No.067 受付ジョウ
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「申し遅れました。私は第五始祖の雨宮香鈴」
彼女はそう言った。
……彼女はそう言った。
「えっ? その第五始祖ってなんですか? 貴族階級か何かですか?」
「そうか、やっぱり知らないのか。そう、貴族階級みたいなやつだ」
貴族階級みたいなやつ?
本当はどういう意味なんだ?
それと、
「血の匂いがする」
「血? そんなに匂うかな? あれ? あれ? 気になんないけどな」
僕は1歩後退りする。
血と言われて心当たりがある言い方だった。
もしかして殺人鬼が葛の命を狙ってるとかそんな感じか?
「よくわかったね、血の匂いなんて」
「いえ、嗅いだことがあったので」
「へぇー」
どこか興味深そうな顔をしている。
それで、少し悩んでから、
「まぁ、言っちゃえば私は吸血鬼なの」
「吸血鬼? 吸血鬼って物語とかで出てくる血を吸う種族? いたんだ」
「本当になにも知らないようね。あなたの兄である鬼灯葛も吸血鬼よ」
「えっ?」
何を言ってるんだ、この人は。
普通にお母さんとお父さんから産まれてきて血も一応繋がっている家族のはずだよ?
それなのに葛は吸血鬼って意味がわからない。
いや、もしかしなくても吸血鬼って成れる物なのか、簡単に。
もしそうだとしたら、
「僕を吸血鬼にしてください」
「え、なんでよ。嫌に決まってるじゃん」
ここって吸血鬼にしてくれる所じゃ?
しかも、吸血鬼にしてあげる為に言ってきたんじゃないの?
「それは、そーれは面白いそうだねー」
僕は一筋の汗が額から垂れる。
それはしょうがないだろう。
後ろからナイフを回され首に当てられているのだから。
もし、後ろの何者かが力を込めれば僕の首は無事ではないだろう。
それどころか、命の保証すらない。
「吸血鬼に興味がお有りですか?」
「誰? その子は私と話してるんだけど!」
「これは、こーれは。どうも、第五始祖の雨宮香鈴さん」
この後ろの男は「第五始祖」の所だけ強調して言った。
って事は第五始祖よりも上になると考えるのが妥当だろう。
「私は第二始祖の田中一です。以後お見知りおきを」
「だ、第二始祖! あの鬼灯と同じ」
ここで更なる情報だ。
それも嫌な。
葛は第二始祖という相当上の存在らしい。
嫉ましい、妬ましい。
「その方では話にならないでしょう? 鬼灯透さん。よろしければ私めが、あなたを吸血鬼にして差し上げましょうか?」
「ほ、本当か」
首にナイフが当てられた状態にも関わらず僕は答える。
だって2度と無いだろうチャンスだ。
物にしない訳にはいかない。
「了解です。では私の屋敷に行きましょう」
どうやらこの田中一の屋敷に連れていってくれるようだ。
田中一が何かをボソッと言ったがあまり気にする必要はないかな。
※
屋敷、と言ってもただの都会の高層マンションの一角だった。
屋敷って言うからお城とか期待したのに。
確か吸血鬼の元となったお話のヴラド・ツェペシュこと「串刺し公」はお城を持ってたのに。
「まぁ、吸血鬼になる前に聞きたい事とか無いですか?」
「葛について教えてください」
「生憎と言ったところか、鬼灯葛の情報を持っていないのですよ」
ニコニコと怪しい笑顔を浮かべて答えた男。
そういえば初めて顔を見たな。
白い髭を長く生やした魔法使いみたいな老人だ。
まぁ、見た目が老人ってだけで僕よりも何倍も強いのだろうけど。
「なら、吸血鬼の起源って串刺し公ですか?」
「串刺し公……あぁ、いましたね。そんな人も」
どうやら違うらしい。
まぁ、その辺はあまり興味が無いからいいけど。
「なら特には。僕を、僕を吸血鬼にしてください」
「わかりました、いいでしょう」
一瞬にして終わった。
それほどまでに時間を感じなかった。
それは僕が寝ていたからなのか、本当に時間がかかっていないのか。
「おや、起きましたか。では早速実戦といきましょう」
一さんに隣の部屋に連れていかれる。
そこには磔にされた人が(多分吸血鬼だろう)いた。
「あなたはまだ第三始祖の鬼灯透です。わかりましたか? では、名乗ったらこちらの剣でアレにとどめを刺してあげてください」
どこか誘惑のような声色で僕はそれに従う。
磔にされた吸血鬼を殺すために、いや、これからは嫉ましい、妬ましい葛を殺すための準備段階だ。
「はじめまして」
磔にされた吸血鬼は虚な目をこちらに向けてくる。
「僕は第三始祖の」
そこまで聞いて目に生気が蘇る。
否、驚きで目を見開いている。
「鬼灯透です」
その言葉がトリガーとなったのか、
「な、なぜ! なぜあなたがここに」
どうやら相手は僕の事を知っているようだ。
どうでもいいけど。
「僕はあなたを知りません」
満面の笑みで相手に、後に名を知るが、コアル・スロスキーという第二始祖最強の吸血鬼に剣を突き立て殺す。
「いやー、ここまで抵抗無く殺すとは驚きだ。これであなたは、透さんは第二始祖になりました。お兄さんと一緒ですね」
「虫酸が走る」
「ありゃ? 喜ぶと思ったのに」
ダメだ、「殺したい」という気持ちが強く強くなる。
でも抑えないと。
今の僕じゃ到底目の前の田中一は倒せない。
僕にはまだ力が足りない。
「ふふふ。力が足りない?」
僕の考えを言い当てられドキッとする。
いや、吸血鬼なら可能性はあるか。
「いやですね。丁度、ちょーーーーど運よく力を手に入れる方法があるんですよ。興味はありま――――」
「――――ある。大有りだ」
聞くところによると、今の政治を牛耳り、自由に、傲慢に、横暴に、独裁的にしている人、北星渚が力を手に入れる為に黒の大陸、ダルビスに有るであろうレベルSダンジョンに挑むらしい。
そこで強い人を募集中。
それなりのお金が出るらしい。
「いいね。やろう、やってやろうじゃんか。葛に出来て僕に出来ないわけない」
「ならメイクをしましょう」
「なんで? 面倒な」
「メイクをしましょう」
とてつもない威圧感。
逆らったら殺されかねない。
折角手に入れた力をこんな所で無駄にしたくない。
「わかりました」
「それから一応これを付けてくださいね?」
「仮面? わかりました。後は?」
「後はそうですね……これからあなたはただの透です。鬼灯という名は出さないように」
「……わかった」
その後、一さんにメイクをしてもらい仮面を付けて受付がある場所まで行く。
メイクの結果は見せてもらえなかったけど、どうなってるんだろう?
それに仮面をしたらメイクの意味が無くなっちゃうじゃん。
「こちらは受付です」
「私だ」
「あっ、どうも、バル――――」
「――――今日は弟子を連れてきた」
「あっ、お弟子さんですか? 名前は?」
「ほ、透。ただの透です」
「その仮面をとってくれるかな?」
1度一さんを見て確認すると「OK」が出たので仮面をとる。
すると、
「まぁ、なんて酷い火傷。ごめんね、戻して大丈夫よ」
どうやら火傷のメイクだったよう。
それも相当酷い。
でもこれでいいんだよな、田中一さん。
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