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宝玉の吸血鬼。~人間を辞めきれない大罪人~  作者: ホタル。
3章 独裁者編
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No.073 ×××のイミ

遅くなった……更新!



 男の娘の呪い。

 それが過ぎ去り、エリーが村の人たちに事情を説明すると僕は世界樹の精霊として祀られた。


「いや、待てーーーい! おかしいよな? なんで僕が世界樹の精霊な訳? ちゃんと説明したじゃん。ただの消火した吸血鬼だって」

「そ、そうは言われてもー」


 僕はエリーに食って掛かる。

 エリーが説明したからこんなことになったんだ。

 僕にだって怒る権利があるだろ?

 何に怒ってるかって、そりゃ……なんで?


「別に祀られるのがいやとか? いや、特にそういうのはないけどな」


 僕は自問自答を繰り返す。

 もちのろんで、結果なんて出ない自問自答だからある意味、無意味と言えよう。


「だ、大丈夫? ごめんね、なんか私のせいで」

「い、いや。そういう訳じゃないっていうか。ほら、僕って吸血鬼じゃん? それなのに祀られていいのかなーって思ってね」

「いんじゃないの? だって、鬼灯くんは色々出来るじゃん」

「色々?」

「宝玉だよ、宝玉」


 まぁ、宝玉のおかげって所はめちゃんこ大きい僕のアイデンティティーとも言える物。

 でもなー、このアイデンティティー他にも持ってる人がいるし、吸血鬼で宝玉持ちなんて普通にいたしなんか僕の存在意義ってなんだろう?

 これはもう哲学だな。


「やめだ、やめ。折角歓迎してもらってご馳走まであるんだから食べなきゃ損だよな」

「そうだよ、鬼灯くん。森が助かったおかげで村の皆が凄い感謝してるんだから」

「それで……エリーさん?」

「なにかな、鬼灯くん」

「なんでさっきから平然と僕の隣に座っているのかな? しかも宮野を僕から遠ざけて。そのせいで殺気が、ね?」

「ゴメン、ナニイイタイカワカラナイ」

「急に片言にならないで」

「ワカラナイナー」


 ダメだ、これは助けてはくれなさそう。


「鬼灯殿。先程、宝玉と言いましたかな?」


 あっ、今話しかけてきたのがエリーのおじいちゃんでこの村……このグロンダントの長をしている1番偉い人だ。

 ちなみに、御歳(おんとし)700歳というが、見た目が普通に30代のイカしたエルフなんだよなー。

 って僕も吸血鬼で最近は背が、背が止まったから、はぁー。


「はい。宝玉がどうかしましたか?」

「それが、紫の太陽の日から宝玉がこのグロンダントの森の中心にあるのです」

「それはまた」


 それはまた偶然と呼ぶには出来すぎてる。

 話を聞いていくと、いつの間にか祭壇と宝玉、それから宝の数々があり、それは未知の結界によって守られていたらしい。

 それが今日になり結界は消え、森は火事になったというのが今回の流れ。


 (「なんというか) (……十中八九、) (宝玉持ちが) (現れたよな」)

 そうと決まれば取りに行くべきだろうな。

 じゃないと強くなれないからな、やっぱり。


「ちょっとその宝玉を見てこようと思う」

「抜けないで最後までいてください」

「あのー、腕を絡ませるのは勘弁して?」

「ナニガイイタイカワカリマセン」


 エリーは腕を絡ませる。

 そうすると、少なからずある胸が押し当てられる状況。

 それをね、男の子である僕がどう感じるかっていうのは言わずにもわかってよね。

 そして宮野は物凄い殺気を放ってるし、ついでというか石上まで殺気を放ってる。

 

「あー、もう。文鷹(ふみたか)ヘルプ」

「……はぁ。御意」


 最近知ったけど、文鷹はまた強くなっていた。

 特に隠密系が上手く、ヤクザの子というのと合間っていい感じに怖いから役得って感じになってる。

 文鷹はエリーの妹……男の娘な弟に一瞬ナイフを突きつける。

 それに気がついたエリーは一瞬でも僕の事を離してしまった。

 離してしまったが最後、僕は持てる力を駆使して逃げるのみ!


