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宝玉の吸血鬼。~人間を辞めきれない大罪人~  作者: ホタル。
4章 遊戯者編
98/155

No.097 黙示録のそのサキ

更新!

感想、ブクマ、ptぜひぜひくださいまし!



 町に戻ると人が死んでいた。

 それも、何人も何人も沢山沢山死んでいた。


「カズラ」


 アイリスが僕の名前を呼んだとき、シャルが虎のような目をしていた事を僕は知らない。


「なに?」

「未来が、未来が見えます」

「ど、どんな!」

「太陽や月、煌めく星々が壊れます」


 太陽が壊れたらヤバくないか?

 重力とか、僕の知識じゃ解決できない影響が出てしまう。


「ちなみにアイリス。それは何時くるんだ?」

「今から1日後です」

「そ、そうか」


 僕の予想だと普通に考えたらさっき思ったようや重力がうんたらかんたらになるが、なんとなく大丈夫な気がする。

 僕の記憶がただしければ、天使のラッパ……黙示録(もくしろく)は7まである。

 今現在3回ラッパが鳴ったからまだ壊れない。




 24時間が経ち、


 ――――ッ


 アイリスの言う通りラッパが吹かれた。

 そして、太陽や月、星々が1/3ほど壊れた。


「暗くなった……だけ」


 普通よりも暗くなった。

 けど、暗くなるのは危ないな。

 気持ちを沈めて、良くない物を呼び寄せかねない。


「実際にお出ましか」


 お出ましたのは「虚ろナル者」。

 黒い(もや)で実体が定まらない怪異。


「神器 木刀。陽法 新・翠の太刀 裁き」


 木刀から神聖な世界樹の根が虚ろナル者を貫いて、消滅させていく。


「シャルたちは大丈夫?」

「は、はい。大丈夫です」


 どうやら今回は倒れてないらしい。

 

