No.022 夢の跡のショウソウ
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~~196階層~~
ボス部屋に入る時にまたも魔法の詠唱が聞こえたような気がしたが、今はボスに集中するべきだろう。
相手は固いで有名な鋼鉄オーガと呼ばれる魔物で、食生活は固いものを兎に角食べて固くなったと有名だ。
物理に物凄い強い耐性があって、魔法には弱いけど、そう簡単に効くという訳でもない。
「和紗。ここは僕がいくね」
「うん。わかった」
「黒夜叉」
僕は最近気がついたのだが、固いものを斬るのが好きみたいだ。
「陽法 黒の太刀 断絶」
特殊な防御じゃないと防げない攻撃を使い、一撃で相手を沈める。
「終わりー」
「なんでわざわざ斬るの?」
「固いのを斬るのが楽しいから」
「でも今の技は防御出来ないから絶対と言っていいほど斬れるじゃん。そんなのズルいよ」
いやいや、今の和紗の顔の方が十分ズルいと思うけど口には出さない。
「魔石は結構大きいね。それに重い」
「これも固くて斬ったら楽しそうだよ?」
「嫌だよ、勿体ない」
よく考えてみればその線引きってどこなんだろう。
和紗に魔法収納袋を持ってもらい、僕が魔石はいれる。だいたい5kgくらいで結構重たかった。
あれ、でも和紗を持ち上げた時より重く感じたのはなんでだろう?
「和紗の体重って5kgよりも軽い?」
「さ、流石にそこまで軽くないよ」
「だよね」
「どうして?」
「いや、和紗をお姫様抱っこしたときより、この魔石が重たく感じたから」
まぁ、気持ちの問題だな。
可愛いから軽く感じる、きっとそうだ。
「可愛い」は正義だ。
~~197階層~~
またもボス部屋があるのみで、変わった所としては少しずつ狭くなってきているくらいだ。
ボス部屋に入る時にさっきの人たちが急いでついてきて、魔法の詠唱が聞こえた。
よく耳を澄ますと、「魔法の目」と呼ばれる視覚を飛ばして遠くをみる魔法と、「隠蔽」と呼ばれる魔法を隠したい時に使う魔法だった。
この魔法から考えるに中に人を入れてそこから情報を手に入れてたんだろう。
「ボスはどんなのかな?」
「あれかな?」
和紗は上を、天井を指さしている。
そこにいるのは大きな大きな蜘蛛で、皮膚はキラキラと輝いていて気持ち悪い。
そして、ズドーンと音をたてながら地震を起こして降りてきた。
「和紗、少しの間任せてもいい?」
「いいけど何をするの?」
「ちょっと、魔力眼。黒夜叉」
「月華。陽法」
さて、魔力眼のおかげで隠蔽魔法があってもどこに魔法の目があるかわかる。
2つはきちんとボスの動きを観察してるからそれはいい。
けど1つだけ、1つだけ和紗をガン見していて許せない。
「陽法 紺の太刀 戯れ」
多くの斬撃を3つの魔法の目、目掛けて飛び、全てを破壊する。
「手伝うよ」
「この蜘蛛固くて魔法もなかなか効かない。もちろん陰法も」
「なら。陽法 黒の太刀 断絶」
またも同じ技だが、使い勝手がよすぎるからしょうがない。
顔から一気にお尻まで蜘蛛を縦に真っ二つ。
「OKだね」
「だからその技はズルいよ。今度教えて」
「うん、いいけど陽法って普通は武器の強度をあげたり身体を強化するんでしょ?」
「うん、そうだけど葛くんは違うじゃん」
「ドリーさんもやってたからそうだとばかり」
まぁ、多いのは手札になるから悪い気はしない。
蜘蛛の魔石も魔法収納袋に入れて換金所まで戻るつもりが、
「おい、兄ちゃん。よかったら俺たちのパーティーに入らないか? そこの嬢ちゃんと一緒によ」
「いいや、俺たちのパーティーの方がいいぜ。金だって幾らでも払う。だから、な?」
