No.083 地獄のゴウカ
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「怒りに任せて」
アインは上段に仕込み刀を構えてから、そう呟くと、空は灰色に染まり、いつ雨が降ってもおかしくない空模様に変わる。
それだけに止まらず、仕込み刀はみるみると大きく肥大していき、雲を突き抜ける。
その雲から雷が仕込み刀に集中していき、稲妻を纏った刀に成り代わる。
「な、なんだよそれ」
「バニッシュメント・アルマゲドン」
ピエールは驚愕のあまり、腰が抜けて地面に経たり込む。
世界の終末、消滅って、どんだけ本気なんだよ。
それに、このままいくと闘技場をぶった斬って、町にまで被害が出るし、下手をしたら死人が出かねない。
『な、な、なんと凄い技だろうか。こ、このままでは町に被害が出るので障壁を、障壁の準備をおね――――』
そんな司会の言葉の途中で仕込み刀は動き出す。
ゆっくりと、それでいて物凄い破壊力を秘めて地面へと、ピエールへと向かって振り下ろされていく。
ピエールは腰を抜かして動けないでいるから、このままだと死ぬな、確実に。
早口で詠唱し、折角買った魔法使いのローブを面に変える。
それをつけて、ピエールの前まで行く。
「な! だ、誰だ! 誰だかわからんが逃げた方がいい。そして、出来れば俺も引っ張ってほしい」
「黙れ」
殺気と言霊の二段重ねで威圧して黙らせる。
こんな状況で人の心配が出来るのはたいした事だって思った気持ちを一瞬にして裏切りやがって。
「黒鬼。お腹を空かせた影よ、喰らえ」
黒鬼を一振り、それだけで「世界の終末」は、稲妻を纏った仕込み刀は効力を失い小さくなる。
が、秘めていた力は解き放たれて、周りに被害を出していく。
「もっと喰らえ」
影を広げて秘めていた力を喰らっていく。
喰らって喰らって喰らい過ぎて、
「き、気持ち悪い。食い過ぎた」
そう言いながら急いでこの場から逃げる。
『な、ど、どこの誰かわからないけどありがとうございました。しょ、勝者はアイン・マーシャル! ピエールは七聖剣を剥奪、一般兵に戻します』
そんな知識あるの! と驚かされるな。
司会が決めるような事でも、言うことでもないような気がするけど。
普通はアーサーとかが来て言うような……気配を感じる。
探すと、涙を流して嬉しそうにしているアーサーとメリダがいた。
見なかった事にしよう。
『では、1時間後に大決闘、十二賢者の資格を始めます。十二賢者は今、空白なので強ければ合格になり、初の2冠達成になるのか?』
そんな感じで締めて休憩となった。
周りは、「間に入った人は誰だ」とか、「次は簡単にはいかないよな」とか色々と聞かれる。
ちなみに、僕の魔法使いのローブは神器にグレードアップさせました。
※
『さてさてさーーーて、定刻となりましたので、十二賢者の試練を始めます! あっ、司会は変わらず、みんなのアイドルチェリーちゃんがやるよー』
またも、大歓声が上がる。
相当人気が高いんだろうな。
『では、登場していただきましょう。七聖剣が1人、アイン・マーシャル』
そう呼ばれて会場にでる。
仕込み刀は僕が壊しちゃったから、宝玉を手に持つ形になってる。
フワフワ浮かない、浮かべないのが謎なんだよな。
『対するは、我らが十二賢者の1人。水を使わせたらこの人の上をいくものはいない! ソフィア』
その声に現れたのは1人の女性。
体には色々な魔道具をつけていて、相当警戒しているのがわかる。
てか、アインって試験の時に炎魔法使ってたよね?
それに合わせるかのような水魔法使い。
十二賢者がガチで勝ちに来てるんだ。
『それではーーー、始め!』
その言葉で会場は霧に包まれた。
水って事からもソフィアがやったと思われるが、会場がよく見れないのが気にくわない。
「怒りに任せて。視界を覆う物を晴らせ!」
そう聞こえた。
すると霧はみるみると無くなっていき、ソフィアがいくつもの魔法を完成させていた。
『おーーっと、これはアインが囲まれている』
「降参するなら今の内だよ」
「指図するなよ、雑魚が。狂い龍 稲妻」
その名の通り、アインの周りに雷で出来た龍が現れてソフィアの魔法を喰らっていく。
雷が流れた水は使い物にならなくなって形勢逆転?
否、「狂い龍」と言っただけはある。
防壁を破り観客にまで被害が出始める。
「や、止めろ。降参するから」
「聞こえない、煩い」
あからさまな聞こえないフリ……いや、実際雷のパチパチという音で聞こえないのかもしれないけど。
雷の龍は見境無しに襲いかかる。
クラスのみんなも、チェリー親衛隊も、一般客も、傭兵もみんなみんな襲われる。
「天の怒り、雷によって燃えろ。ヘルズファイヤ の更に上」
雷の龍は炎を纏い更に威力を上げていく。
応援に来た傭兵もなすすべ無く燃やされ、感電させられ、意識を奪われていく。
「か、カズラはやらないの?」
「なんで?」
助けた方がいいんだろうけど、これ以上目立ちたいとは思わないし、助ける義理もない。
けど、
「アインを殺す許可を、王女さま」
片膝をついてお願いする。
面倒な事は排除して片付けるのが1番だ。
そして何より、転生者ってのがなんかムカつく。
「そ、そ、そんな事より後ろ! 後ろ後ろ!」
シャルは僕の後ろから来てる雷の龍に慌てているけど、僕の魔法使いのローブは神器だからそう簡単には攻撃を与えられない……はず。
実際、雷の龍は僕のマントに当たり消失した。
「で?」
「わ、わかりました。シャル・ユリエーエが命じます。アイン・マーシャルの討伐を」
「御意に」
僕は会場に下りる。
そして、
「アイン。そろそろ止めたら?」
「は? なんで?」
「ほら、周りを見てみなよ」
「うん。で?」
「で?」って、説得が1番面倒なタイプだな。
どこかこう傲慢でそれでいてプライドが高いって完全な悪者じゃん。
「天の怒りをくらえ」
アインは雷を何発か僕に落とすが、少ししかダメージは入らない。
「てか、ダメージくらうんだ。流石は宝玉」
「宝玉を知っているのか?」
「これだろ?」
お気に入りの黒い宝玉を出す。
最初の宝玉にして、1番強いやつ。
使ってるのが長い分1番強くなったのだろう。
「そ、れは」
口を開けて驚きに顔を染め上げる。
そんなに驚きだったのかな?
「お前、鬼灯か?」
「えっと、うん。この国の人たちはホーズキって呼ぶけど」
「クックックッ、あはははははははは、はぁー」
アインは急に引き笑いを始めると、次に大きく笑いだし最後にタメ息。
なにがそんなにおかしいんだろう?
頭がおかしい人って訳じゃないと思うけど。
「鬼灯葛。久しぶりだね」
「誰だ?」
「瓜二つな別人かと思ったら本物だったなんて」
「だからお前は誰だ?」
「ホーズキって時点で気がつくべきだったんだ」
「……」
なにが言いたい?
アインは誰なんだ?
1度は会った事がある人って?
「改めまして、アイン・マーシャル。またの名を」
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