No.072 理由は×××
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「ねぇ、次はグロンダントに行こ!」
エリーが僕たち皆に提案する。
と、言うのも、皆と高校生らしく遊んでたら急に故郷が恋しくなったらしい。
そして、皆の視線は明らか僕に集中している。
「い、いいよ。どういう訳かエクスターチとグロンダントは近いからね」
「やったー!」
エクスターチとグロンダントは隣あっていて、簡単に行くことが出来てしまうのだ。
てか、僕も宮野も一緒に遊べてないんだけど。
宮野はなんか気にして無いけど僕としてはね、遊びたいなーって気持ちがあったり。
「そうと決まったらいつ行く? 今? 今?」
「そんなに行きたいなら行くか。善は急げって言うし」
今この時、実の弟が悪魔擬の大群に襲われてるとも露知らずワクワクしている葛。
「石上も行くんだよね?」
「えっと、い、いの?」
なんで遠慮してるんだ?
遠慮する必要なんてなに1つありゃしないのに。
そうか、そういえばそんな事も言っていたな、僕は。
「石上、気にしなくていいよ。友達皆と行った方が楽しいでしょ?」
「う、うん! ありがとう」
よーし、これで方針が決まった。
まぁ、僕としては宝玉を手に入れる為に行くんだけどね。
皆で大きなバスを貸し切りにしてグロンダントまで進む。
半ば小学校の修学旅行みたいな感じになってる。
こういうのも悪くはないな。
※
バスに揺られる事数時間、やっとの思いでエルフの大陸、グロンダントが見えてきた。
それはそれは綺麗な森が広がる広大な大陸?
「エリー、アレって?」
「そんなはずない!」
エリーは取り乱してバスを早めるように先生に言う……。
今言うことじゃないっていうのはわかってる。
それはわかってるけど、
「ココナ先生どうやって運転してるの!」
ココナ先生は背が小学生か、と思うほど小さい。
そんな先生が運転出来るのが不思議でならない。
いや、今はやっぱり、
「先生、止めて。走った方が速そう」
前は渋滞になりつつある。
あんな、あんな火事は酷すぎる。
緑色の自然で綺麗なはずのグロンダントが炎に燃えて赤く照らしている。
「僕は先に行く。宝玉の力よ」
グロンダントの大陸の適当場所に地形操作で土の柱を立てる。
次に重力を僕だけに強くその土の柱にかける事で無理矢理グロンダントにひとっ飛び!
「混沌陰法 雨天雲」
小さな小さな雨雲が作り出される。
掌サイズの雨雲が出来たが、これ以上は大きくならないだろう。
「宝玉の力よ。理を喰らい書き換えろ! この雨雲は世界を揺るがす雨雲に」
モクモクと灰色の雨雲は膨れ上がり森全体を天から隠す。
そして、
「降れ」
ポツリ、ポツリから始まった雨は物の数秒でどしゃ降りへと変わった。
雨に当たった炎たちはみるみると小さく、小さくなっていき姿を消した。
「とりあえずはオッケーだな」
これで一件落着と言いたい所だがどうしてこうなったかがまだわかってない。
だかはまずは犯人を見つける事が先になるか。
僕は一旦皆の所に戻る事にする。
「混沌陰法 天使の羽」
やっぱり空を飛ぶ能力ってほしいよな。
走るより断然速くて楽だし、移動も直線になるから速くて楽だしなー。
「皆、っと。消火は終わり。とりあえずはね」
「あ、ありがとう! 鬼灯くん」
唇の柔らかな感触が僕の頬を触れる。
それが意味するものはなにか、思考が止まってしまった僕には気がつくのに、戻ってくるのに1分ほど有した。
※
ここがエリーの村か。
家は大きな木の幹に作られていて、家と家とは木々の間の吊り橋で繋がっている。
ツリーハウスとは、男の子心をくすぐる物があるな……てか、僕ってまだ人間でいたいって気持ちが強いのか。
さっきはあんな化け物みたいな力を使ったのに。
「葛くーん。おーい、葛くーん。そんなにエリーちゃんのキスがおきに召しましたかー」
「えっ、ちょっ宮野」
さっきから宮野は機嫌がとことん悪い。
それも子供のような拗ね方でなんか可愛い。
てか、石上もさっきからチラチラとこっちを見てきて僕の事を?
いや、流石に自意識過剰か。
「あの、鬼灯くん。ちょっといい?」
「えっと、うん」
おっ! 早速か?
石上に声をかけられ皆から少しだけ距離をとる。
宮野が強化陰法を使って盗み聞きしようとしてるから結界陰法で聞こえないようにする。
「それで?」
「そ、その、ね。エリーちゃんのキスってどうだった?」
「どうって」
これってどう答えろと?
これはよかったって答えるべきなのか全然と答えるべきか。
男の子な僕としましてはよかったと言わざるおえない。
「よかった……よ?」
「ズルい」
これはもしかしてハーレムですか!
そうですか!
ありがとう作者さん! ありがとう読者さん!
「なんで私はキスされた事が無いのに鬼灯くんはエリーちゃんにキスされてるの!」
あー、やっぱりですよねー。
そんな都合よくなんて無いよね。
2人でも十分すごいんだから!
「えっと、羨ましいの?」
「うん。とってもとーーっても羨ましい」
思ったよりも饒舌になってる石上には驚きが隠せない、隠す必要が無いけど。
でもそっかー、石上はエリーが好きだったのかー。
これって石上が本当は男の娘ってオチは無いよね、流石に。
一応、
「本当に女の子だよね?」
「う、うん。友達にはおかしいって言われちゃうけど」
うん、こんな小動物みたいで可愛いのに男の娘なワケがない……なんか、物凄く大きなフラグを立てた音が聞こえてきそう。
「話は終わったみたいだな」
「それにしても文鷹が気にするなんて意外だな」
「別に俺が気にしたってよりはあっちだよ」
文鷹が指さす方をみると石上と義宗が仲良く話している。
そういう事ね、と納得したけどあってるとは限らない。
言っちゃ悪いけど、義宗が男を好きという意味での「終わったみたいだな」の可能性もある。
宝玉の力で人の心は操れても読み取る事までは出来ないのは不便だな。
「ねぇねぇ、葛くん。さっきドーラちゃんになんて言われたのー」
「あー、石上の人権の為に僕から言える事はないかなー」
世の中には知らなくていい事も存在する。
それがたまたま今回だっただけ。
そういう事もある。
「そういえば火事の原因ってなんだったの?」
「それがわからないんだ。とりあえずは消火が出来たからよかったけどね」
「アレは世界樹さまが怒ったんだ」
可愛らしい女の子がそう言った。
程よい金髪に普通の耳、耳が尖ってないからエルフとは分かりにくい。
「コラ。なんでも世界樹さまのせいにしないの」
エリーがお姉ちゃんのような感じで女の子を叱りつける。
「その子は?」
「私の弟」
「そっかー、弟……弟!」
いや、どう見ても女の子にしか見えないし、声はまぁ中性的。
これはまさか、フラグを立てたせいだとでも言うのか?
いや、
「世界樹さまが怒ったんだな」
僕はそう思う事しか出来なかった。
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