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宝玉の吸血鬼。~人間を辞めきれない大罪人~  作者: ホタル。
3章 独裁者編
71/155

No.070 狂人のウラミ

ブクマが増えましてので更新!




「――――はい」


 その人は北星の言葉を遮り答えた。


「なんで? って聞いてもいいかい」

「なんでって、そんなの楽しいからに決まってるじゃん!」


 その人物は宇崎鎖那。

 僕に優しくしてくれて、ここにいる人の中で1番信用が出来そうだった人。


「あー、楽しーー!」


 鎖那は距離をとってから鎖を鞭のように扱い攻撃してくる。


「爺」

「御意に」


 爺と呼ばれる執事は近くに立て掛けてあった絵画で鎖の軌道をずらしてみせた。

 絵画には傷が一切ついていない所を見るに相当な腕の持ち主だとわかる。

 けど、それ以上に腕のあるのが鎖那だった。


「ほらほらほらほら!」


 両の手に持った鎖を器用に振り回し壁を、床を、ナーさんの盾を押し込んでいく。

 これって止めるべきだよね。

 僕的には鎖那の味方をしたいけど、ダルビスに行くためには北星につくしかない。

 悩み所だ、悩み所しかない。


「殺らないのですか? 合法的に殺人が出来ますよ」


 一さんがそう、耳元で囁く。


 その言葉は毒のように脳に溶け込んでいく。

 その言葉は蜜のように体に染み込んでいく。

 その言葉は鬼のように心を動かしていく。


「そうだね」

「ちなみにですがどちらにつきますか?」

「そんなの北星の方だろ? 数は少ないけど悪はあっちに、鎖那にあるんだからしょうがないよ」 

「本当にそうでしょうか?」

 