「私たちのパーティーならもうお兄さんはハーレムよ。もちろんそこの彼女さんも一緒で構わないからどう?」
「ごめんなさい。間に合ってますので。それと、誰ですか?」
「な、なにがだよ」
「どうしたんだ、急に」
「ひ、ヒゥ」
「誰が和紗を魔法の目でジロジロ見てたの?」
そう聞くとお金を払ってでも勧誘しようとしてた人と女性は自分じゃないと安堵している。
が、
「お前か?」
「な、なんの事だよ。それに魔法の目だってそんな簡単に使えるもんじゃねぇんだぞ」
「なら正直に言え。命だけはとらないでやる」
「強いからって、強いからって調子に乗るなー」
その男は持っていた武器、剣を引き抜いて攻撃しようとするが、それが届く事は無かった。
「陽法 無の太刀 無刀真剣」
見えない刃でその男の腕を斬り飛ばしたからだ。
「和紗、今の見た? 腕が勝手に飛んでったよ」
「凄かったね。でも間違えて攻撃が当たってたら死んでたからいんじゃない?」
わざとらしく白を切ると、和紗も真似ておどけてくれた。
「僕たちは魔石の換金に向かうので失礼します」
口止めは必要ないだろう。
だってなにが起きたかわかっていないだろうし。
*
魔石の換金
鋼鉄オーガ 700,000円
土蜘蛛 1,000,000円
*
~~198階層~~
相も変わらずボス部屋で、ボスはサービスなのか黄金スライム、瞬殺で金を2kg落とした。
売ったら10,000,000円した(ワオ)。
~~199階層~~
打って変わってダンジョンはちゃんとした迷宮だった。
トラップがあり、敵が出てきてと。
敵はゴブリンから始まり、気持ち悪い蜘蛛や、アリのような昆虫系統の魔物が多かった。
どれもまあまあ強かったからいい感じに楽しめた。
「やっとついたね」
「30分かかったのか。和紗は準備大丈夫?」
「もちろん」
「まだ、他の人は来てないね」
ボス部屋の扉がゆっくりと開くので、入るとすぐに閉まった。
やっぱり倒さないと出られないのか。
難易度の高いダンジョンは気をつけないとな。
でもそう考えるとあの魔法の目も死なない為の1つの作戦なのか。
「さて、ボースはなんだろな? 出来たら固いので」
「固いのは嫌だよ。私が戦えないから」
「姫、僕がきちんとお守りしますから」
「は、はい。お願いします」
「あのー、そろそろ気がついてくれてもいいんだよ?」
どうやら知性がある魔物? のようだ。
「自己紹介から?」
知性があるならそのくらい許してくれるだろう。
「そうだね。それもわるくない。オレは“りびんぐあーまー”だ」
リビングアーマーと呼ぶには小さく、小学校低学年くらいだ。
そういう騎士に憧れるのわかるって言いそうになる。
「なら、僕も。吸血鬼、第二始祖の鬼灯葛です」
「わ、私は第三始祖の八乙女和紗です」
相手が相手だから丁寧に、そして1発で。
「陽法 翠の太刀 飛雲」
「黒剣 だーくはんど」
剣とかいいながら、黒い手を出してそれで斬撃に攻撃して打ち消した。
「なかなか、だな」
見えないはずなのにリビングアーマーが汗をかいているのがわかる。
うん、そうとう効いている感じだ。
「陽法 紺の太刀――――」
「――――まだあるの!?」
「戯れ」
「黒剣 だーくはんど。頑張る」
頑張るとかもう技じゃない。
それに可愛いし、強いから倒すのが惜しい。
本当に頑張ったのか、たくさんの斬撃を全て打ち消していた。
「混沌陰法 棘拘束」
本気のスピードでリビングアーマーの後ろに回り込み拘束する。
そして、
「汝に我、第二始祖の鬼灯葛の名において、吸血鬼となる力を授けよう。眷属陰法 血鬼契約」
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