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宝玉の吸血鬼。~人間を辞めきれない大罪人~  作者: ホタル。
2章 断罪者編
52/155

No.051 宝玉のキュウケツキ

更新!

やっと……やっと回収した!



「お腹空いた」


 突如として訪れたこの飢餓感はどうしようも出来ないな。

 だって、テラが物凄い形相で僕の事を睨んでて、逃がしてくれそうにないから。


「宝具 罪人の剣。略奪、強奪、挑発」

「陽法 新・黒の太刀 絶壊(ぜっかい)


 宝玉の力をどうやって使えばいいかが、頭の中に流れ込んでくる。


 この宝玉の力は『暴食』。

 (ことわり)を喰らい無に還す、また、理を書き換える事ができる。

 どこまで出来るかわかんないけど、相当化け物な能力をしている。


 そして、前は壊せなかったテラの武器はあっさりと斬れてしまった。

 それだけでは終わらせない。


「灰になれ」


 斬れた所からどんどんと灰のように崩れ落ちていく。


「なんで! 私のは、私の武器は壊れなはず。宝具は壊れちゃいけないのに」

「今の僕の前に壊れない、壊せない物なんてない(はず)」

「死ね、死ねー。僕が、僕がその宝玉を手に入れるはずだったのにー」


 テラの狙いの定まってないパンチを全て避ける。

 ここで殺すべきではない。

 けど、神法という魔法の上位互換が厄介すぎて、捕まえるなら神法を封じるしかない。

 テラの体力が落ちてくれればいいんだけどね。


「神法 神の伝言。動くな」


 そのくらい今の僕には効かない。

 僕はまだ全然動ける。

 テラの攻撃を何度か避けるが、テラの狙いが僕じゃない事に気かついた。


「神法 滅殺(めっさつ)――――」

「――――させない」


 テラの首を落とす。

 和紗になにか危ない神法を使おうとしていたから、間に合ってよかった。


「じゃあね、人殺し。吸血鬼狩り」



 宝玉の力を解除すると暗闇は一瞬で元に戻る。

 和紗たちは全員腰が抜けているのか尻餅をついてる。


「葛くん、だよね」

「そうだよ。和紗の葛くんだよ」

「変わって、ない?」

「もちろん。立てる」

「う、うん」


 和紗に手を貸して立たせてあげる。


「お見事でした。か、葛さま」

「ありがと、セバス。そうだ、あの時の盾ってなに?」

「これは20階層の幻獣種の盾です」

「あっ、あの強いってやつ」

「売られていたので買いました。ですが、こうも早く役目が来るとは思いませんでしたが」

「ありがと、とっても助かったよ」


 とりあえず、今はドリーさんに報告しに行くべきだよな。


「さぁ、宝玉以外にもいくつか武器があるから全部魔法収納袋に入れて持ち帰ろう」


 せっせと魔法収納袋に魔石やら武器やらを詰め込んでいく。



 *



 天神族の住む大陸、サルバン。

 そこにそびえ立つ『神々の(とう)』と呼ばれるダンジョン。

 その名に相応しく天辺(てっぺん)は雲の更に上、階層は500まである。

 そして出てくる敵は全て強く賢い。

 そんなダンジョンを1人でクリアした存在、ラック。

 またの名を「暗殺者のラック」と呼ばれている。

 対人戦が得意で、自分が死ぬか相手が死ぬまで終わらせない。

 そして生きている、という事は無敗という事と同じ。


「テラちゃんが死んじゃったか~」


 そんな神々の塔の頂上で宝玉を片手に持ちながら黄昏るラック。

 たれ目でいかにも鈍感な感じの青年。

 こちらはテラと違い背がちゃんと成長していて一般的な体格だ。

 武器は特殊な槍で、伸縮性の使い勝手のいい武器。


「宝玉の力よ」


 ラックの後ろに黄金色に輝く宝玉が浮かんでいる。

 その宝玉自体が全ての色を霞めさせるほどの力を秘めているように輝く。


「誰が殺した?」


 ――――ッ。


「そうか、鬼灯(ほおずき)(かずら)、ね。楽しみだなー、同じ宝玉持ちとして。そうだ、ちなみにテラちゃんが最後に履いてたパンツの色って?」


 ――――ッ。


