表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宝玉の吸血鬼。~人間を辞めきれない大罪人~  作者: ホタル。
4章 遊戯者編
97/155

No.096 天使のモクシロク

更新!



「ァ――――」


 耳を(つんざ)く音にならない音が辺りに響きわたる。

 そして、何人かの子供は鼓膜が破れたのか耳から血を流して倒れだす。

 大人もバタバタと気絶しだす始末。


「暴食よ、音を喰らえ」


 次の瞬間、嫌というほどの静寂が訪れる。


『人間風情が』


 空気を震わせながら脳に直接声が響いてくる。

 天使?からしてみると僕は人間なのか。

 なら、ここは1つ自己紹介といこうじゃないか。


『僕は、吸血鬼第二始祖の鬼灯葛です。以後、お見知りおきを』


 天使?を真似て直接語りかける。

 そういえば、ドリーさんも最初に会った時は直接語りかけてきたな。


『吸血鬼? ほう、神の使途の力が入ってるのか』

『神の使途の力?』


 そうなのか?

 それよりも、ルトリアは天使?の力で倒れちゃったけど、


『帰るつもりはないのか?』

『そうだね、帰るつもりは一切(・・)ないよ。うん、神の使途は楽しそうだ』


 そう言うと天使?はルトリアの体に入り込んで、


『これはいい。うん、人の体も存外に悪くないと言えよう』

『……天使って核とかあるの?』

『どうした急に。それよりも、この音を止めてくれないか? こっちも音攻撃はしてないんだから』

「わかった」


 音を戻す事により、風の音が、物の擦れる音とが鮮明に聞こえる。

 周りの人たち(ことごと)く倒れてて、残ってるのは僕と天使が入ったルトリアだけ。


「そういえば、核があるかって話だね。無いよ。簡単に言うと精神体って事」

「そっか。なら……暴食よ、ルトリアを喰らえ」

「堕天使の咆哮」


 ルトリアに迫っていた影が弱まり動かなくなった。

 いや、待て待て待て。

 一応、宝玉は神の力なんだよ。

 それをそう簡単に防ぐって何者?

 本当に天使なのか、言ってたように堕天使なのか?


