No.023 焦燥とギワク
~~199階層~~
この階層のボスである魔物、リビングアーマーを吸血鬼化してみた訳だが、結果は失敗。
僕の血に耐えきれずに命を落としてしまった。
折角、可愛くって、忠実なる僕が出来ると思ったのに。
次の階層に行く階段が現れたから進んでいく。
~~200階層~~
最下層。
その言葉が示すのはダンジョンの1番下ということ。
そして、クリア報酬があるということ。
「これって知ってる?」
「うん。[耐性の薬]って言ってパーティーメンバー全員にもらえる薬」
「耐性ってランダムなのか?」
「耐性は望んだ物。その望んだ物が人から人外になるような物だと発動せずに終わり」
なら、僕が望む耐性は1つだけ。
「葛くんはなにか思い付いてる?」
「あぁ、大事な物で、これを克服しても人として壊れない」
「それってなに? 嫌いな食べ物を食べれるように?」
「そんな可愛い感じじゃないよ。太陽耐性。だって日焼け止めが高いんだもん」
「あっ、それ私もそれにする」
2人で太陽をイメージしながら薬を飲む。
そうすると、なんかわかんないけど力が湧いていた。
「これで大丈夫かな?」
「たぶんね」
それから2人で学校に帰った。
思ったよりもサクサク進めたから日を跨がずにはすんだ。
ちなみにリビングアーマーの魔石は100円だった。
僕の技を無理して止めたから魔石が削られたんだと思う。
太陽を克服できているかは明日にわかる。
※
昨日とは違い今日はとてもいい快晴。
実験をするには申し分ない感じだな。
「和紗、朝だよ」
「んーー。もうちょっと」
昨日はぶっ続けだったからまだ疲れが抜けてないのかな?
それにしても、女の子の寝顔を見てると疚しい気分になってくる。
だからと言ってなにかするつもりはないけどね。
そう、意気地無しってやつだけど、それは僕の取り柄だと思ってる、うん。
僕は制服に着替えてから、ココネ先生の所に行く為の準備をする。
昨日のダンジョンの報告を今日しに行く。
「和紗、そろそろ起きたら?」
「葛くーん」
「うわっ」
「んふふふー」
軽く肩を揺すっていたら腕を掴まれて勢いよく引っ張られ、抱き枕状態にされた。
そしてこの格好には既視感が……そこで僕は意識を手放した。
意識を手放して数時間。
「葛くん、葛くん」
「んーーー」
どうやらあの後に床に落ちたようで、身体中が痛い。
「おはよー、和紗」
「おはよう、葛くん。でもなんで地面で寝てるの?」
「ちょっとね。疲れてたみたい」
和紗の寝相が悪くて絞められたなんて口が裂けても言えないな。
「まだお昼だし外に行ってみよ。そのままココネ先生の所に報告も」
「うん。太陽が克服出来てれば結構楽になるもんね」
僕たちは久しぶりの日焼け止めなしで太陽の下に出た。
「んーーーー」
特に問題がなかった事が嬉しく大きく伸びをする。
和紗はそこまで感動は薄いのは太陽が辛い時期が少なかったからだろう。
「よし、行こっか」
「うん」
和紗と手を繋いでココネ先生の所に向かう。
えっ、2人は付き合っているのかって?
そんなの聞かなくてもわかるだろ。
自然な流れでこうなった。
いやー、こういうのってアニメとか物語の中の話だと思ってたよ。
教室に入ると特に生徒はいなく、ココネ先生が教卓に座り暇そうに足をブラブラ揺らしている。
そんな姿はさながら小学生と言っても通じてしまいそうな風景だ。
「ココネ先生、報告に来ました」
「おぉ、鬼灯くんと和紗ちゃんか」
なぜ僕だけ苗字呼びなのか凄い気になるところだが、聞かないでおこう。
「それで鬼灯くん、報告ってなにかな? 結婚しますとかそういうのろけは本気で聞きたくないからね?」
「いえ、東京タワーダンジョンをクリアしたっていう報告です」
「そういう嘘はいいから、昨日の内に快斗くんが報告に来たんだよ?」
そんな、だってクリアしたのは僕たちのはず。
それにクリア報酬だってもらったんだから。
「ココネ先生、それはおかしいです。私と葛くんとでクリアしました」
「そうは言ってもね、報告書が届いているんだよ」
「それならこっちにもあります」
ダンジョンクリアした時に貰った用紙を見せる。
それはダンジョンの入り口のところで、きちんと確認してから貰ったから間違いない。
「うん。本物だ」
「なら」
「ちょっと待っててね。快斗くんに貰ったやつを取りに行ってくるから」
そう言ってココネ先生は教室をあとにした。
どういうことだ?
姫山がそんなズルい事をしたのか?
「どうしてだろうね?」
「なにが?」
「そんなズルい手を使ってもすぐにバレるのに」
「バレない自信があるとか?」
約10分後、
「おまたせ、君たちのはやっぱり偽物だったよ。あまりこういう嘘は関心しないよ?」
「そ、そんな訳ないじゃん。だってクリア……」
ダメだ、クリア報酬の説明が難しい。
それに姫山だったら嘘の報酬を手に入れる事くらい親に頼めば可能だ。
完全に今回は詰んでる。
「でも途中までは君たちがクリアしたんだね」
途中までのは偽装できないということか。
または東京タワーダンジョンは更に下があったと考えるべきか。
「葛くん、行こ」
「うん」
僕は和紗に手を引かれて教室を出ていく。
「どうにかして証拠を見つけないとね」
「うん、でもそう簡単にはいかない気がする」
「そうかな?」
「うん、僕たちの調べる力には限界があるじゃん」
「それは普通の人間ならね」
「あっ、そっか。吸血鬼としてならどうにかなるかも」
「それで考えたの。もう一度違うダンジョンをクリアしちゃいましょ」
その後、寮に戻り和紗と色々な作戦を考えた。
どこのダンジョンに行くか。
また、周りにバレないように帰ってきて報告できるか。
情報が出回らないようにはどうするべきか。
まず、向かうダンジョンはランクAの横浜海底ダンジョンだ。
海底ってつくだけあって、普通の人は行くのが大変。
だけど、そこは吸血鬼パワーで気にしなくてもいい。
次に周りにバレないように帰って報告するのは、認識阻害と隠蔽を組み合わせればなんとかなるだろうということになった。
まぁ、実際なんとかしてやるつもりだ。
最後に情報が出回らないようにはどうするか。
これは1つだけ方法が思い付いたが運次第で、毎度毎度ボスが復活するボス部屋があることが条件だ。
それで、入試に使った時とおんなじ事をすればどうにかなると考えている。
必要な物、ボス部屋に置いていくようの人間。
「さて、これをどう手に入れるか」
「誰か誘うって言ってもね」
「そうなんだよ。だから無理矢理拉致るとかしか思い付かないんだよね」
「それはあまり人道的じゃないよね」
「うん、だからしないよ」
悩ましい。
ダンジョンに置いていっても問題のない人、ない人、ない人……いたは。
でもな、アイツに会いたくないし、けど経験があるから1番いいような気がするんだよな。
「よし、拉致ろう」
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