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宝玉の吸血鬼。~人間を辞めきれない大罪人~  作者: ホタル。
4章 遊戯者編
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No.095 残酷なテンシ

更新!



 久しぶりに強いと思える人と戦った気がする。

 

強いと思ったのは、日本のレベルSダンジョンのボスと、天神族のテラと、豚男ことトンラーと、天神族の宝玉持ちのラック。

 時間にして600年(1ヶ月ちょっと)が過ぎたのか。

 それにしても、


「決勝まで進んじゃったな」


 そう、会場の中心で呟く。

 決勝まで進んだのは僕を含めて4人。

 他3人は七聖剣というアウェイでイレギュラーな僕。 


『この4名が決勝進出者です。明日、総当たりリーグ形式です。集合時間は9時です。4名は遅刻しないでください』


 その合図で、今日の試合と日程が全て終わった。

 さて、この後は屋台をやろうと思ってたけど何も案がない。

 祭にあって、人気でなるべく材料が楽なの……あった!


「ホーズキ殿。今日も屋台ですか?」

「はい。えーっと」

「私は七聖剣が1人、ジャーニー・グレイーグルです」

「よろしくお願いします、ジャーニーさん。今日は“かき氷”という物です」

「かき氷、ですか? 氷とつくくらいだから冷たいのはわかりますけど、どういった?」

「安心してください。今日という今日は品切にならない予定ですからぜひ!」

「あぁ、行かせてもらうよ」


 ジャーニーさんは気さくで、イケメンな青年だ。

 これは、結構モテるんだろうな。


 そんな事を考えながらお昼を食べる為にシャルたちと祭に向かう。


「シャルは何が食べたい?」

「私はなんでも。でも、食べるならカズラの日本のがいい」

「日本のがいいって言っても、ユリエーエだったら結構な日本食があるよ?」


 ユリエーエは日本と繋がっていたというだけあり、600年という時間が経っているにも関わらず名残が残っていたりする。

 なら、ユリエーエに無いような料理の方が良いだろうけど、なにがあるかな?


「シャルさま、あそこのパスタなんてどうですか?」

「うーん、でもカズラのいた日本の食べ物が食べたいから」


 パスタなんてあるんだ。

 なら軍国ルベルトはヨーロッパと繋がっていたという事か?


「じゃあすき焼きなんてどう?」

「すき焼き、ですか? 知ってます! な、生で卵を食べるんですよね?」

「うん、まぁそうだけど」


 生卵は抵抗があるのか。

 僕は小さいときから食べてて、それでいて害が無かったから気にならないけど、慣れって怖いな。


「じゃあ、宿でお昼と行こう。で、いつまでついてくるの?」


 僕はムウとヤードに問いかける。


「ここまで来たら最後まで。楽しそうだから」

「私はムウを監視する役目がありますから」


 ならムウを諦めさせた方がいいらしいが、餌付けしてしまった今、そう簡単にはいかなそう。


「わかった。ついて来たければ、ついて来ていいよ」

「話わかる。偉い」

「なに上から目線なんだよ」


 他愛ない話をしながら宿に戻った。

 土魔法で鍋を作ってから、カセットコンロの上に乗せる。

 それがどうも古代遺産と勘違いしたのか、


「す、凄いです。こんな誰でも簡単に火をつけれるなんて!」

「こ、これを売ったらいくらになるでしょう!」

「アハハ」

「なんかこれに似てるね」


 シャル、アイリスが驚き、チルは苦笑い。

 そして、ムウが見せてきたのは、


「懐中時計?」

「名前まではわからないけど、時計だよ」


 童話、「不思議の国のアリス」などでウサギが持っている鎖のついた時計にそっくりだ。

 数字もローマ数字が使われている。


「流石、ワンダーランド。さぁ、そろそろ火が通ったし食べよ」


 鍋を囲んでみんなで食べる。

 食べ終わる頃には夕方になっていて、屋台を出すにはちょうどいい時間となった。


「かき氷だよー」


 かき氷は本当に簡単だ。

 氷が足りなくなったら魔法で作ればいいし、シロップはどうにかなる!

