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宝玉の吸血鬼。~人間を辞めきれない大罪人~  作者: ホタル。
4章 遊戯者編
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No.079 矛先をソラセ

喜びの気分更新!



 ユリエーエの町を馬車で駆け抜けていく。


「でも、1番大変だったのは“天の怒り”を埋める事だよね」

「天の怒り?」


 埋めるって所から、僕が暴走して出来たクレーターの事だよね。


「そう。“天の怒り”って言ってね、誰かが天の怒り

に触れちゃって大きな穴が出来たらしいの」

「な、なるほど。そうなんだー」


 あながち間違って無いんだよな。

 豚男(トンラー)が僕の怒りに触れてクレーターが出来たんだから。


「そうだ! だったら王族ってどうしたんだ?」


 確か、あの時無差別に全員殺した気がするけど。


「それは、王位継承権が2位だったスゥ・ユリエーエという方が他の町に遠征に行かされてて」

「なるほど、ユリエーエ以外にも他の町とかあったらしいからそうか」


 納得だな。

 それが、今の王族、シャルなんだろうな。


「ついたようだね」


 シャルは馬車が止まったに気がついてそう言った。

 揺られる感覚も無かったから気がつかなかったな。

 降りると、そこは(かつ)て見たユリエーエ城よりも豪華で、頑丈そうなお城だった。


「これは凄い」

「そうだろ? これは今のユリエーエの技術の結晶だからな」


 こんなのをよく作れるよな。

 本当に凄い。


「まぁ、大賢者さまと大聖剣さまなら当然です」


 あっ、技術者じゃなくて、その大賢者と大聖剣なのか。

 凄い人たちなんだな。


「会ってみたいな」

「カズラは会ってみたいんですか?」

「うん。だって凄いんだろ?」


 そりゃ会ってみたいよ。

 なにか、魔法を教えて貰えればいいかなーって思ってるけど。


「じゃあ会ってみる? ちょうど今日、お城に来ているらしいから」

「えっと、そんなに簡単に会ってもいいの?」


 普通、お偉いさんってそんな簡単に会えないじゃん。

 それに、僕普通についてきたけど、ダメだよねこれ。

 王族に媚売って繋がりを得ようとしてるようにしか見えないよね。


「お帰りなさいませ、シャルさま。そちらの方は?」

「……友達です」

「あら、そうですか。可愛らしい方ですね」


 か、可愛らしい!


「そうか? うーん、まぁおっちょこちょいだから心配になるってゆうのはあるけど」

「グハッ」


 シャルとメイドとの会話に胸を抉られる。

 ダメだ、僕ってそんなにおっちょこちょいなのかな?


「大聖剣さまと大賢者さまはまだいる?」

「はい。今頃、国王さまとお話し中だと」

「わかったは。挨拶に行くからよろしく伝えといて」

「かしこまりました」


 こう見ると、お姫様って感じで可愛いなぁ。

 けど、男装もカッコいいって凄すぎやしないか?


「チル、カズラ。行こう」


 そしてシャルに連れられてシャルの部屋に来た。

 のはいいけど、僕ってここにいていいの?