 ――――ッ


「マジかよ」


 第五のラッパが吹かれた。

 間隔が短すぎる。

 それに不規則で対処がダルい。


「星が降るのか」


 星が落ちていくのが見える。

 方角的には、


「わ、ワンダーランドが」


 ムウを置いていったヤードが行った場所であり、ムウの生まれた地でもある。

 隕石による衝撃波で強風が吹き海は荒れ果て、草木は燃える。


「まだ終わりな訳がない」


 更に続くとしたら星が降ることだが、中々経っても星が降る事はない。

 変わりに起きた現象は、7/22くらいの人の額に変な印が付いた事。


 それからは特に何も起きなかった。

 それが人々の不安を掻き立てて、世界の消滅まで刻一刻と迫っていた。



 ※



 ソレが来たのは突然だった。

 僕たちは宿でムウと結界を張り万全の状態にしていた時に、外から悲鳴が聞こえ始めて気がついた。

 ソレは馬に似ていて、金の(かんむり)をかぶり、異形の翼と(さそり)の尾を持つ何かだった。

 そして、ソレが率いている物が問題だ。

 (いなご)飛蝗(ばった)などの虫を引き連れていて、決して人を殺してはいない。

 ただ蠍の尾で刺し、蝗たちに噛ませて毒による激痛を与えるだけ。


「カズラ、襲われてない人もいます。私と同じく額に印がある人たちです」


 アイリスが言った通り、額に印がついている人たちは一切襲われてない。

 僕にもチルにも印はついているが、シャルとムウはついていない。


「ムウ、1人で大丈夫?」

「うん。頑張る」

「頼んだ」


 僕は1人、結界から出てソレを倒しにいく。


「ん? 自棄に強い光だな」


 ソレはそう言った。


「1人くらいは構わんよな」

「黒鬼」


 蠍の尾が僕を貫かんと伸びてきたが、黒鬼で受け流す。

 その隙をついて蝗が僕に群がってくる。


「僕は虫が嫌いなんだ!」


 自分の体を燃やす事で虫を寄せ付けないようにする。

 ついでに、魔法収納袋から虫除けスプレーと殺虫剤を出して応戦する。


「な、なんだその匂いは。や、やめろ」


 ――――ジジジジ


 ソレにも蝗たちにも効果があった。

 てか、絶大。


「やめろ、やめろ人間風情が!」


 バンッと音をたてて衝撃波を出した。

 その影響で近くにいた人や蝗は吹き飛んでいく。


「はぁ、はぁ、はぁ。よし、人間、自己紹介をしてやろう」

「いえ、遠慮しときます。陽法 紺の太刀 戯れ」


 斬撃がソレに向かっていくが傷1つつけられない。


「どうした? 威勢がいいのは口だけのようだな」


 馬がパカッと走る音と共に僕は蹴られていた。

 一切反応できなかった。


「チッ」


 痛みを我慢して立ち上がる。

 ソレは相当な強さを持っている。


「私の名はアバドン。人間、お前の名も聞いておこう」

「吸血鬼、第二始祖の鬼灯葛」

「吸血鬼、とな? 面白い種族だな。なにかは知らんけど」


 知らないんだ、それは残念。


「また会うかもしれんな、神の使徒よ」


 それだけ言い残してアバドンは消えた。

 それに伴い、蝗たちも姿を消した。


「ただいま」

「お帰り、カズラ」

「お帰りです、カズラ」


 シャルとアイリスが張り合うように「お帰り」をしてくれる。

 シャルの方が年齢が上で、背も大きいからか勝ち誇った顔をしている。


「小さいのが好きっていう人もいるし」


 アイリスはそんな事をボソッと口にする。



 ※



 暇な日が続いた。

 どこが安全かわからない今、この結界内が1番いいだろう。


「5ヶ月、ですね」

「そうですね。ご飯はカズラのおかげで辛くはないけど」

「他の人は違うだろうね」


 チル、シャル、ムウが口々に言う。

 アバドンが去ってから5ヶ月。

 その間、ラッパは吹かれずに、蠍の尾に刺された人と、蝗に噛まれた人たちが苦痛で死ぬことが出来ないという状態が続いていた。

 最悪なのは、苦痛により「殺してくれ」と頼み込む人が現れた事。

 それ自体は普通だけど、その先が地獄の始まりだった。

 言葉通り、死ぬ事が許さ(・・・・・・)れなかった(・・・・・)

 心臓を貫いても、頭を潰しても死なない。

 驚異的なスピードで回復し、痛みだけが襲うという最悪な結果に。


 それだけだったらよかった。

 が、そうもいかず、額に印が出た噛まれなかった、刺されなかった人たちが襲われ始めたのだ。

 苦痛に苦しむ人たちによって。


「シャルたちは何も異変はな――――」


 ――――ッ


 急に第六のラッパが吹かれた。

 窓から外を見ると、天が文字通り割れてそこから4人の神の使い、『御使(みつかい)』と、それが引き連れる数えきれないほどの騎兵隊。

 御使は指示を出して地上の人間を殺させる。

 額に印があっても、苦痛により苦しんでいても関係なし。

 馬は火を吹き、煙を出し、硫黄を吐き人々を殺し始める。 


「カズラ、大丈夫なの?」

「大丈夫。シャルとアイリスとチルは外を見ないでね」


 カーテンをシャッと閉める。

 それと、宝玉の力も惜しみなく使い結界を強化する。


「僕は見てもいいんだ」

「うん、まぁ。ムウなら大丈夫でしょ、って思ってね。それに、ワンダーランドに未練なんて無いでしょ?」

「うわぁ。そんな事言っちゃう、普通?」


 それがわかったのは最近だ。

 ワンダーランドに隕石が落ちて、早い段階でムウはケロッとしていた。

 強がり、という可能性もあったがそれは消えた。

 だって、寝ながら「お人形」って言ってたんだもん。

 そこは普通、仲間の名前だろって思ったよね。


「そうだよ。未練はない……人形以外」

「どんな人形なんだ?」

「古い人形なんだけど、黒い耳と赤いパンツが特徴的なネズミの人形。名前は確か……ミ――――」

「――――ストーップ。それ以上言ったらダメ。消されちゃうから。色々な意味で消されちゃうから」

「う、うん。わかった」


 ムウは僕の剣幕に押され黙ってくれた。



ブクマが増えてた、嬉しいのだ


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