「ク、クマさんパンツ? あはは、残念。そんな成長してないのかな?」



 *



 ドリーさんのお屋敷。

 そこにいるはずのない人が、吸血鬼がいた。


「なんで理事長である宮内先生がここにいるんですか?」

「あら、訂正させてもらうわね。私は元理事長ですから」

「元? って事はクビになったって事。なら、先生じゃないんだよね。な~んだ、僕より下かぁ」

「むっ、それは酷いんじゃないかな? あんな写真とかこんな動画とかネットに載せて自殺してもいいんだよ?」

「いや、太刀悪い」


 そうか、宮内元先生は理事長をクビになったのか?

 でもなんでなんだ?

 特に不正(ココネ)先生みたいに(あく)に手を染めた訳じゃないだろうし、犯罪をするようにも見えない。

 それにちゃんと仕事だってしているはずだ。

 そんな事を考えているとドリーさんに声をかけられた。


「それで、どうしたんだい? 鬼灯くん。私に報告があるんだろ?」

「そうだった。理事長の事は後でもいいや。ドリーさん、僕は富士山ダンジョンクリアして強くなりました。宝玉の力よ」


 一瞬にして辺りは闇に包まれ僕の後ろには黒く輝く宝玉が浮かんでいる。

 力も一気に増して、もしかしたらドリーさんに勝てるかも。

 しないけど、絶対に。

 だって命の恩人じゃん……いや、1度殺されかけて救われたんだけどね。


「凄いな。私よりも強いじゃないか。わざわざ報告しに来たのは私を殺すためか?」

「い、いえ。そんか事をするなら言わずに殺してますよ」


 なんか答え方を間違えた気がするけどいっか。

 和紗がチラチラこっちを見てくるけどどうしたんだろう?


「どうしたの?」

「えっと、なんか前よりも雰囲気がかっこよくなってて」

「そ、そうなの?」


 自分ではまったく気がつかないけど、和紗が言うならそうなのだろう。


「葛くん、そろそろ宮内先生の事聞いてあげたら?」

「和紗がそう言うなら」


 僕は部屋を変える。

 宮内先生と僕と和紗だけ。


「それで、なにがあったんですか?」

「あれは2日前。いつもと同じように仕事をしてたんだけどね」


 案外普通だ。

 普通に人間している。


「急に北星(ほくせい)家と名乗る所にダン高が買収されたの。それで私は理事長を解任。新たに生徒でもある1年生の北星(なぎさ)が理事長に就任したらしいの」

「そ、それで?」


 僕は嫌な予感しかしない。

 そもそも、なんで北星家はダン高を買収なんてしたんだろう?


「なんでも、その渚って子が超のつくほどの女好きらしいの」

「はぇ?」


 ついマヌケな声がもれる。

 いやいやいや、女好きって言われても。


「それで男女交際禁止、男子寮と女子寮に分けられるそうよ」

「それってやっぱりお金の力?」

「でしょうね。私がどうにか知り得た情報によれば北星家は南条(なんじょう)家と西曜(せいよう)家をも買収したらしいのよ」

「残る財閥は東町(ひがしまち)家だけか」

「東町って生徒はダン高にいないから買収されてないって可能性が高いのよ。いるのは京ダン高の方」


 そっか。

 でも京ダン高が買収されるのはすぐなような気がするな。

 だってダン高は国立なのに買収されるって事は国が関係している可能性が高いって言うかそれしかあり得ない。


「それで、なんだけど。早くこの国を出た方がいいわよ」

「でもどこに行けば?」

「お金は問題ないんだし、他のレベルSのダンジョンをクリアしに行くとこをオススメするわ。元理事長として」


 なるほど、それは一理あるかもな。

 でも、


「でも先生たちはどうするんですか?」

「私は大丈夫よ。ドリーさまのここは普通はバレないから。たかが人間にどうこう出来ないもの」


 なら急いで準備してこの国を出るか。


 その前に最後の仕事をして。



読んでくれている方、まことにありがとなのです。

感想、ブクマ、ptぜひぜひくださいまし!

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