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宝玉の吸血鬼。~人間を辞めきれない大罪人~  作者: ホタル。
2章 断罪者編
35/155

No.034 秘密をチョウダイ

更新!



 伏見稲荷大社横 ダンジョン



 ~~33階層~~


 ボス部屋、そこは小高い丘になっていて1本の立派な桜の木がはえていた。

 否、桜の木と言うと語弊があるから違うな。

 桜の花弁1枚1枚が刃となっていて、木その物が魔物なのだろう。


「黒夜叉」


 黒夜叉を出してからゆったりと歩きながら近づいていく。

 すると、どこからともなく風が吹いて花弁の刃が宙に舞う。

 そう、俗に言う「桜吹雪」ってやつだろう。

 そんな桜吹雪(花弁の刃)は無視して木の目の前までやって来る。


「陽法 黒の太刀 断絶」


 木の幹に横一線、斬ったつもりだったが斬れていなかった。

 花弁の刃は普通の花弁に変わり満開の桜の木がそこにはある。

 そして足下にある1つの魔石。


「終わったの? はやいねー」


 テラがまず入ってきて順々に他のみんなも入って来る。


「葛くん、服がボロボロだけど大丈夫?」

「あぁ、敵の攻撃を無視してたからね」


 それにしても今の僕の制服は血がつきボロボロに破れている。

 なんとも不良みたいな感じだな。


「僕は1回着替えてくるよ」


 そう言ってダンジョンを抜けて1度京ダン高の寮に移動する。



 ※



 寮についてから最初に会ったのは先生ではなく、やっぱりと言うべきか、


「痛みはもうないか?」


 そこには僕のおかげで元気になった姫山がそこにはいる。

 ついでにそれに引っ付く南条の姿も。


「クソ野郎」

「俺は、俺は君に助けてなんて言ってないんだよ」


 南条は僕を見て「クソ野郎」呼ばわり。

 それは変わらないから別にいいとして姫山が言った言葉は聞き捨てならない。


「そっか、僕には助けてって言ってなかったんだ。ひとーつ、テラの攻撃は普通の魔法じゃ回復させる事が出来ませーん。ふたーつ、僕は今の言葉を聞いて元に戻してあげることも出来るけどどうする?」

