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宝玉の吸血鬼。~人間を辞めきれない大罪人~  作者: ホタル。
1章 略奪者編
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No.024 疑惑のハンテイ



 アイツこと、第五始祖の雨宮(あまみや)香鈴(かりん)を拉致る事に決まったから早速行動に移ろう。


「和紗はここで準備だけして待ってて」

「ドリーさんの所に行く?」

「いや、いいや。大丈夫」


 なんでドリーさんの所なんだろう?

 準備で必要な物でもあったのかな、ローザスさんに作ってもらうとか。

 まぁ、いいや。



 ※



 5月の下旬だから2ヶ月ぶりの我が家になる。


「ただいまー」

「葛どうしたの? 学校退学になった」

「いや、なってないから」


 弟が出迎えてくれたけど、いきなりの悪口で少し驚いた。

 いや、いつも通りだな。


「そんな事より平日なのになんで休んでるんだ?」

「ふっふっふっ、昨日運動会だったから今日は振替日なのだ」


 なるほど、だから平日に家にいて、しかもこのおかしなテンションなのか。

 でも、学校に先生たちはいるだろう。

 なんで中学の先生に会う必要があるかって?

 それは最近新たな特技を覚えて、それのおかげで雨宮と会う方法を思い付いたんだ。


 僕は学校に向かい、保健室にノックをしないで入る。


「失礼しまーす。水無瀬先生いますかー」


 そういえばなんで保健の先生って吸血鬼なんだろう。

 ダン高もそうだし出身中学もそう。

 保健の先生ってなるのが簡単なのかな?


「あら、第十始祖の……なんでしたっけ?」

「あぁ、その事は気にしないでください。それで、雨宮香鈴と連絡をとりたいのですが」

「なんで香鈴と? そもそもどこで知り合ったの?」

「面倒なので先に連絡をとってください、お願いします」

「あなた、誰に言ってるかわかってるの? 第四始祖として命じます。第十始祖のあなたの目的はなに?」

「目的はアイツを利用したいからです」

「低俗のくせに利用するだと? それも私の子を」

「なら本当の――――」

「――――黙りなさい。もういいです。私は第四始祖としてあなたを殺す必要があるみたいですね」


 どうして僕の嘘は悪い方向にしかいかないんだろう。

 いや、ね、嘘をついた僕も悪いけど、ここまでくると逆に凄くて尊敬するよ。


「死ね」


 水無瀬先生は白衣の下から拳銃を取り出して何発か発砲した。

 それは全て僕の体に命中したが、10秒もしない内に傷は全て塞がった。


「さて、水無瀬先生。早く連絡をとってください」

「なぜ効かない。第十始祖の分際で調子に乗るな!」

「奴隷陰法――――」

「――――馬鹿なのか? 立場が上の私は効かず自分の首を絞め――――」

「――――天命の足枷。さて、水無瀬先生。あなたでいいです。ついてきてください」

「なっ、なにをした。私に一体なにをしたんだ」

「そうだ。混沌陰法 蜃気楼(しんきろう)の気まぐれ」


 これで水無瀬先生についている足枷は周りから見えなくなっただろう。

 うん、隠蔽系統の陰法は結構いいかも。


「話を聞け、第十始祖」

黙ってついてこい(・・・・・・・・)

「誰がお前なんかの言うことなんて」

「第十始祖に負けた弱虫。それじゃあ雨宮と同じだな」

「ま、待て。れ、連絡をとるから」

「わかりました、待ちましょう。でも好きな女の子が待ってるから急いでください」


 水無瀬先生は雨宮と連絡をとっている。

 そして、僕の名前を出した瞬間に切られるというコントをさっきから10回くらいしている。

 雨宮は連絡を受ける度に記憶をリセットしているフリをしていて、水無瀬先生は偉いはずなのに一切命令をしないという、子を大事にしているのが伝わってくる。


 えっ、これはただ単にテンパっているから忘れているの?

 そうなの、って知ってたし。

 もちろん知っていましたよ、えぇ。


「どっちでもいいんで早くしてよ」

「ま、待って」

「ならもういいや。第二始祖として命令する。水無瀬、ついてこい」

「それは流石に無礼だぞ? (かた)りはよくない。しかも相当上に騙るとは、なんたることか」

「黒夜叉」

「許されざる、ゆる、ゆさrゆされざや」


 水無瀬先生はブクブクと膨れ上がり最後には血や臓器の類いをぶちまけながら弾けた。

 白を基調としている保健室に赤い血が映えていい。

 頬についていた水無瀬先生の血を舐めてみたが不味かった。

 とても口に出来るものじゃないし、和紗の血を吸いたくなった。

 それよりもこの状況が、どういう事なのか。


「おー、なんか大変な事になってんな」

「なぜお前がここにいる、神原(かんばら)


 神原京介(きょうすけ)、中学の時に僕の事が気に食わなかったのかよく突っ掛かってきてたヤツだ。

 それにこの気配は吸血鬼、なのか?


「この前はよくも舐めた真似をしてくれたよな?」

「なにが言いたい」

「だが、だが今は違う。俺は吸血鬼になったんだ。この力があればお前なんて簡単に殺せるんだよ。わかるか?」

「で?」

「なんだよ、その態度は。お前は今から殺されるんだよ」

「殺ればいいじゃん」

「ハンッ。我、第三始祖のなにおいて敵を葬り灰にする力を。混沌陰法 滅炎(めつえん)

「混沌陰法 水弾」


 お互いの陰法を打ち消しあう出力で撃ったおかげで被害は一切なくすんだ。


「これはこれは申し遅れました。僕は第二始祖の鬼灯(ほおずき)(かずら)です。以後お見知りおきを」 

「なん、で? あの人は、あの人は第二始祖の残りは3人って言ってたのに」

「神原、面白そうな情報持ってそうだね」

「な、ななな、な、なんの事だかわからねぇな」

「いや、動揺しすぎだよ」

「そんな事ねぇだろ」

「ならさ、これだけ教えてよ。なんで神原は僕に突っ掛かるの?」

「さぁ、なんでだろう――なっ」

「黒夜叉」


 神原の武器は槍のようで、突き刺してきたそれを黒夜叉でいなす。

 案外、槍の使い方が上手いせいかなかなか相手の懐に入ることができず、目を狙う嫌らしい攻撃をいなし続ける一方になってしまう。


「すべてお前が悪いんだ。お前が俺の好きな子を横取りするから」


 神原はいつの話をしているんだ?

 絶対に和紗の事ではないだろう。


「小学生の時、俺はその子に好かれようと努力したんだ。なのに、なのにお前は」


 おいおい、小学校が同じて、その好きな子がおれを好いてたって完全な逆恨みじゃんかよ。

 そんなんで僕の事に突っ掛かってきてたのかよ。


「あー、もうウザイ。陽法 紺の太刀 戯れ」


 殺す気で斬撃を飛ばして仕留めにかかるが、全てを上手く、本当に上手く、どう考えてもまぐれだろって思う避け方をして、


「ちっ、帰らねぇといけねぇのかよ」

「あっ、おい待て」


 神原は気がつくと消えていた。

 これでわかった事が1つある。

 まだ第二始祖は何人か残ってる。

 その全員が僕の敵で、ドリーさんの命を狙う存在。


「あっ、ボス部屋に置く人を忘れた」


 大事な事を忘れていた。

 雨宮と連絡はとれないしな。

 よし、素直に和紗に謝ろう。

 そして疲れた心を癒してもらおう。


 方針が決まり僕は寮へと急いで戻った。



好きなアーティストの新曲が更新されててテンション上がっているホタル。です!

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