No.085 大罪のハテ
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チルは観念してくれたのか、渋々といった感じで座る。
「で、なんでこんな事をしたんだ?」
「なんでって……憎かったからだよ」
手を広げて演説するかのように言う。
「不老不死だよ? そんな薬があるにも関わらず誰かにあげもしない。助ける事が出来るのに助けないんだよ?」
「それは――――」
「――――それに、おばあちゃんを助けてくれなかったし!」
話を聞いていくと、チルは相当なおばあちゃん子だったらしい。
そんなおばあちゃんが病に倒れたのに、助けてくれなかった大聖剣と大賢者を怨んだ、と。
2人からしてみればそのおばあちゃんは曾がたくさんつく孫に当たるのに、との事。
けど、
「あの2人が不老不死なの僕が作った薬だからだよ」
「えっ! そ、そう、なの?」
嘘だけど嘘じゃない。
薬じゃなくてドリーさんの血を分けただけだけど。
後でアーサーとメリダに話を合わして貰わないとな。
「それでなんだけど、今この宝玉を壊したらどうなると思う?」
「どうって、それは、壊れない、はず」
「もし壊したら国王とシャルにかかっていた魅了は解ける」
「ま、待って。私は悪気があった訳じゃなくて」
「宝玉に魅せられた憐れなる人の子。その罪を背負い悔やめ」
黒鬼を具現化して薄い桜色の宝玉を破壊する。
少しして部屋に傭兵と国王、それとシャルが入ってくる。
国王は魅了されていた時の記憶があるのか偉くご立腹な様子。
「チル・デガード。お主を死刑と処す」
「や、止めてください。命、命だけは」
「問答無用だ。私を欺いたのは構わん。私に力が足りなかったのだから。だが、だがシャルを欺いた事は万死に値する!」
王としての覇気が部屋中にピリピリと立ち込める。
これって、凄い親バカってやつ?
「ま、待ってください、お父さま」
チルが項垂れて、目は光を失ったのを見たシャルは何か思うところがあるのか、待ったをかける。
が、王は聞く耳を持たずに、傭兵に連れていくよう指示をだす。
身内だからと犯人を逃すのは王家の威信に関わるのだろう。
「はぁ、吸血鬼第二始祖の鬼灯葛が命じる。その者を、一生シャルの護衛として働かせる事で無罪放免とする」
王よりも更に威厳があり、覇気がある声で宣言する。
てか、今頃になって心配になってきたけど、吸血鬼って通じるよね?
「吸血鬼?」
「あれ? 知らない、の?」
マジかーー、通じないパターンなのかーー。
これって、ただただ僕が恥ずかしいだけじゃん。
「吸血鬼ってお伽噺だけじゃないの?」
「シャルって聞いてないの? 僕が吸血鬼で、アーサーとメリダも吸血鬼って事も?」
「う、うん。私が聞いたのは、カズラが物凄い凶悪(詐欺師みたいな顔で近づいてきて)で、この世の物とは思えない物を食べさせてきて、更には死にたくなるような気持ち(本当に成長しない)にさせられたって」
「そ、それはアイツらに1回話を聞かないとだな」
傭兵とチルは驚いているけど、王は少しの驚きだけだな。
なにかあるのかな?
まぁ、わからないからいっか。
飛び火は理を変えてでも消せばいいしね。
「んで、王はこれでいい?」
「ぶふっ」
傭兵の1人が急に笑い出す。
それを、他の傭兵がなぜ笑ったのか気がついたのか、傭兵たちは抑えられずに笑い出す。
「それで構わんよ。で、お主たちはなぜ笑ってる?」
「こ、国王。す、すみません。ですが、その、し、身長差があってつい」
意味を理解した。
えぇ、えぇ、よーーーーく理解しましたよ。
僕は150くらいで、王は190はある。
子供が大人に上から目線は実に実にシュールと言えるだろう。
「チル。宝玉に魅せられないようにね」
チルの目は光を取り戻していて、笑顔を向けてくれた。
あんまりよーーくは見てなかったけど、チルも可愛いんだ。
っと、アーサーたちに話を聞きに行こう。
※
「失敗したーーーー!」
宝玉事件から早2ヶ月。
本当に進展しない、って言うか、あの宝玉を媒体として鍵を作ればよかったんだよ。
なんで、思い付かなかったんだろうな。
だから、他の国に行く。
ユリエーエじゃない他の国に。
候補としては「魔法国家ベルト」、「軍国ルベルト」、「WonderLand」のどれか。
魔法国家ベルトは多くの魔法使いを輩出してて、十二賢者の半分はそこ出身。
軍国ルベルトは魔法国家ベルトの隣にあり、魔道具や古代遺産などが多い国。
WonderLandは作られた国で、そこでは未だにエルフや、ドワーフたちが暮らしているらしい。
「で、だ。アーサーとメリダには案を貰いたい。どの国に行くべき?」
「私は魔法国家ベルトがいいと」
「俺的には、ワンダーランドがいいと思います」
「よし、軍国ルベルトにする」
決まったーー!
2人が同じのを選んだらそこに行こうと思ってた。
2人の意見が別だったからあまりに決めた、と。
「2人とも、もう従者はしなくていいよ」
今日まで、王に変な説明をしたツケを払わせていたけど、解放する。
だって、決まったからにはすぐに行くから。
「じゃあ行ってくる。この家は返すよ。それと、みんなに説明よろしく!」
逃げるように外にでて、赤色の宝玉の力を使う。
赤色の宝玉の力は『憤怒』。
物を大きくする力と、天候を創作する力がある。
だから、
「き◯とう◯」
やって来た雲に乗って軍国ルベルトに向かうための港に向かう。
えっ、このまま「◯ん◯◯ん」で軍国ルベルトに行けばいいじゃんって?
だって不法入国とか軍の国で厳しそうじゃん?
なら、正規のルートで行くべきだからね。
「お1人さまですか?」
「うん」
「身分を証明出来るものを提示お願いします」
「えっと、これで」
ダンジョンカードはまだ使えるからありがたい。
それに、お金もこれで済ませられるんだから。
「かしこまりました」
チケットを貰い、乗船する。
船は木を主としていて、水に強い特別な木を使っているらしい。
「流石に日本とは違うか」
客船と言うよりは、海賊船が近い感じで、寝る場所は共同で汗臭い部屋だった。
「で、なんでついてきてるの?」
「ついてきてるなんて滅相もございません、はい」
「ピエールさん、だよね」
「名前を覚えて頂いて嬉しい限りです、はい」
どうやら、助けたのが僕だってバレているらしい。
それでついてくるのか。
「ほ、本当についてきてる訳ではなく、1度故郷に戻って力をつけ直そうと思いまして、はい」
「それって負けたから、だよね?」
まぁ、あれは宝玉の力があったから強いよね。
それを普通に相手にするのは困難って物だ。
「お恥ずかしい限りです。あのー、出発まで時間がありますし――――」
「――――僕と手合わせをしたいって?」
「そ、そうなんです」
「なら」
僕はピエールの後ろに周り、首に刀を突きつける。
「これくらいは反応出来ないと無理だよ」
「で、ですよねーーー」
自信を無くしたように肩を落として落ち込んでいる。
連続で子供に負けるのは精神的に辛いよね。
まぁ、僕なら背が低いという言い訳をするけどね。
聞いてください!
やっと、やっとpvが10,000を越えたんです!
凄いです! 読んでくれてる方、ほんとーーーーにありがとなのです!