 一さんはどこか含みのある言い方をする。

 この人は僕の知らない北星の何かを知っている。

 それは絶対に何かが狂う、そんな秘密を。


「知らないようなので()教えましょう」 

「勿体ぶらずに言ってくれ」

「北星渚はあなたの家族を殺しました」

「は? いやいやいや、嘘だろ? どうして? なんで?」


 いや、理由は何となくわかる。

 わかるけど認めたくない。

 心の何処かでは認めたくないんだ。

 だって、だって認めてしまったら僕は本気で葛を怨む事になるから。


「聞いてみればいいじゃないですか。私は面白そうなので傍観者になります。決して邪魔はしませんので」


 気持ち悪いウィンク。

 だが、今はそんな事どうでもいい。

 これから聞く事と比べたら天と地、太陽と月ほどの差がある。


「北星」

「なんだ? 今は忙しい。透も手伝ってくれ」

「その前に1つ」

「なんだよ、早くしてくれ」

「鬼灯」

「鬼灯? あー、鬼灯の家を燃やしたこと? それが何か? 死体は燃え尽きて何も残ってないんだよ。無様だよね」


 へぇー、へぇー、へぇー。

 そっか、そっかー、そっかぁーー。

 お父さんもお母さんも死んじゃったんだ。

 全部全部全部全部コイツと葛のせいだ。


「おい、なんでそれを俺に向ける?」

「死ねッ」


 大きな剣を力一杯に北星へと振り抜く。

 が、それは空を斬るだけで手応えがない。


「いきなり何をするんだよ」

「黙れ! 外道のクソ野郎!」


 僕は仮面を、仮面を外してから、


「鬼灯透。お前が殺した人の子供だ!」


 納得いった、全て納得いった。

 この仮面をつけさせたのも、メイクで顔をわからなくさせたのも、そのメイクが火傷の後なのも。


「ヒューー♪ まさか生き残りがいたとは驚きだ。しかもその火傷、さぞかし辛かった、クックックッ」

「死ねぇ」


 一さんはこの状態を作りたかったんだな。


 思考がはっきりとしない。

 剣をただただ振り回すだけの状態。

 とても単調な動き=避けるのも簡単という物だ。


「北星さまの邪魔をするな!」

「煩いッ」


 後ろから来る気配を感じて振り向き様に爺と呼ばれる老人を斬り殺す。

 綺麗に胴に刃が通りそのまま流れるように上と下を斬り離す。


「んーー! 私もヤルーー」


 カグラはその華奢な体を豹変させていく。

 より筋肉質に、より強そうに、より硬そうに変化していく。

 爪は嫌に鋭く伸びていて、白銀の毛は硬質的でこの剣では斬れないだろうな。

 なら狙う所は1つしかない。


「来いよ」

「グゥラァガ」


 腕を振り上げながら距離を一瞬にしてつめてくる。

 人間だったら見切れないだろう、銃弾のように早く鋭く強い。

 が、


「人間、辞めたから」


 カグラの目には剣がぶっ刺さっていて、そこから脳まで貫通している。

 僕はそのまま乱暴に剣を抜き北星に向ける。

 北星は腰が抜けているのか地面に座り込んでいる。


「や、止めて。殺すな、な? 金だったらいくらでもやるから」

「いらない」


 僕は剣を向けながら1歩1歩近づいていく。

 油断は出来ない、なにか隠し玉がありそうな気がするから。


「チッ。油断してくれな――――」

「――――ドーーーーーンッ」


 またも北星の言葉を遮る鎖那の声。

 だが、後ろを見てもしょうがッ……


「あれ? 運が回ってきたのかな」


 僕は地面に伏した状態。

 目の前には北星がいるけど攻撃出来るような状態ではない。

 僕の上には飛ばされてきたナーさんがいるのだろう。

 気絶しているのか、死んでいるのかわからないが重くて動く事が出来ないでいる。


「どうした? さっきまでの威勢は」


 僕が一気に不利な状況になると嬉々として攻撃を仕掛けてくる北星。

 ……攻撃を仕掛けてくる北星?

 攻撃を……


「あーりゃりゃ。呆気ない」


 後ろの方から鎖那の声が聞こえる。

 それと、ジャララララという鎖が地面を擦れている音が。

 そして肝心の北星だが首から上が無くなっていて、体にはボツボツと不揃いな幾つもの穴が空いている。


「大丈夫? 重そうだけど」

「僕の敵を取ったな!」

「だから? 関係ないよ。ねぇねぇ、透くん。透くんの罪はなにかな?」

「は?」


 僕の敵を殺しておいて関係ないだろ?

 それに僕の罪だって?

 僕は生まれてこの方、罪らしい罪なんて犯してない。


「んー、お姉さんが一緒に考えてあげる。まずはそこの老人を真っ二つにしたー……えいっ」

「グッ、ガァァァァァ、ァ、ッッ」


 僕の剣を持っていた右手が手首から斬り落とされる。

 焼けるような痛みと右手が無いという気持ち悪い感覚。


「まだ終わってないよー。次は~、そうだ。あの獣族の子を殺したね……えいっ」

「ガァァァァァァァァ、ァッ。クッッゥ」


 次は左手を肘の辺りからすっぽりと斬られた。


 なんでなんでなんでなんでなんでなんで!

 僕が何をした?

 僕はただただ葛を殺したかった、見返したかっただけなんだ?

 見返したかった?

 そっか、僕は葛を見返したかったのか。

 僕の欲しい物も者も手にいれる葛を見返したかっただけだったんだ。


「他にはなにかある?」

「黙れ」

「なにかな? よく聞き取れないよ」

「お前も人殺しだろ! お前は罪を犯したのに罰を受けなくていいのか!」

「なんで? だって私はこの世から罪を無くすだもん。そうすれば、テラちゃんは戻ってくるから。そう、テラちゃんが“断罪者”なら私は“原罪者(オリジナルシィナァ)”だ」


 原罪って神に叛くとかそんな感じだよね?

 意味が物凄い変わってるよな。


「意味が変わってるとか思ったかな? 違う違う、私は神が作った人を全員裁こうとしてるだけだから、なんにも間違ってないんだよ。そろそろサヨナラの時間だね」



ブクマ感謝です

マジで感謝です

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