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1巻発売記念SS「ここに3つの制服があるじゃろ?」

『魔神殺しの風騎委員 世界平和は業務に入りますか?

~勇者と魔王の魂を受け継いだ俺ですが、そこまで責任持てません~』

1巻は7月5日発売です。

「えっ? 制服って三種類もあるんですか?」


 これは、ポーラ島に到着して入学の準備をしている頃の話。

 昴家は、まず明日香の制服を選ぶ事から始めていた。

 ポーラ華族学園には「屋内用」「野外用」「実戦用」と三種類の制服が有る。

 デザインは屋内用がブレザーの学生服に、野外用はボーイスカウトに、そして実戦用は乗馬服に近い。

 華族学園への入学が決まっていたジェイ、縁談が上手く行けば入学すると決まっていたモニカは既に用意していたが、明日香は流石に用意できていない。

 最優先で用意してもらえる事になっているため、どれを普段から使うか選ぶ必要が有った。

「へ~、どれでもいいんですね」

「ええ、実習授業では野外用か実戦用を着ないといけないけど」

 その一方で、教室での授業はどの制服でも良い事になっていた。

 日本の学校で例えると屋内用が学生服、野外用が体操服&ジャージ、実戦用が試合用のユニフォームに近いだろうか。

 ジャージ姿で授業を受けるようなものと言えばイメージしやすいかも知れない。


「それならば! あたしは実戦用制服を選びます!」

 明日香は迷う事無く実戦用の制服を選んだ。

「常在戦場の心意気! 素晴らしいです!」

「う~ん、ダイン武士……」

「セルツ騎士も、そういう所は有るぞ?」

 モニカがささやかにツッコみ、それに対しジェイがツッコミを入れた。

 セルツ騎士も魔法国時代に召喚された武士の末裔なので、根っこの部分は同じである。

「ジェイも実戦用だよね?」

「そうだな」

 実戦用制服を選ぶ生徒は、騎士団を目指していたり、将来領地領民を守るために戦う立場になる者が多い傾向にあった。ジェイも後者である。


「そう言うモニカは野外用だったな」

「う、うん……」

「ちょっと意外ね~」

 照れ臭そうに頷くモニカに対し、エラは少し驚いた様子だった。

 短い付き合いであるが、モニカの性格がインドアタイプである事には気付いていた。エラは経験上、そういうタイプは屋内用の制服を使うと考えていたのだ。

「その、こういうファッション自体は嫌いじゃないんだよね」

 視線を逸らしつつ答えるモニカ。

 実は、彼女がアウトドア系のファッションを好むのはジェイの影響だったりする。

 幼い頃から続けていた森での魔法の特訓。それに付き合っていたモニカは、森で動きやすい服装をするようになり、それがそのまま彼女の好みとなったという訳だ。

 なお彼女はズボンの丈を短くし過ぎたため、スパッツを着用していた。そのためズボンの裾からスパッツが覗いていたりする。

 更にニーソックスも穿いているが、それがかえって彼女のフトモモの肉付きを強調していた。


「で、ここからが大事なんだけど……装飾品とかは割と自由なのよ」

 ここでエラが、卒業生としてアドバイス。その一言に明日香はピンと来なかったようだが、モニカの方は目を輝かせる。

「制服、ですよね?」

 信じられないと言いたげなジェイ。彼の中には前世における学校のイメージがあった。

「そういうのって、身嗜みを整えろって禁止にされるんじゃ……?」

「そういうのも有るんだけど……場合によっては命にも係わるからね」

 真剣な表情で疑問に答えるエラ。唐突な重い話に、モニカと明日香は思わず顔を見合わせる。

「元々は、家のしきたりとかの関係だったらしいわ」

「しきたり?」

「例えば『公の場に出る時は家紋の入った装飾品を身に着けなければいけない』ってしきたりが有る家の生徒に、校則だから装飾品禁止って言って良いと思う?」

「それは……」

 言葉に詰まるジェイ。前世の感覚では校則優先だろうと思うが、華族家の嫡男として転生()まれ育った今では、学園に家の仕来りを無視されたら問題では?と思う自分も居た。

「それが魔法使いの家で、身を守るための護符とかだったりすると……ね?」

「…………何かあったら大問題、だね」

 一見ただのアクセサリーに見える物が、強力な魔法の護符だった。商人の娘であるモニカは、実例をいくつか知っていた。


「あと、実戦用制服のロングコートもね。そっちは私も詳しくないんだけど」