「帰りたい」


 そんな言葉が溢れ落ちる。

 それに、シャルは目敏く反応して、


「いや、なのですか?」

「違くて、お城なんて馴れてないから肩身が狭いなーってね」


 女の子の、それもお姫様の部屋に入れて嫌とかあり得ない。

 このメルヘンな感じがまたなんとも可愛らしいくていいな。


「シャルさま。準備が出来たそうです」

「わかったわ」


 そう言って僕とチルの手を引いて部屋を出る。

 シャルやチルの服装はおかしくないけど、流石に僕の格好はよろしくない。


「ちょっと待って」


 僕は魔法使いのローブを脱いで魔法収納袋にしまう。

 中は貴族のような、オーダーメイドの服装だから問題ないだろう。


「どう?」

「うん。さっきよりもいいよ。カッコいい」

「あ、ありがと」


 お姫様なんだから急に可愛い笑顔で「カッコいい」って言うのは反則だと思う。

 耐性が無いとイチコロだし、耐性があってもイチコロだと思う(BL以外)。


「カズラは後ろで静かにしてれば大丈夫だからね」

「わかった」

「失礼します」


 そう言ってドアを開けて中に入る。

 僕はチルに続いて中に足を入れると、そこは豪華絢爛、国の顔とも言える客間だから見栄を張るのはしょうがないけど凄いの一言に尽きる。


「大聖剣さま、大賢者さま。お久しぶりにございます」

「おぉ……お? おぉぉぉお!」


 大聖剣と呼ばれる方が僕を見て驚きの声をあげる。

 そして、大賢者は、


「久しぶりね、シャルちゃ……え? えぇぇぇぇぇえ!」


 大賢者とはかけ離れた驚き方をしている。

 2人は僕の事を見て驚いたけど、2人に見覚えが無いし、大賢者、大聖剣と呼ばれる知り合いはいない。


「「お久しぶりでございます。鬼灯葛さま」」


 大賢者と大聖剣は膝を地面について僕に最高敬礼をしてきた。


「ちょ、ちょっと待って。人違いじゃないんですか?」

「いえ、間違うはずもございません」

「そ、そんなことを言われても僕には身に覚えが無いし」


 待って待って、周りの目が怖い。

 特に国王らしき人の目がマジで怖いんだけど。

 なんか冷気を帯びてるし、よくそんな力を持ってるな。


「メリダ、落ち着け。申し遅れました、大聖剣のアーサーです。こっちは大賢者のメリダ」

「アーサーにメリダ……あっ」


 思い出した。

 いや、ここでは思い出してないフリをするべきだったのだろうけど、思い出したって顔までしちゃった。

 話を逸らさないと。


「いやー、今日もいい天気ですね」

「鬼灯さま?」

「ば、場所を変えても? 失礼します」


 僕はアーサーとメリダの手を引いて城を抜け出す。

 もちろん大急ぎで、


「大聖剣さまと大賢者さまが連れ去られた! 今すぐに追えーー!」


 そんな声が後ろから聞こえるが、もうどうしようもない。

 町の外れの近くの山に降り立つ。


「久しぶりだね。アーサー、メリダ」


 すると2人は顔を見合わせて、


「アーサーくん。覚えててくれたよ! あれから、600年も経ったのにまだ覚えててくれたよ」

「あぁ、あれから色々あったからな。鬼灯さまに吸血鬼にしてもらわなければどんなに大変だったか」


 とりあえず2人は大喜びしているから、よかった。

 けど、考えないといけないのはこの後だ。

 どうにかして、いい方法を考えないと。


「鬼灯さま、鬼灯さま」


 メリダが元気よく抱きついてくる。

 どういう訳か、僕は吸血鬼になっても成長しなかったのに対して、2人は成長していておかしい。

 今の状況は美味しいけどおかしい。


 その後色々と話を聞いていく。

 やれ、ユリエーエの復興を手伝ったとか、気がついたら大聖剣・大賢者と呼ばれるようになったとか、歳を取らないのが怪しいから大賢者の力で不老不死の薬を作ったって事にしたとか。

 兎に角、大変だったらしい。

 僕もここ、ユリエーエと日本との時間が違う事を伝えて、


「僕からすると、別れてから1ヶ月もたってないんだよね」

「なんか凄いですね! それ」

「そんな事よりも、どうしようこれから」


 そう。

 僕は大賢者、大聖剣を連れ出した人となったんだから。


「鬼灯さま。それなら心配には及びません。本当の事を話せばいいんだから」

「アーサーは相変わらず固いな。僕は楽しく過ごしたいの。それだと英雄を助けた人って事で祀り上げられちゃうじゃん」

「うーん、そうは言いますが。なら、王族だけにでも」

「それなら、まだ大丈夫かな」


 と、今後の方針が決まった。



pt増えてました、マジでありがとうございます!


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