「強化陰法 限突」


 取り残されたA組の面々。


「ねぇ、一松(いちまつ)くん? いや、文鷹くん?」

「な、なんだよ」


 エリーの放つなんとも言えない冷気が文鷹を襲う。

 それは殺すでもなくただただ「逃がさない」に特化した冷気が。


「私ね、一応この村に帰ってきたら彼氏を連れてこなくちゃいけないの。でもね、それは私よ――――」

「――――待て。一応と言ったのは忘れていたということか?」

「……そうとも言うね」

「そうとしか言わない」

「ま、まぁそれは置いといて。私より強くてその上で私に求婚してくる人たちを退ける、怪我をさせずに退けられないとダメなの」

「ハードモードだな」

「それをね、鬼灯くんを逃がした文鷹くんにしてもらいたいの」


 文鷹は苦笑いを浮かべながら了承した。



 ※



 至る所森、森、森。

 見たことのない植物や、鳥たちがいる。

 そして、


「目の前には僕より大きな蟷螂(かまきり)か」


 とても大きな、魔物の類いに入るかな?


「黒鬼」


 水晶のように透き通る刀で横一閃。

 緑色の血が吹き出して気持ち悪いな、これ。

 でも敵は強くない、どっちかと言うと弱い部類に入る。

 宝玉の力も使う必要が無さそうだし。



 森の中を進むこと数分。

 拓けた祭壇のある場所まで来た。

 そして、


「テラちゃんが死んだ。お前が鬼灯葛だね」

「……? 誰?」

「ラック。よろしくね」


 スキンヘッドのお兄さん。

 僕はこの人を知らないのに相手から知られているのは相当に嫌だな。


「なんで神の使徒でもない君が宝玉を集めるんだい?」

「なんで……なんでだろう? でも力をつける為? 大事な物を守る為とか?」


 そういえばなんでだろう。

 そうだ、興味本意だ、好奇心ってやつだ。


「勝負だッ」


 ラックと呼ばれる男はまさに瞬間移動、一瞬にして僕の目の前に現れて槍を突き刺してくる。


「宝玉!」


 一瞬、ほんの一瞬だけ重力を解除して空へとうち上がる。


「へぇー、面白い」


 次の瞬間には僕の後ろから槍を、


「黒鬼」

「これでも防ぐのか」


 相手の、ラックの後ろには宝玉が3つ。

 緑色の宝玉、赤色の宝玉、黄金の宝玉とどこで手にいれたかは分からない。

 それに比べて僕の後ろにも3つの宝玉が。

 茶色の宝玉、桜色の宝玉、黒色の宝玉と、エクスターチとユリエーエと日本で手にいれたやつ。

 そして、


「喰らえ」


 影を操り祭壇にある緑色の宝玉を手にいれる。

 これで五分五分だった力が一気に僕に有利になった。


「面白い。だが」


 ラックは軽く、本当に軽く足下にあった石ころを蹴った。

 それは銃弾の如く、否、銃弾よりも速く僕を仕留めんとばかりに飛んでくる。

 が、


「堕ちろ」


 石ころは重力に耐えられずに地面に落ちて土に埋まる。

 僕としては戦いたくないけど、相手はそのつもりは無いらしい。

 戦うからには殺す、とでも言わんばかりに攻撃してくる。

 今も、後ろに一瞬で移動していて目で追えない。


「陽法 朱の太刀 乱舞」


 後ろに来る頃あいを見計らい、全方位に斬撃を飛ばすが気がつくと距離をとられる。

 こっちが有利になったはずなのに攻め手にかける。

 いや、


「理を喰らえ、暴食。僕の攻撃は何人たりとも避ける事も防ぐ事も出来ない。陽法 翠の太刀 飛雲」


 1次的だろうけど理を書き換える。

 確実に当てる一手、ラックに不可視の斬撃が飛んでいき。


「それぐらいか?」

「な、んで?」


 一切聞いていない?

 否、当たって一瞬で治った。

 当たりはしたけどって感じだ。


「どうすれば」


 ――――ゴトーーン ゴトーーン



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