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宝玉の吸血鬼。~人間を辞めきれない大罪人~  作者: ホタル。
3章 独裁者編
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No.055 裏のジジョウ



 朝食はみんなで食べる事にする。

 理由としては誰か欠けてないかの確認。

 それと軽い情報交換だ。

 まぁ、まだ情報なんて無いだろうけど。


「聞いたか、葛。来週に武道大会が開催されるらしいぞ?」

「武道大会?」

「あぁ、色んな大陸から強い人が集まって競い合うんだって。それに報酬は貴族権が貰えるらしい」

「貴族権ってなんだ?」


 義宗は相当に情報を集めているようだ。

 それにしても武道大会か、楽しそうだな。


「貴族権は貴族になる権利らしい。まぁ、1番下の男爵がもらえるだけでもいいだろ」


 なるほど、優勝すればこの国、ユリエーエの貴族になれるという訳か。

 それも悪くないな。


「葛くんは参加するの?」

「もちろん。楽しそうだからね」

「そ、そっか」


 なんか和紗は歯切れが悪いな。


「和紗は出る?」

「私は遠慮しとこうかなーって」

「そっか。他に誰が出る?」


 僕以外には、義宗と文鷹が出る事になった。

 女性陣は参加しないらしい。

 なんか残念だな。

 和紗以外とは戦った事がないから戦ってみたかったのに。


「葛くん、今日の予定は?」

「和紗も来るのか?」

「うん」

「今日は武道大会のエントリーをしてこようとね」


 エントリーは各自でするので僕は今日の内に終わらせちゃおうという考えだ。


 朝食を食べ終わり僕は和紗と一緒に町を歩く。

 なぜか和紗はこの辺の事をよく知っていて、どこのカフェのチョコレートケーキが美味しいだの、どこのレストランが美味しいからお昼食べようだの態々調べてくれたのかな?


「で、ここがダンジョンギルドだよ」

「ここが受け付けの場所なんだよね?」

「いくつかあるけど、その内の1つで1番近いから」


 僕は和紗と一緒にダンジョンギルドに入る。

 ダンジョンギルドは至って普通で、受け付けがあり、掲示板には依頼書が貼ってあり、男たちは女性をナンパ中。

 そして今は、みんなの視線が僕たち、正しくは和紗に集まっている。

 そりゃ和紗が可愛いから見たくなるのはわかるけど、ね。


 僕は1つだけ空いてた受け付けに行き、


「武道大会に参加したいです」


「おいおい、あそこの受け付け使いやがったよ」

「ありゃぁ、バレたら殺されるな」

「殺されるですむかな? 家族諸とも道連れだ」


 そんな噂話が聞こえてくるが基本的には無視する。


「武道大会への出場はダンジョンクリアが条件ですよ?」


 受け付けの女性は子供に言い聞かせるような言い方で僕に接してくる。

 背は中3から伸びてないからって子供扱いは流石にくるものがある。


「おっ、来たぜ。剛腕のデールが」

「もう終わりだな」

「さぁ、面白くなるぞ」


 どうやら、ここをよく使う人が来てしまったようだ。

 この容姿だから舐められるだろうし、関わらない方がいいよな。


「終わったならどけ」


 絡まれると思ったが絡まれない?


「すみませ……えっ」


 そこにいるデールと呼ばれる男は見たことがあった。

 と、言うよりも似ているって感じだ。

 スキンヘッドの変態おじさん(服装は普通)がそこにはいた。


「和紗、あの人変態おじさんに似てない?」

「い、言われてみれば」


 もしかして、昨日の今日で魔石屋は潰れてダンジョン探索者にジョブチェンジしたのかな?

 ん? でも少しだけ気配が違う。

 あの変態おじさんより少し弱い感じかな?