「終焉のラッパ」


 ――――ッ


 何処からとなく出したラッパを吹いて、音のない音がなる。

 鳴っているのに鳴っていない。

 聴こえるのに聴こえないという不思議な現象が起きて、


(ひょう)?」


 降ってきたのは雹だけでなく火も降ってくる。

 草木は火に当たらずとも勝手に燃え出し、地面も火に包まれ始める。


「さぁ、どうする? 私はこの辺でお(いとま)しようかな」

「流石に全員を助けようとすると見過ごされないよね」


 陰法で炎を飛ばすが、ルトリアの実体が無くなったのか透けて後ろの家にぶつかる。


「シャルとチル、アイリス、ムウ。ついでにヤードは守るか」


 5人を守れるように世界樹で囲って、周りの重力を滅茶苦茶にして攻撃がいかないようにする。

 (とおる)の持ってた嫉妬の宝玉が欲しい。


「楽しんでる? 世界を終わりになる瞬間を見れるんだよ。じゃあ」


 そう言い残して悪魔は消えた。

 そして、人々が目を覚ましだし、見た光景に阿鼻叫喚する。

 子供たちは耳から血を流して泣き叫び、親はそれを見て荒れ狂う。

 先に、


「回復陰法 治羽(ちう)の雨」


 血の雹と光の雨が降り、人の外傷を癒し、心を傷つける。


「や、野菜が燃えてる!」

「い、急いで消火しろ」


 人々が慌てて火を消し始める。


 やっとの事で火を消し終えたが、酷い有り様。

 家々は所々燃え跡が残り、雹に当たり怪我をした人もちらほら。

 1番の最悪な被害は草という草全てが燃えて無くなった事。



 ※



 それから1週間、嫌というほど何も起きなかった。

 もちろんこれだけの被害があったから剣舞祭は中止。

 更には、植物を育てても芽が出たらすぐに燃えて灰になってしまうという問題が起きた。

 暴食で理を書き換えようにも、効果がまるでない。

 相手の力は僕と同等かそれ以上という事がわかってしまった。

 町の雰囲気は色々あったせいで悪くなっていたので、町の外れの港までみんなと来た。


「カズラ。カズラの力でどうにかできないの?」

「ごめん、シャル。試したけどダメだった。そして、5人なら確実に助けられる。後、何人かはいけるだろうけど、それを間違えればみんな助けられなくなるから」


 切り捨てるしかない。

 僕は暗にそう言う事しか出来ない。


 ――――ッ


 すると、またも音にならない音が鳴り、巨大な山と見間違うほどの火の塊が港の、海の方に落ちていく。


「思い付かない、思い付かない」

「カズラ?」


 ダメだ、全くもって思い付かない。

 どうすれば止められる?

 もっと僕に知識があれば。

 もっと僕に力があれば。


 いっそのこと、ここから逃げたいけど、肝心の素材がなくて世界を渡る鍵を作れない。


「ねぇ、カズラ。アレ」


 シャルが指さすのは海……海なのか?

 それは血のように所々が赤く不気味な雰囲気を出している。

 それだけに止まらず、船が爆発する音が響いて、海の魔物たちの苦しそうな(うめ)き声が聞こえてくる。


 第二のラッパが吹かれた。

 このまま行けば、次は1週間後に第三が来ると予想される。

 

「カズラ。ありがと。でも僕はWonderLandに帰らないとだから」

「……そっか。そうだよね」


 ムウは一緒にいて結構楽しかったから残念だ。

 それに、鬼についても色々と聞きたかったのに。


「ムウは残ってていいです。帰るのは私1人で帰ります。そうすれば、ムウ、あなたは生きてけます」

「で、でもヤードが死んじゃうかもだし、ルクスたちも」


 ワンダーランドの上位5人のムウは他の3人が心配なのか。


「ムウには生きてほしいんです」

「でも、それならみんな一緒に――――」

「――――それは出来ません。ムウをお願いします」


 そう言ってムウを気絶させたヤード。

 そのまま、海の上を走るという荒業で行ってしまった。


 良くも悪くも話は無理矢理にでも進むようで、


 ――――ッ


 第三のラッパが吹かれた。

 時間にして1時間くらいしか経過してない。

 今回は人的被害は少なかったが、いくらなんでも早すぎる。


 すると、空から異様な力を感じ、見てみると気持ち悪い隕石?が空を架けている。

 そこからなにかが沢山放たれて水という水に向かって一瞬にして落ちた。

 僕は一切反応できなかった。


「終わり?」

「みたいだね」


 それ以上は特に何も起きなかった。

 これで終わりな訳がない。


「カズラ殿は味覚を感じますか?」

「うん、感じるよ。どうしたの、チル」

「これを」

「これは、水?」


 チルは無言で頷いた。

 飲めという事だろうな。

 一思いに水を飲む。


「……苦い」


 苦いし気持ち悪い感じがする。

 例えるならそう、僕が吸血鬼になった時のドリーさんの血が僕の血を喰らっていたような感じがする。

 何か悪いものが僕の中の大事な物を喰らっていた感じ。

 今は吸血鬼の力なのかおさまっているけど。


「チルも飲んだんだよね?」

「う、うん」

「大丈夫? 変な感じはしない?」

「大丈夫です。特に異常もなく……グッ、ガハッ」


 チルは突然、血を吐いて倒れた。

 悪いものを出そうと体が異常を訴えているのか。

 それにしても、チルは優秀なのに自分の体調に気がつかないのか?

 僕やシャルに心配をかけないための強がりかな。


「みんな、水は絶対に飲まないで。回復陰法 完天の慈雨」


 世界樹の雫で体の中の悪いものを取り除く。

 どうやらこれは効いてくれたらしい。

 流石は世界樹、神の木というだけはある。



ムウの言ってた「ルクス」は人形の事です、はい(今後一切出てこない)

最新話の下に星☆があるから是非に……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