No.092 お姫様にアコガレル
ブクマ増えたので更新!
みんなに、アイリスに触れて起きた事を説明し終えてからもう1度挑戦する。
次こそは、触れてすぐに魅了をかけて無理矢理にでも助ける。
「魅了」
触れた瞬間に魅了をかけて、僕の意識は時間と共に引き延ばされて途切れる。
※
意識がハッキリとしだす。
体は動かそうにも動かない。
声も出ない。
念じても宝玉は現れない。
けど、体がある、という感覚はハッキリしている。
ふと、声が出る。
僕の声とは似ても似つかない声。
赤ちゃんの泣く声が響く。
すると、見たことのない女性が現れる。
アイリスを大きくさせた感じだ。
そこから導きだされるのは、
『アイリスの過去を追体験しているって事か』
心の中で呟く。
一応、もう1度、
『宝玉の力よ』
やっぱり、特に変化はない。
「その子だな」
「はい。アイリスと言います」
「私は守護者のダーツだ。よろしくな、アイリス」
30代くらいの男がアイリスを、僕を撫でる。
守護者と言っていたがなんの事だろうか?
時は流れてナガレテ、
「5歳のお誕生日おめでとう」
「おめでとう」
「おめでとう、アイリス」
お母さん、お父さん。
それと、守護者であるダーツに祝われる。
アイリスは好奇心旺盛な子だったようで、色々と調べてくれたおかげでわかることがあった。
まず、「守護者」について。
守護者は「預言者」を守る存在で、攻撃しても相手には効果が出ない。
ただ、守りに特化していて、守護者が近くにいる限り預言者には危害を加える事が出来なくなっている。
次に、アイリスの事を指す「預言者」について。
預言者は未来を見ることが出来る人の事を言い、この国には代々預言者が現れているという事。
そして、預言者は死の間際に次の預言者がどこに出るかわかるという。
最後に、預言者を軍事利用することは禁止されているという事。
その法を変える事は何人たりとも許されないという事も。
「アイリス。将来は何になりたい?」
「お姫様!」
アイリスはすぐに答える。
そして、
「いや、だ」
僕の口から、アイリスの口から悲鳴が上がる。
僕も未来を見た。
お姫様になれるか未来を確認したら、今から5秒もしない内に知らない人たちが家に入ってきて、
――――ガジャーンッ
「殺れ」
「「「はっ」」」
「や、止めて。お願い」
未来は変わらない。
それを未来視でわかっている。
わかっているけど、アイリスは叫ばずにはいられなかった。
が、アイリスの悲鳴に似た叫びは悲しく後の祭り状態。
「お母さん……お父さん」
なんの怨みがあるのか、ナイフや剣で何度も何度も突き刺されて命は途切れていた。
「いやだ。置いてかないで。お母さん、お父さん」
僕は、アイリスは涙を流す。
流して流して流す。
そしてふと、気がつく。
襲ってきた人たちが攻撃してこない、という事に。
見ると、アイリスを守る存在であるはずの守護者ダーツは襲ってきた人たちと話をしている。
その話がいい話ではないのをアイリスは本能的に感じ逃げようとするが、
「ドコニイクンダ」
逃がしてはくれない。
僕は居ても立ってもいられなくなったが、そんな気持ちも空しく何も出来ない。
何も出来ないまま時間だけが流れてナガレテ、
「次はどこに行けば古代遺産がある? 未来を確認しろ」
「……北、馬車で15日。山の山頂」
毎日、毎日、毎日、毎日様々な事を聞かれる。
軍の未来の為の古代遺産の場所から、私利私欲の為のどのギャンブルでどこに賭ければいいかなど様々だ。
そして、答えなければ打たれ、水をかけられ、絞められ、放置され、時に嬲られる日々。
また答えが、未来が気に入らないと同じように罰が下される。
アイリスはなに1つとして悪くないのに。
「もう嫌だよ」
もうアイリスは年がわからない。
多分、8歳くらいになっただろうか。
それとも12歳くらいになっただろうか。
「誰か、助けて」
誰もいない牢屋で弱音を、自分の死んでしまいたいという気持ちを漏らす。
そんな願いが通じたのか未来が見えた。
また、いつもと同じように嬲られる。
そしてその後、手錠の付けが甘く逃げるチャンスがある、という事。
事が終わり、酔っていた男たちは帰って行った。
未来視通り、手錠の付けが甘く手が自由となる。
これで出られる。
未来を確認しながら進んでいく。
ここを5秒後に走ればバレない。
こっちの道を選べば傭兵は来ない。
ここでこれを羽織ればバレにくくなる。
そんな、確実な方の未来を選んで人混みの中、誰にもぶつからずに走っていく。
走って走って、誰にもぶつからないはずだった。
――――ドンッ
「おっと、大丈夫?」
「ご、ごめんなさい」
咄嗟に謝って逃げる。
未来が見えない。
未来が見ることの出来ない男とぶつかった。
僕と……。
※
意識が戻ってくる。
が、アイリスは依然として変わってなかった。
魅了が失敗に終わったという事だ。
「どう、だった?」
「失敗。ごめん」
「か、カズラが謝ることじゃないよ」
そういえば、感じんな過去を見れていない。
どこから「虚ろナル者擬」を連れてきたんだろうか。
「でもどうすれば……ヤードはなにか方法を知らない?」
「一応、言い伝え程度には聞いた事があるが、効くかはわからないぞ?」
「構わない。実際、僕のは効かなかったんだし、試すだけ試すのもアリだ。その上で助けられたなら儲けもん」
「わかった」
ヤードはスラスラと説明していく。
満月の日に、月の光と六芒星にした砂金が必要との事。
結局は聖属性の効果が高いという訳か。
THE・儀式って感じで楽しいな。
みんなで屋根上に移動してから準備する。
僕は魔法収納袋から鉛筆を何本か出して、
「宝玉の力よ。傲慢に、錬金術」
なんか、始めてちゃんと錬金術を使ったような気がする。
「後の問題は満月だな」
「満月ってちなみにいつ?」
「記憶が正しければ2日前だ」
ヤードからの衝撃的な事実。
けど、方法がない訳ではないと信じている。
「憤怒に、天候操作」
月は天候ではないのは重々承知の上だ。
ならどうするか。
出来ないなら出来るようにすればいい。
「暴食よ、天候しか操作出来ないという理の内、候の部分だけ喰らえ」
これで無駄に力を使わずに済んだ。
これで満月に出来るはずだ。
「天 操作!」
満月に近づくにつれて、外の明かりが強くなってくる。
それに伴い、外が騒がしくなってくる。
「シャル、チル。六芒星の準備」
「うん」「まかせてください」
2人の返事を聞いて、アイリスを完成した六芒星の上に立たせる。
すると、月の光に砂金が反応したのか淡い緑に光ると青、赤と色を変えていき、
「トランプ ボム」
ムウが砂金の上にトランプを投げた。
それは砂金を盛大に吹き飛ばしながら爆発し儀式を途中で中断させた。
アイリスには被害が及んでない事を踏まえると、何か理由があるはずだ。
だからこそ聞く。
「ムウ、なんで? 返答によってはただじゃおかないよ」
黒鬼をムウに向けて威圧する。
ブクマが40にいきまして、嬉しい限りです
ソロソロ本当に空でも飛べる気がするw
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