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宝玉の吸血鬼。~人間を辞めきれない大罪人~  作者: ホタル。
4章 遊戯者編
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No.093 憧れとゲンジツ

更新!



「返答によってはただじゃおかないよ(・・・・・・・・・)


 ムウは諦めたかのように肩を竦めてから答えた。


「その儀式は違う。ね、ヤード」

「……」


 ムウはヤードに問いかけるが答えない。

 これが、無言の肯定なのか、無言の否定なのか。


「聞いても? 結局はどっちかは斬らなきゃいけなさそうだから」

「……そうよ。ムウは余計な事を言わないでよかったのに」

「説明してね」


 宝玉を僕の後ろにフワフワと浮かせておく。

 これで逃げられもしないし、反撃も絶対にさせない。


「私たちの目的は軍国ルベルトを壊滅させること。今のルベルトは古代遺産が少なく、終わらせるにはちょうどよかったの。これ以上、好き勝手にはさせない為にも」

「それがアイリスを害する事と何に繋がるんだ?」

「それは、軍の力を削ぐ為に必要だったから。軍が躍起になって探している破滅(・・)の神子を殺せば簡単になると思ったから」


 なるほど。

 なら、


「ムウは?」

「僕も最初はルベルトを潰すつもりで来たよ。けど僕よりも強い人がいたんだよ? もう、楽しくって楽しくってしょうがなかったよね。あとチョコも美味しかったし」


 うん。

 ムウの年齢が見た目通りなら「餌付け」されたって事か。

 または、破滅させるつもりはあるけど、アイリスを害するつもりはないとか、そんな感じかな?


「で、ムウ。今の儀式はどういう意味があったの?」

「知ってる限りだと、中の人を殺して、能力を奪い、禁忌を呼び寄せる力があるって物だったような」

あってる(・・・・)?」


 ヤードに聞くと無言で何度も頷いた。


「これ使って」


 ムウはそう言うと力を溜めているのか、風が不規則に荒れだす。

 そして、ムウの額には1本の(つの)がはえてきた。


「はい」


 トランプで斬った角を渡されたけど、


「「えっ?」」

「あれ? 言ってなかったっけ?」


 全員の驚きの声が重なる。

 もちろんヤードの分も。


「僕って鬼だよ。伝わるかな? 日本っていう昔々の紫の太陽時代にユリエーエと繋がってた国の1つ」

「ごめん、理解が追い付いた。そっか、鬼だったのか……でもその力さ、この前出してないよね?」

「うん。出しても勝てないと思う」


 そうなのか?