「脅しか?」

「いや、ガチだよ」

「俺がそんなハッタリに引っ掛かるかよ」


 なんだろう、ここまで都合良く煽る人なんているんだ。


「やめてー、快斗くんに傷つけないで」

「おい、南条。僕はただ単に元に戻してあげるだけだよ。嫌だって言ったのは姫山だしそれで死ぬことも覚悟出来てるんだと思うよ?」

「やめて、お願いします。快斗くんも謝ろうよ。死んじゃうよ」


 南条は泣きながら姫山に懇願しているが聞く耳を持たない。

 それどころか俺の事を睨み殺そうとしている。


「暦ちゃん、大丈夫だよ。どうせ鬼灯のはハッタリだから」

「そうだな、ハッタリだったらいいな。テラの時はハッタリじゃなかったしね。混沌陰法 回復解除」


 混沌陰法の部分は聞こえないように小声で、その後、姫山は血を吐いて地面に倒れこむ。

 止血の分も解除したからあと5分もしないうちに死ぬことになるだろう。


「僕は汚れてボロボロの服を変えに来ただけだから行くわ」

「お、お願い。助けてあげてよ」

「なんでだ?」

「都合がいいのはわかってる。けど――――」

「――――そう、都合が良すぎるよ。それにここから治療室まですぐだからもしかしたら治るかもしれないよ」

「そ、そうだ。治療室に」


 南条は姫山の脇を持って引き摺りながら治療室の方に連れていった。


 僕は部屋に戻り服を着替えてから1着予備として魔法収納袋に容れておく。

 その後にダンジョン前にある受付で魔石を、桜の木の魔物の魔石を売ってからダンジョンに入る。




 *



 魔石換金

 桜の木   100,000円



 *




 ~~40階層~~


 僕が戻っている間に結構進めたようで40階層が今の最下層になる。

 和紗が迎えに来てくれてここまで迷わず来ることが出来た。


「よし、全員揃ったな。じゃあみんなで行こう。ほ、鬼灯くんは最初は見ていていいからね」

「うん」


 ボス部屋中に入ると灯りがついてボス部屋全体を照らしあげる。

 そこは夜の神社って感じで、ボスは賽銭箱の上に座っているおじさんだろう。


 ダン高と京ダン高は共闘してボスを追い詰めていく。

 見事な連係で綻びはあるものの、ボスはそこに攻撃できずにいる。

 これが増えたら無理だろうけど、1体だけならどうにかなりそうな感じだな。


 約10分、一松の攻撃でボスは倒される形となった。

 そして、


「なんでテラは戦わないんだ?」

「僕は対人戦を得意とするからね」

「でも魔法は使えるだろ?」

「もちろん。でも詠唱面倒じゃん」

「まぁそうだけどね」


「みんな、先生から連絡あって姫山くんが危険な状態らしい」


 一瞬で僕の方に視線が集まりだす。


「だ、だって1回着替えに帰った時に会ったけどね。僕に治されるのが嫌みたいで文句言ってたから治すのを解除しただけだよ?」


 みんなの顔は自業自得だけど酷い、そんな感じで治すのと治さないのどっちが正解かわからなく悩んでいる。


「だって折角治してあげたのにさ、治せなんて頼んでないって言うんだよ?」

「そう言われるとそうだけど、死ぬ可能性もあるじゃん?」

「うん、僕はそう言ったよ。けどハッタリとか言ってたから」

「……」


 真面目な楠木(くすのき)は黙りこんでしまった。


「い、1回戻らない?」


 エリーが申し訳程度に言う。


「そ、そうだね。そうしよう」


 するとそれが伝染していき、方針は戻るという事に決定した。



 ※



 場所は変わり京ダン高の治療室。

 そこに集まるダン高、京ダン高、のA組全員。


「今から約1時間は大丈夫でしょうがそれ以降は治す方法がないと無理に近いです」


 超のつくほど高額な魔道具、時間停止(回復用)の魔道具で、怪我を一次的に停める事が出来る。

 その内に治す方法が見当たらないと残念ながらという事になる。


 そしてその主犯であるテラは教師が集まってきて叱られている。

 ダン高の先生も叱っていたが、テラの話を聞いて知らなかったのか(だんま)り決め込む教師もちらほら。


「なんで治せるのに治さないの?」


 僕もとばっちりで最初は怒られていた。

 が、姫山の不正を聞くと掌返しで諭すように叱りつけてくる。

 そのまま話半分で叱られて約30分。

 1人の巨体と1人の女性が治療室に入って来た。

 その入ってきた2人は超が10個以上ついてもおかしくない有名人。

 ダンジョンクリアに物凄い貢献をし、姫山快斗の父である、姫山十蔵(じゅうぞう)と姫山亜衣(あい)

 お父さんの方はもう釈放されてたんだ。

 どうせダンジョンクリアを沢山したからっていうような理由だろうけど。


 ここからが面白かった。

 まずは犯人であるテラに殴りかかろうとする十蔵さん、それをなんとか止めた教師たちと亜衣さん。

 次に亜衣さんがテラを平手打ちし、その後快斗の所に行き泣き崩れた。

 それに従うように十蔵さんも快斗に近づき泣き崩れている。


「回復魔法」


 亜衣さんが快斗に対して回復魔法を使うがなんの効果もない、見える範囲では。

 約1/100000で治っているが、そんなの些細なことだろう。


 約10回くらい回復魔法をつかい辺りの魔力が切れて発動されなくなった。


「この子は、この子は治らないんですか」


 そう聞かれた京ダン高の1人の教師がこちらをチラチラ見てきて「言っていい? いいよね、いいよね」と目で伝えてくるが気がつかないフリをしておく。

 そして、


「鬼灯くんなら治せるらしいです」


 耐えられなくなったのか言いやがった。



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