No.036 瞳のウツロ
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伏見稲荷大社横 ダンジョン
~~45階層~~
眼がボヤけているのか、僕には和紗が殺人ベアーに攻撃を受ける姿と、実際戦っている姿が重なっている。
否、重なっていた、の方が正しいだろう。
だって、
「黒夜叉。陽法 翠の太刀 飛雲」
攻撃を受ける姿と重なる所をどうにか阻止する。
と、言うか「またやってしまった」感が……。
「葛くん、ありがとう」
「うん、危なかったからね」
そして、
「強すぎ」
「私たち何やってるんだろう?」
「もう帰りたい」
皆が苦戦していた魔物を1発で仕留めた。
それにより皆の士気は一気に下がっていく。
そしてわかったこと。
この新たに手に入れた眼は『予知眼』とでも言うべきか、少し先の未来を見ることが出来るらしい。
「鬼灯くん、レベルっていくつなの?」
ルークの質問に答える。
「えっと……112」
「あはは、そりゃ強い訳だよ。俺はまだ56だよ」
その後も皆レベルを言っていった。
平均としては50~60くらいと言ったところか。
僕はその2倍近い訳だが1つだけ心当りがある。
それは横浜海底ダンジョン改め海上ダンジョンのボス、あれは人だった。
魔石を落とさなかった事からも魔物じゃない。
そして、人を殺すとレベルが格段に上がるということ。
まぁ吸血鬼という元のスペックが高いのもあるだろうけど。
「後はテラだけだね」
「ぼ、僕は遠慮しとくよ」
テラは頑なにダンジョンカードを見せることを拒んでくる。
人という生き物は仕方がない。
こうも反抗されると見たくなるのは必然だ。
「テラ、お菓子あげるから見せて」
「そ、そんな手には引っ掛からないぞ」
高1でこんなのに引っ掛かったら流石に引く。
「鬼灯くん、違うんだよ。テラ、戻ったらチョコレートクッキー作ってあげるから」
「えっ? 本当? わーい」
テラは手放しに喜んでダンジョンカードを見せてくれた。
流石は宇崎、どことは言わないが大きいだけでなくお菓子作りが出来るとはなんと女子力が高い。
「どれどれ……」
手放しに喜んだからダンジョンカードは宙を舞いキャッチしたのはエリー、どうやら絶句しているようだ。
僕も見せてもらうと絶句するのがわかる。
それもしょうがないだろう。
レベルは500を越えてるのにステータスが圧倒的に低い。
これじゃあ人間のLv.50となんら変わらない。
「えへへ、レベル高いでしょ」
「うん、そうだね。凄いよ(ステータスが)」
僕はテラにダンジョンカードを返してあげる。
「そっかー、やっぱりすごいかー。だから見せたくなかったんだよね、自慢みたいになっちゃうからー」
どうやらテラの頭の中はお花畑ようでとってもポジティブだ。
そりゃ僕の(ステータスが)は伝えてないけど。
「よーし、みんなー。次の階層に行くぞー」
~~46階層~~
褒められたのが相当嬉しかったのかテラはハイテンションで、その責任は褒めてしまった僕ということになり現在一緒にダンジョン内を探索中。
「ねぇねぇ、僕って凄い?」
さっきからずっとこの調子で最終手段の一歩手前、無視という作戦を使っている。
のに、テラはめげずに何度も「褒めて褒めて」状態なのだ。
これは最終手段を使うしかないのか、なさそうだ。
「レベルは高くて凄いと思います。思いますけどステータスもそれに反比例して低くて凄いですね」
「そうか? ステータスもすご、い、か? おい、今低くてって馬鹿にしたのか?」
辺りの空気が一変、凍てつく寒さに乱れまくる魔力。
『乱魔』を使ってないのに……それだけテラが凄いのか?
「ば、馬鹿になんてしてないよ」
いや、どう考えても馬鹿にしている。
「延び白があっていいじゃん」
どうにか言い訳を繋いでいく。
「僕の場合100から上がりにくくって辛いんですよ」
これは嘘を言っていないし、話を少しずつそらしていこう。
「そ、それにほら、ボス部屋があったよ」
運よく、本当に僕たちの進んだ道にボス部屋の扉を見つける事が出来た。
「じゃあ僕は連絡してくるから」
逃げるようにテラから距離をとる。
テラは静かになりションボリとしてしまった。
少ししてみんなが集まりだす。
そろそろ疲れてきたようで、足取りが重たかったりしている。
「一旦休憩にしましょう」
京ダン高のルトラが提案するとみんなが無言で頷く。
結構ぶっ通しだったから疲れが溜まってしまったのだろう。
まぁ僕は、吸血鬼だから、疲れなんて全然ないけどね。
「じゃあ僕がボスを倒してくるよ」
「1人で大丈夫? だね。聞いた俺が馬鹿だったよ」
おい、ルーク。
それはどういう意味か後で聞く必要がありそうだな。
「ルーク。後で話があるから」
言霊だけで威圧してからボス部屋に入る。
ボスは蛾でとても気持ち悪い。
気色悪い色をしていて、紫、ピンク、赤など。
更にはよくわかんない粉を飛ばしていて、ジジジジと羽を動かすと鳴って寒気が、鳥肌が立つ。
「やだ、気持ち悪い」
そんな言葉が漏れるほど気持ち悪い。
「黒夜叉。陽法 紫の太刀 冥灰道」
空間を抉り取る球体がボスの蛾を呑み込んでいき跡形もなく消し去った。
それはもう跡形もなく、魔石すら残していない。
そもそもあんな気持ち悪い蛾の魔石なんて欲しくないからよかったとも言える、うん。
「も、もう終わったみたいだね」
「規格外すぎる」
「これはレベル(吸血鬼)の賜物です」
双子のリンゴとミカンに呆れられている。
レベルと吸血鬼の力は結構凄いようだ。
けど、ドワーフとかエルフならこれくらい出来ても不思議じゃない。
種族としてか弱い人間じゃないから。
~~47階層~~
この階層は一転してダンジョンと言うよりも観光地と言ったろうが正しいだろうか。
鳥居がずらりと並び、その外側は真っ暗闇。
鳥居の続く先には1つの大きな扉、ボス部屋の扉があるだけ。
「なんか凄いところだね」
「伏見稲荷の千本鳥居のようだね」
「葛くん、外側はダメだよ」
「わかってるよ。戻ってこれなくなりそうだし」
直感だが、外側は暗く全てを喰らい尽くす闇のように思えてならない。
外側は確実に別世界だろう。
好奇心は勝たないでくれたから行こうとは思えない。
「クンカ、クンカ。なにか美味しい匂いがするよ。お肉の匂いだよ」
ルトラは急にそんなことを言ったが、誰1人としてその匂いに気がついてない。
流石は犬の獣族と言うべきか、なにかを怪しむべきか。
「あ、あっちだ」
「ルトラちゃん、まって」
ルトラは急に走りだし、それにペトラがついていく。
そのまま誰も止める事は出来ずに鳥居の外側はに行ってしまった。
否、止められなかったんじゃない、動けなかったんだ。
誰1人として動けなかったから止められなかった。
「体が動けなかった?」
「そうだろうな……父上?」
またも体が動かなくなり、次は一松がある一点を見ている。
そこには特に何もないのに一松はヨロヨロとした足取りで鳥居の外に、それについていくのは一松が消えるギリギリに動けるようになったルークだった。
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