「ああ、それは……」

「あたし分かります! 戦闘スタイルの問題ですねっ!」

 明日香が手を挙げて元気良く答えた。

 乗馬服のような外見の実戦用制服は、更に上着として浅葱色の長袖ロングコートを羽織る事になっている。

 実戦用と称されるだけあって、そのロングコートとは最低限の防具としての役割を担っていた。

 最低限と言っても各所の裏地で補強されている等、実戦用としては及第点の物ではあるが。

「要するにアレ、ソフトレザーアーマーだよね」

 モニカの言う通り、防具としては軽量の物となる。

 しかし、それは明日香の言う通り戦闘スタイルの問題を抱えていた。

 華族家、特に地方領主となると周辺に棲息するモンスターに合わせた戦闘スタイルが確立されているものだ。

 たとえば重装備で重量の有る武器を振り回す戦闘スタイルを確立している家の者に、在学中の三年間は軽量装備で戦う練習をしなさいと言ってしまって良いのかという話である。

 という訳で、こちらも装飾品と同じく自前で用意するなら自由という事になっていた。

 規定のロングコートに追加装甲を着ける者も多いらしい。

「コートの代わりにプレートアーマーを装備してる子もいたわねぇ」

「そういうのもアリなんだ……」

「流石に教室の中じゃダメよ?」

 それは規定のロングコートでも同じである。


「ジェイはどうするんですか?」

 実戦用制服を選んだ明日香が、同じ物を選んでいるジェイに尋ねた。

「コートか? 実戦で使っている物をそのまま使う事にしてるぞ」

 袖無しの黒いロングコートだ。その見た目は陣羽織に近い。ジェイは左肩には追加装甲を装着していた。

「モニカは、上着を羽織るんだったな」

「う、うん、フード付きのパーカーをね」

 フード付きパーカーは、モニカが小さい頃からの森に行く時の愛用品であった。そういうのも装飾品扱いとなる。

「明日香も、コートは好きにして良いんだぞ」

「……今から用意するのは難しくない?」

「制服の方も大急ぎでやってもらう訳だし……」

 当然明日香もロングコートは規定の物以外を着用しても良い訳だが、今から新調するのは時間的に厳しいものがあった。

 しかし、明日香は慌てなかった。

「あ、それなら大丈夫ですよ! こちらに来る前にセルツ風の服をいくつか手に入れましたから!」

 そう言って彼女は、自分の荷物の中から一着のコートを出してきた。

「ほら、見てください! この桜色!」

 嬉しそうに語る明日香。その言葉通り、軽やかなロングコートだ。いかにも春めいた色合いで、明日香によく似合いそうだ。

「私、コートはこれにします!」

 制服こそ着ていないが、明日香は桜色のコートを羽織ってくるりんと回って見せる。

 軽い素材なのか、コートの裾がドレスのスカートのように翻った。

「良い色じゃないか」

「可愛いと思う、うん」

「とっても良く似合うわ~」

 ジェイ達が口々に褒めると、明日香は頬も桜色に染めながらはにかんで笑みを浮かべるのだった。


 それから学園で使う小物類について話しながら、入学後の生活に思いを馳せるジェイ、モニカ、明日香の新入生組。

 この時、彼等は気付いていなかった。


「私は、ケープでも羽織ろうかしら?」


 卒業生のはずのエラが、一緒に学園に通うために自分の制服を用意している事に……。

活動報告の方でも触れていますが、書籍化にあたりヒロイン三人の制服が少し変更になりました。

という訳で、今回はそれに関する話でした。


https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/332170/blogkey/3170684/

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/332170/blogkey/3171183/


エラ、モニカのキャラクターデザインラフは、明日以降更新していきます。


記念SSも更新していく予定ですので、こちらの方もよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 作中でも一回、制服の話は出てきているので新鮮味はないなーという感じ。 むしろ、大名屋敷に突してきた北町同心のケジメが気になる。 状況次第では金貸し程度なら無礼討ちも許されるからなぁ。 国の一…
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