「なに見てんだ? 俺の顔に何かついてるか?」


「おいおい、あのガキ終わったな」

「これからどうなるんだよ。楽しみだよー」

「あの隣にいる娘可愛いな」


 似せ変態おじさんに喋りかけられただけで外野が騒がしい。


「えっと、なんか見たことがあるなーって思ったので」

「ん? そうか、兄者(あにじゃ)の事を知ってるのか」

「兄者? ってお兄さんって事?」

「そうだ。兄者は兄者だ。そういえば、今日兄者がここに来ると言っていたな。待ってればどうだ?」


 肩をガッシリ掴まれ、半ば強引にここで待つことになった。


「そうだ。自己紹介がまだだったな。俺はデール・グランロードだ。よろしくな」

「鬼灯葛です。よろしくお願いします」

「いやー、まさか兄者を知っているとは。どこで会ったんだ? 魔石屋か? 貴族街か?」

「そのどっちもです」

「そりゃ運がいいな」


 それって運がいいって言えるのかな?


 待つこと数分。

 変態おじさんは普通の格好でここにやって来た。


「お帰りなさいませ、ギルドマスター」

「「「お帰りなさいませ、ギルドマスター」」」


「えっ、えーーーーー!」


 魔石屋の変態おじさんは、ここのダンジョンギルドのギルドマスターだったのだ。

 いや、それだけでは終わらない。


「また会ったわね。私はバルト・グランロードだ。一応、グランロード侯爵でもあるのよ」

「えっ、えーーーーー!」


 まさかの貴族様でもあったのだ。

 侯爵って結構上の階級だったような?

 吸血鬼で言うところの第三~第四始祖くらいかな?

 それに喋り方は変わらないのね。


「すみませんでした、グラン――――」

「――――公の場じゃないから普通の喋り方でいいわよ」

「ありがとです。えっと、バルトさんは魔石屋でもあり、ここのギルドマスターでもあり、貴族様でもあるって事ですか?」

「えぇ、そうね。そういうことになるわ」


 肩書きが多すぎる。

 なんだろう、この詰め込みすぎたキャラは。


「あなたがここにいるという事はこのギルドに入ってくれるのかしら?」

「いえ、そういう訳ではなくて。僕は武道大会のエントリーに来たんですけど、中々OKしてもらえなくて」

「そうなの?」


 バルトさんは受付嬢を呼んですぐにエントリーを済ませてくれた。

 受付嬢はもちろん最初に僕の受付をしてた人で、その人はデールさんの婚約者だったのだ。

 なるほど、だから野次馬共が死ぬ死ぬ言ってたのか。


「あなた、私のギルドに入るつもりはないかしら?」

「えっと……」


 ギルドに入ると得ってあるのかな?


「お願い、ね?」

「いいですけど、なんでですか?」

「あら、それは私って侯爵でしょ? 侯爵は領地の他にギルドを開いて素材集めをして国に貢献しなくちゃいけないの」

「それで僕、ですか?」

「そうよ。だって、あなたの持ってきた剣が本当に強いのよ。それに腰についてるやつも」


 まぁ、黒夜叉は強いし、樹刀(じゅとう)も世界樹の枝だから弱いわけないよな。

 それにしても、バルトさんの目は鑑定系の魔眼なのか。

 あれば便利だろうな。


「わかった。名前を貸すってだけでもいいわよ」


 どうやらどうしてもらしい。

 まぁ、困る事も無いだろうし、色々いいことがあると信じて入るのもいいか。

 バルトさん、オネエだけどいい人だし。


「わかりました。入らせていただきます」

「本当に? ありがとー。これでこのギルドは壊れずに済むわ」

「壊れずに済む? それって?」

「あー、それは――」


 話を聞いていくと、ライバルギルドが最近勢いを伸ばしてきていて、更には今回の武道大会で負けた方のギルドは解体。

 そして、貴族の権利も剥奪されるようなのだ。

 よし、武道大会は頑張るかな。



もう精神的に擦りきれてしまいそう……


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