理由で盛るのかという話だ。

 しかもこの肖像画、今の男性の学園長と同じローブを身に着け、フードも被っているため尼僧のようにも見える。

「開き過ぎじゃない?」

 ただこのローブ、学園の教師の制服のようなものらしく、前が開いたコートのような形状をしている。

 当然、ローブの下に着ている物が見える訳だが……。

「上半分丸出しだよ、これ! ホントに教育者!?」

 そう、『賢母院』がローブの下に着ているのは、胸元を大胆過ぎる程に開いて北半球が露わになった装束なのだ。

「この学園の創設者ですよね?」

 思わず声を張り上げてツッコむモニカに、明日香が首を傾げながら疑問を口にした。

 確かに明日香の言う通りなのだが、モニカは声を出して言いたかった。「この教育者、教育に悪過ぎる」と。

「こんな人が教壇に立ってたら勉強にならないよね!?」

 そんな声を出すと、他の清掃に参加していた生徒達に気付かれてしまう。

 彼等はモニカの言葉を聞くと、同意だと言わんばかりにうんうんと頷いた。男女問わず。

 男子はもちろんの事、女子から見ても婚活を考える者にとっては肖像画だけでもライバル足り得る存在であった。


「はいはい、お掃除の手が止まってるわよ~」

 そのタイミングでやってきたのはエラ。

「モニカちゃんの気持ちも分かるけどね」

「ですよね!?」

「私の在学中も、この肖像画は何度も話題になっていたわ。でも、彼女が偉大な教育者であった事も確かなのよ?」

「そうなんですか? あ、授業中はもっとおとなしい格好をしていたとか?」

 そう言いつつ、モニカは自分でも微妙だと感じた。

 彼女も大きめのパーカーを着ているが、隠し切れているとは言い難い。

 肖像画通りのサイズの物を完全に隠し切る方法があるならば、それを教育者として伝授して欲しいものである。

 一方エラも在学中この肖像画を見てきた訳で、実はモニカと同じような事を考えた事もあった。それだけに、この絵については色々と知っている。

「先生から聞いた話なんだけどね……この方、教師としては凄く怖い人だったそうよ」

「厳しい先生だったんですか?」

「そうよ、明日香ちゃん」

 肖像画に描かれた美しさとは裏腹に、教師としての『賢母院』は、鬼教師として数々の伝説を残していた。

 『賢母院』が現役だった頃の学園では、彼女を恐れない生徒は一人もいなかったとか。

 いや、生徒だけでなく教師からも恐れられた存在。それが伝説の教師『賢母院』ポーラであった。

「ええ、だからこんな格好していても、周りの人達はそれどころじゃなかったんじゃないかしら?」

「えぇ……」

 要するに、誰も彼女の格好にツッコめなかったという事である。

「……うん、まぁ『無能な領主は民に迷惑』とか言っちゃう人だし、『無能な教師も迷惑』とか言いそうだけど……」

 悲しい事に、その説には一定の説得力が有った。


「それが恐い教師だったと言う事が忘れ去られたらおっぱいオバケ扱いになったと」

「……まあ、そういうことね」

 そう、時は流れて『賢母院』が引退して学園を去った昨今では、彼女の恐ろしさを知らない生徒達によって肖像画が再評価されるようになっていた。その方向性はともかくとして。

「気持ちは分からなくもないけどさぁ……」

 ぼやくモニカ。彼女はまだ知らなかった。

 そう遠くない未来、おっぱいオバケが本当に彼女達の前に姿を現す事を……。

 ポーラの肖像画を見た瞬間、タイトル通り「この教育者、教育に悪過ぎるゥッ!!」と思いました。


 そんな挿絵が掲載されている1巻は、いよいよ明日発売です。

 どうぞよろしくお願いいたします。


活動報告で、モニカのキャラクターデザインラフを公開しました。

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/332170/blogkey/3172031/

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― 新着の感想 ―
[一言] 1巻の挿絵で確認したでござる、これは確かにおもちもちもち雪見だいふくにござるよ
[一言] いや、おっぱいオバケてw
[一言] おっぱいオバケw 母上昔っから痴j、ゲフン、教育に悪い格好だったんですねw
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