 そう、足りなくなれば、各自で用意してくださいが可能だ。

 最悪、フルーツさえあれば錬金術でそのフルーツのシロップが作れるし。 


「それにしても長い」


 他の屋台に迷惑がかかるほどの行列。

 てか、食材を使いすぎてるから1度日本でたくさん買わないとだな。

 あっても困らないし。


 それにしても、魔法で氷を作れるから利益しか出ない。

 それを真似した十二賢者がいたけど、氷が美味しくないと怒られてたな。


「よう、来たぞ」

「あっ、ジャーニーさん」

「1つお願い」

「了解です」


 茶々ッと準備してシロップをかけて完成。

 気持ち多めのシロップにしてみた。


 その後も何人か知っている人が来て、今日も懲りずに、


「きょ、今日はある!」

「はい。1つですか?」

「いえ、3つ!」

「お腹下しても知りませんからね」


 かき氷を3つ用意してチェリーに渡す。

 僕も小さい時、かき氷を3つ食べてお腹を下した思い出があるな。

 その後アレが出なくて強烈な痛みで病院に行ってカンチョウされたっけ。


「ウンマ! これは美味しいです! 氷でこんなに美味しいものが作れるなんて!」


 チェリーは大興奮な様子でかき氷を楽しんでいた。

 そして案の定と言うべきかお腹を下したが葛は知らないことだ。



 ※



 夜に近づくにつれて客足も落ち着いてきた。


「ムウは10回目だけどお腹痛くならないの?」

「大丈夫。美味しいから」

「お、おう」


 原理がわからないが、お腹が強いのかな?


「シャル姫か?」

「ウッ」


 シャルの顔が嫌そうに歪む。

 その相手は今日の試合で戦った人、ルトリア・シャードルだった。


「これは運命だ。神のお導きだ。さぁ、シャル姫、私と一緒にシャードルへ参りましょう」

「なぜかと理由を伺っても? シャードル帝王」

「我が嫁なのにわかってくれないとか?」

「な、何度も断ったじゃないですか!」


 シャルが自棄(やけ)に感情的だな。

 てか、お店の前で喧嘩されるとさ、少しずつ少しずつお客が離れてって行ってるんだよ。

 だからさ、そろそろ止めてほしいんだよ。


「わ、私には好きな人がいるんですから」

「ほう、それならソイツを教えてくれ。そして私が……クックックッ」


 絶対、殺せばとか考えてるだろ、物騒な。

 まぁ、シャルは可愛いし、王族という事もある。

 そう考えるとシャードル帝国との政略結婚もあるのかな。


「で、誰なんだ?」

「こ、ここで言うわけないじゃない」

「チッ、そうかよ。おい」


 「おい」とルトリアが言うと、シャルの回りに黒装束の人が5人ほど現れ連れていこうとする。


「宝玉の力よ。怠惰に」


 その場から動かずに世界樹でシャルを守るように包む。

 ついでに、黒装束の5人を縛りあげる。


「ほう、邪魔をするのか? 私に勝ったからといって今回も勝てると思ったら間違いだぞ?」

「それはこっちのセリフだよ。僕も本気じゃなかったんだから」

「ふん、小僧の戯言が」


「「シャードル帝国に光を!」」

「「「シャードル帝王に栄光を」」」


 黒装束の5人は次々にそう口にして光を放ちながら自爆した。

 

「我が神よ、力を」


 ルトリアがそう口にすると、懐から1つの神聖な、それでいて禍々しい力を秘めた笛を吹いた。

 夜にも関わらず天から光がさして、異形の天使が現れた。


「ァ――――」


 耳を(つんざ)く音にならない音が辺りに響きわたる。

 そして、何人かの子供は鼓膜が破れたのか耳から血を流して倒れだす。



お腹を下したのは中の人の実話です……

最新話の下に星☆があるからつけてくれてもいいんだよ?

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