 今、溜めていた力は吸血鬼第二始祖に迫る勢いだったけど。


「てか、似た種族なんだ」

「人間じゃないの?」

「吸血鬼、って言って伝わるかな?」

「ほう」


 ムウが殺気を放つ。

 そして、すぐに「間違えた」という表情になり殺気を抑えた。


「知ってるのはムウだけか」

「まさか、吸血鬼だったなんて。親には吸血鬼がいたら殺せって言われてたんだけど、勝てないからいいや」


 なんとも適当な性格をしてるな。

 けど、このくらいの方が付き合ってて楽しいかも。


「さて、ヤード。弁明の機会を与える」

「なら――――」

「――――って、そんか柄でもないからいいよ。でも、次に僕の友達に危害を加えたら死なせないよ?」


 さて、月夜に晒されて案は思い付いた。

 てか、疲れるだろうけどこれが手っ取り早いから、最初からするべきだったな。


「暴食よ。アイリスが晒されている危機を喰らい解放しろ」


 未だに抜け出せていないという(ことわり)を喰らう。

 すると、力が急に抜けたかのように経たり込み目を開けた。


「大丈夫?」


 月の光に当てられたカズラがアイリスの目には王子様に見えた事はアイリスだけの秘密だ。



 ※



 虚ろナル者擬に襲われた次の日。

 アイリスは人が変わったかのように甘えてくるようになった。

 どういう心の変化なのかわからないが、未来が見えるからか、完璧すぎて怖い。


「じゃあ剣舞祭3日目、行ってくる」

「カズラ殿。き、今日の屋台は何をする予定ですか?」


 チルが照れた様子で聞いてくる。

 それを、アイリスとシャル、そして何故かここに居座るヤードとムウが聞き耳を立てている。


「今日はポップコーンだ」


 ポップコーンなら、少しの量から結構な量になるからいい。

 それに、繁盛するだろうしね。

 味は塩とバターだ。

 個人的にキャラメル味は好きじゃないし、他の邪道?も好きじゃないから塩とバターしか作らない。

 あと、クレーマー(チェリー)も来るだろうからチョコは絶対に使わないし、高級な物も絶対に使わない。



 剣舞祭3日目。

 もう、折り返し地点まで来ていて、残っている人たちは猛者ばっかりだ。

 そして僕の運は最高に良いようで、


『始まりましたー。今日の第1試合はホーズキ(棒)対マチルダーーー!』


 マチルダはユリエーエ学園の担任でもあって、この前戦って勝った相手でもある。


「先生、よろしくです」

「次は前のようにはいきませんからね。神器バフニール」


 弓を呼び寄せる。

 僕もそれに倣い黒鬼をカッコよく呼び寄せる。


『それでは、マチルダー、頑張ってねー。始め!』


 マチルダはチェリーの応援に苦笑いを浮かべている。

 そして、


「チェリーさんに嫌われてるの?」

「なんかそうみたいですね。別にいいですけど」

「そう。百矢千矢」


 矢が次から次へと飛んでくる。

 前から、後ろから、右から、左から、上から、はたまた下からもたまにくる。

 てか、原理がわからん。

 別にわかったからと言って変わるわけではないけど。


「陽法 朱の太刀 乱舞・連」


 四方八方からくる矢を全て斬り割いていき、マチルダの戦意を削がれさせるが、中々どうして効いてない様子。


『一進一退の攻防が続いてるーー。ホーズキそのまま殺られろー』


 「やられろー」がおかしいような気がしないでもないんだが?

 まぁ、いい。

 そろそろ決めにかかるか。


「陽法 無の太刀 無刀真剣。からの、陽法 黄の太刀 一閃」


 透明の刀で矢を斬り続けて、黒鬼で一閃、マチルダの肩を穿つ。

 その瞬間に矢は止まり、


「陽法 灰の太刀 朧月・柄打ち」


 気絶させる事で勝負を決めた。


『勝者、ホーズキ。次!』


 酷く適当な司会。

 観客たちはホーズキとの間に何があったのか疑問に思ったりした。



 今日は後もう1つ試合がある。

 次の相手は魔法剣士。

 魔法は基本的には「なし」だが、強化系統だったら使っても良かったりする。


『さてーはじまりましたーホーズキ(棒)対ティアラの試合です』


「始めまして、チョコの人」

「その呼ばれ方は心外だな。今日はチョコを使わないから」

「そ、そうなのですか? 昨日も一昨日も並んだけれど売り切れで買えなかったので」


 残念そうに落ち込んでいる。


「そうだ。自己紹介を。十二賢者にして1番2冠に近い人こそ、この私。ティアラ!」


 自分で七聖剣に入れるって言ってるようなもんじゃん。

 それって、色々な所に喧嘩を売ってるよね?


「そして、七聖剣を2人倒したお前を倒せば実質私も七聖剣」

「と、とんでも理論だ」


 ダメだ。

 これ以上話させたらティアラは酷い方向に進みそうだ。

 チェリーに睨みを効かせて始めさせる。


『は、始め!』


「身体強化。ハッハッハッ。どうだ、目に追えないだろ?」


 ティアラは僕の周りを不規則にグルグルと回り続ける。

 それは目で追えない程ではない。



ムウに貰った角はどうしたんだよ!

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