No.153 答え合わせをハジメヨウ
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本日2話目!
“心”に優しい声が広がっていく。
周りの時間は止まっているのか、金色の靄がかかっている。
『気にしないでも攻撃はされないよ』
「(……あなたは何者なんですか?)」
『私は人神。人の神って名前だけどそんな大した存在じゃないけどね』
いや、どう考えても凄い存在でしょ。
だって違う神が出てきたのに時を止めてるんだから。
で、この神とやらは僕たちに何をさせたいんだろう?
『あそこにいる天神を封印してほしいんだ』
「(殺すんじゃなくて?)」
『逆に聞くけど殺せると思うのかい?』
「(……出来なくもないと)」
どうにか出来ると思うけどな。
『無理だよ。神は死なないから』
「だから封印してほしい、と」
『そういう事』
なるほど。
でも状況が見えない。
なんで人神と天神は争っているんだ?
『それは少し時を遡らないといけないね。
この世界には……各世界にはそれぞれ神がいたんだ。獣神、森神、鉱神、悪神、魔神、天神、そして人神。その7人の神がいた。
そんな天神は1人の神、魔神を手にかけたんだ』
「(それって)」
『そう。食らったんだ』
「(食らった?)」
いや、「そう」って言われても知らないよ。
でも、殺せないなら食らえばいいのか。
『で、だ。それだけに飽き足らず、他の獣神、森神、鉱神、悪神、魔神をも食らってしまったんだ』
「(人神は?)」
『私はもちろん逃げたよ』
いや、逃げるのね。
『そりゃあ、怖いからね。他の神をも食らうから力をつけにつけて。でも対抗策を作ったんだ』
「(それが、シャルの持つ“虚飾の宝玉”ですか)」
『その通り、と言いたいけどそれだけじゃない』
「(と言うと、ドミニカさんの持つ“憂鬱の宝玉”もそうですか?)」
『そう。その2つだ』
じゃあ、やっぱり僕の宝玉は天神の物なのか。
でも天神の物で倒すのもいい、悪くない。
『なんの因果かわからないけど、君と彼女は私の眷属に当たる』
「(……それって吸血鬼が人神の眷属って事ですか?)」
『知らないかもしれないけどそうだよ。君の親にどんな経緯で吸血鬼になったか聞いてみるといい』
「(なる、ほど)」
取り合えず、天神は食らわないといけない、と。
『まさか、本当に天神を食らう気かい?』
「(そのつもりです)」
『成功するかわからないんだよ?』
「(問題ない、と思います)」
シャルもいて、天神の能力を封じれるんだ。
それに「暴食の宝玉」がおかしなほど、僕の体に馴染んでいる。
「(だから、シャルと一緒に天神を食らう。理をも喰らう)」
――――パキッ パキッ パリンッ
金色の靄に皹が入り込むと、すぐに割れてしまった。
『私はまた眠りにつくよ』
いやいやいや、「また」って言われても知らないんだけど?
てか、今まで寝てたって事かよ。
「まぁ、いい。暴食に喰らえ、理を喰らえ」
闇より暗く、黒より黒く僕を中心として染め上がる。
「カズラ、くん?」
「大丈夫だよ、シャル。そのまま天神を無害にしといてくれれば」
そうすれば、僕が喰らえる。
『貴様! 我を食らうつもりか』
天神は脇目も振らずに逃げようとするが、
――――ゴチンッ
暗い黒いモノに遮られて逃げる事が出来ないでいる。
『チッ。南条と言ったな』
「「「えっ」」」
呼ばれた女神と僕たちの驚きの声が重なる。
まさか、女神が南条だったなんて。
『その体を使ってやる』
「させるかぁー!」
暗く黒いモノが天神を喰らおうと伸びるがあと少し、あと少しが届かずに、
「ふっふっふっ。顕現してやったぞ、人間!」
「人間じゃない、吸血鬼だ。宝玉の吸――――」
――――ドグゥ
「煩い。目障りだ」
高が蹴り、然れど天神の蹴り。
その威力はおかしく、体に穴を開けながら吹き飛ばされる。
治そうにも、治りが遅い。
「回復陰――――」
「――――煩いと言ったのが聞こえなかったか?」
ガギッと音をたてて僕の右足は拉げる。
「ッッッ」
「どうしたんだ? ん?」
次は嬲るように少しずつ、少しずつ左足を壊していく。
折れて剥いで曲げて潰して削いで圧して、
「ッッ」
痛みで意識が飛びそうになる。
いや、意識が飛んでいない今の状態が奇跡と言える。
「呆気ないな、人間」
「止めて!」
「ん? 邪魔をするのか?」
僕の頭を潰そうとしていた天神に待ったをかける。
が、今の状況だと逆効果だし、シャルが傷つく姿を見たくない。
それにまだ負けてない。
死んでない。
今、僕は怪我を、大怪我をしている。
それは血がたくさん流れている、という事に他ならない。
だから勝てる。
シャルは傷つけさせない。
僕の血は生き物のように動き出す。
天神の体の中に入り血が血を喰らう。
喰らって喰らって喰らって天神を違う存在へと変化させる。
違う存在へ、
「我、第二始祖の鬼灯葛が命じる」
「あん?」
天神は状況を理解しきれていないのか、止めと言わんばかりに僕の顔を蹴ろうとするが、寸の所で止めてしまう。
天神の意思とは関係なしに止まってしまう。
「うご、け」
「今すぐ治せ」
「や、やめろ。やめろ! 命令するな」
天神は体の言うことを聞かずに僕の治療に入る。
穴の開いた、体が着実に塞がっていく。
拉げた右足と見るも無惨な左足がみるみる内に治っていく。
「ふぅー」
体が綺麗に、とまではいかないが治った。
後は、
「回復陰法 完治」
自分で治す。
服も傷も全て治す。
すると、天神の顔は絶望に染まっていく。
「カズラくん。大丈夫?」
「うん」
シャルの心配に答えながら、指を地面に向ける。
天神はソレに抗えずに地面にひれ伏す。
「この通り大丈夫だよ。後は」
暗く黒いモノが天神に粘り付いて、絡み付いて、纏わり付いている。
そして、天神の全身を包み込んで跡形も無く消え失せる。
それと同時に、僕の体の中に熱く気持ちの悪いほどの力が沸き上がってくる。
「スーーーーッ」
息を吐いて呼吸を調える。
「カズラくん」
優しく背中を撫でてくれるのが心地好く、少しずつだが治まっていく。
「ふぅ、ありがと」
「ううん。お疲れさま」
数分して治まり、今までに無いほど力が溢れている。
「皆の所に戻ろっか」
「うん」
シャルと一緒に不思議の城へと帰る。
不思議の城に戻ってから、獣族を解放してあげる。
生きている人間は各世界に強制送還して、文字通り、獣族だけの世界とする。
その時になぜか獣族の全員から神のように崇められたのは納得出来ない。
「じゃあ、帰るよ?」
最初に来たメンバーから2人減っている。
ペトラとドラコさんだ。
ペトラは獣族の復興の手伝いを、ドラコさんは妹のクーンと一緒に居たいという事で残るらしい。
まぁ、会えなくなる訳じゃないし、また来ればいいんだ。
「開け、世界を繋げる鍵」
地球に、日本に戻る為に、空中に鍵を指して回す。
そして、世界が変わっていく。
ここまで読んでくれて本当にありがとうございます!