No.098 先のフアン
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御使が騎兵隊を連れてきて1日が経った。
この国、軍国ルベルトで残っているのは僕たち5人だけだろう。
多くいた騎兵隊たちも今は分散、少しの数の騎兵隊と1人の御使だけが結界を包囲して壊そうと躍起になっている。
「他の騎兵隊は他の国かな」
「お父さまは大丈夫でしょうか?」
「シャルちゃん、大賢者さまと大聖剣さまがいるから大丈夫だよ」
シャルは家族の心配を、それをチルが励ましてる。
アイリスは家族を殺されているから可哀想だな。
ムウは……相変わらずなに考えてるかわかんない。
「カズラ、これからどうするの?」
「この国を出て、違う世界に行こうと思ってる」
「でも、浮かない顔だね」
「それに必要な素材がないからね」
「何が必要なの?」
「力を秘めた道具。例えば魔石とか」
「……魔石なら持ってるけど、足りないよね」
それは1つの魔石。
それなりに力が秘められていて、これが後100個あれば足りるだろうな。
「それだと100個必要」
「100個も無い。ここには」
「そうだよね」
そう、素材が無ければ根本的にこの世界から出られないのだ。
「……ここには?」
「うん。WonderLandに行けばあるけど、あそこは隕石が落ちたところだから」
「そ、そっか」
流石に隕石が降っただろうから残ってはいないだろうな。
残ってるかも、という思いで行くのは良くないだろう。
――――ッ
「7回目」
第七のラッパが吹かれた。
その瞬間、暴食で音を喰らった時のような、異様な静寂が訪れる。
そして、御使と騎兵隊は消滅した。
「眷属陰法 蝙蝠の目」
1滴の血から数万匹の蝙蝠を作り出し外の状況を確認させる。
血の混じった雹と火が地上に降り注ぎ、地上は火に呑まれてる。
海が血に赤く染まり、海の生物が死んでいる。
川は禍々しく濁り瘴気を放っている。
太陽、月、星などの天体が不規則に欠けて暗闇を作り出している。
アバドンと呼ばれる異形の物が呼び出した蝗の死体がそこら中に転がっている。
御使と騎兵隊によって殺された人の死体がそこかしこに転がっている。
世界は最終的な終末を向かえ、ワンダーランドに開いた穴の反対側から消えている。
「ワンダーランドに追い込んでる?」
「カズラ、なにかわかった?」
「うん。ワンダーランドの方に、奈落の穴に誘い込んでる感じ。でもそこに逃げないと、何もない空間に呑まれて死ぬ事になる」
何もない空間。
考えられないし、理解できない。
よくある、宇宙の外側とか言う意味わからないヤツと同じだろうか。
「なら行くんだよね?」
「もちろん。そこに行くしかないからね」
で、出来たらムウの魔石が欲しいんだよな。
「宝玉の力よ」
僕の後ろに5つの宝玉がフワフワと浮いている。
「怠惰に。ノアの方舟」
世界樹から船を造り出す。
それに乗り込み、血の海を渡ってワンダーランドに向かう。
「アイリス、未来は?」
「見えない。ブレててよくわかんないの」
「ありがと」
それから船に揺られる事5時間。
ワンダーランドがあった場所についた。
そこには奈落、底の無いという意味不明な穴があり、海水が流れ落ち続けている。
「この船はなんで落ちないの?」
「ん? だって、波に乗ってる訳じゃないから。ほら」
船は宙を浮き、奈落の上を1周する。
完全にワンダーランド全てが呑まれたようで、魔石も残って無さそうだ。
「よし、パペットマジック」
ムウが声高らかそう言うと、奈落を外れた所に魔方陣が現れて、大きな大きな城が現れる。
「これは!」
「これが魔じゅちゅ……これが魔術です!」
ムウの中では噛んだことは無かった事になってるのかな?
まぁいい。
「あそこに?」
「うん」
ムウの指示で近づくと城門が音をたてて開いた。
その音は歯車が噛み合うなんとも心地がいい音だったが、時が時のため、堪能することが出来なかった。
「ムウ、お客人か?」
「ただいま」
そこにいるのはエルフの耳を持つゴスロリ。
お人形を抱えているが、そのお人形がなんとも可愛いって言うか、ミッ◯ーなんだよ。
マジで止めてくれない?
消されたくないから。
「初めまして、でよかったよね?」
「はい。僕は吸血鬼第二始祖の鬼灯葛です。以後お見知りおきを」
「これは丁寧に。私は“憂鬱”の魔術師、ドミニカ・フィンゼル。君と同じ宝玉持ちだ」
「ッ」
僕の口から声にならない声が上がる。
宝玉は『7つの大罪』から来てるんじゃないのか?
「そうは言っても私は最悪だぞ? 能力は“呪い”。効果は他の宝玉は持てない。不老不死。姿を変えられない。他にもあげればキリがないからな」
「そ、それはなんとも」
なんて使えない宝玉なんだ。
最初に奪おうとか思っちゃった。
「まぁ、悪い事だけじゃないがな。例えば、痛みを感じない。傷がつかない。魔力は固定とか良い呪いもあるんだ」
「それでも不幸があるなら僕はいやだな」
「正直よな」
うん、この人アーサーとメリダと同じくらい生きてる。
「それで、この世界はもうすぐ終末を向かえるのは知っているよな?」
「はい。それから逃げるためにここに来ました」
「……てことはアレか? 日本とかグロンダントとかエクスターチとかギャンに行けるのか?」
「ま、まぁ一応は」
そう、次に行く場所を決めなくては。
僕としては時間の流れ的に日本に行って資材と魔石を大量に集めたい。
「それで、方法は?」
「カズラ、持ってきたよ」
そこに、ムウが色々な可愛い人形を引き連れてやって来た。
いつの間にか取りに行っててくれたのか。
「魔石が必要なのか」
「よく、これだけのを集めましたね」
「まぁ、運がよかったんじゃ」
呪いにはまだまだ強いのが多そうだ。
この人は絶対に味方ではない。
敵でもないけど。
「なら魔石を貰います。錬金術 “世界を渡る鍵”」
「急げ、強い力が近づいてる」
「開け、世――――」
鍵を発動させる前にソイツは来てしまった。
「逃げるのか? 折角世界の終末を見れると言うのに」
「痛って……ルトリア。いや、名前なんだ?」
ルトリアの体を乗っ取った堕天使が現れた。
コイツには勝てる気がしないしね。
「名前、か。忘れたよ、名前なんて。ふーん、その鍵面白いね」
堕天使は嫌な物に目をつけてしまった。
「ロイヤルストレートフラッシュ」
「ドラゴンブレス」
「神器 聖剣エクスカリバー」
「魔法銃 破錠攻撃」
「破滅の呪い」
ムウ、着物を着た男の人、伝説の勇者のような格好の男、ヤード、ドミニカが渾身の技を発動したのだろう。
流石の堕天使も不意打ち……僕にしか警戒してなかったようで避けられず少し、ほんの少しの時間が出来る。
その時間を無駄にするわけにはいかない。
「開け、世界を繋げろ」
僕は日本をイメージする。
ただ、日本は日本でも日本の近くの海を。
飛ばすのはこの城と、城にあるものと協力してくれたワンダーランドの人、5人と、シャル、チル、アイリスの3人。
マージでブクマしてくれた方ありがとなのです。
モチベが上がります
出来たら☆を★に変えてほしいな、星だけに……




