No.152 過去とコタエアワセ
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「えっ」
僕は驚きの声をあげてしまう。
シャルの……シャルの真意が伝わってきた。
よく伝わってきた。
「許せぇぇ!」
「うわぁぁぁあ」
「ッッッ」
が、敵は考える時間を与えてはくれなかった。
「宝玉の、力よ」
僕の後ろには7つの、桜、金、茶、赤、緑、紫、そして黒色の宝玉が浮かび上がる。
その1つ1つが世界を破壊できるほどの力を秘めていて、ビリビリと空気を揺らしている。
「色欲に、魅せられ」
1000はいた獣族たちは重力によって一瞬で地面にひれ伏した。
「強欲な、願いを」
時間の流れが乱れる。
乱れてミダレテみだれて。
僕の時間の流れだけが速くなる。
「傲慢な、世界に」
獣族たちの首についてるリングを“錬金術”によって爆発しない物へと変化させていく。
触れずに1000、全員のリングを不発にさせていく。
「憤怒に、堕ちて」
パチッ、パチッと空中に稲妻が走る。
その稲妻は獣族たちの首についてるリングを一瞬にして破壊していく。
「怠惰に、生きよ」
世界樹で、体についている怪我を治していく。
肩から無くなった腕は生えてきて、火傷の後は消えて、黒く染まっていた世界に色をつける。
「嫉妬に、狂い」
空間を繋げる。
不思議の城に、ドミニカさんたちや他の獣族がいる場所に全員を移動させる。
「暴食に、喰らえ」
自分を理の外側の存在にする。
1歩、空中に足を踏み出す。
地面なんて関係なく、階段を上がるかのように歩く。
「カズラ、くん?」
シャルに……シャルに呼び止められる。
僕の心の中はグチャグチャだ。
何が正しくて何が間違いなのかわからない。
いや、1つだけ確かで間違えのない気持ちがある……蘇ってくる。
僕は階段を、見えない階段を下りてシャルの、
「和紗」
手をさしのべる。
「行こっか、和紗」
「……うん、カズラくん」
シャルは……否、和紗は僕の手を取り一緒に見えない搭の頂上へと続く階段を上がっていく。
「で、どっちで呼んでほしいの?」
「えっと、私はシャルであって和紗……シィ・ユリエーエでもあるから」
「うーん、じゃあ今まで通り、シャルって呼ぶね」
「うん。ありがと、カズラくん」
すぐに教えてくれてもよかった気がするけどな。
でも、言えないか。
気持ちの問題とかあるもんね。
「でも誰がシィをシャルの体に入れたんだろう?」
「それは私にもわからない。けど、あの時に私が私で私って事はわかったの」
「うーん、わからないね。まぁ、今は」
「うん、女神だね。やっと、やっとカズラくんの横で戦える」
搭の頂上、そこは殺風景と言えるほど何もない。
ただ1人、いるだけ。
「お、お前は」
はて、僕は女神の事を初めて見たけど、相手はそうでは無いらしい。
というか、僕に対して憎悪があるのか睨んできている。
「お前たちがなんでここに! 私の、私の世界に何の用だ!」
「何の用ってそんなの決まってるじゃん。横暴な自称“女神”を殺しに来たんだよ」
「ッッ」
厄介な敵と言える。
女神の後ろには僕と同じ7つの宝玉がフワフワと浮かんでいる。
「シャル」
「うん。宝玉の力よ」
シャルは「虚飾の宝玉」を出して女神の能力を消そうとするが、
「理を外れてる」
「うん。カズラくんと同じで効かないみたい」
すると、女神の持つ金色の宝玉、「強欲の宝玉」の光が一瞬だけ揺らぐ。
それと同時に時間の流れが乱れて、
「ッ」
「チッ」
世界樹が僕とシャルを穿たんと伸びてくるのを、地獄樹で相殺する。
それだけに止まらず、錬金術で作られたのか簡易的な神器が飛来してくるのを、空間を切る事で防ぐ。
「うん。やっぱり互角って感じか」
同じ宝玉持ちで、しかも同じ数。
「クックックッ。私からしてみれば互角でもありがたいがね」
「……」
「そう睨まなくても。まぁ、鬼灯たちは私の事がわからないみたいだけどっ」
空は一瞬にして曇り、怒りを現すかのようにパチッ、パチッと雷が降り注ぐ。
「星よ」
1つの隕石。
それだけで、曇り空は一瞬にして晴れ渡り、
――――ドゴーーンッ
衝撃波で街いったいを破壊していく。
「シャル。大丈夫?」
「うん。問題ない」
多分、街にいる獣族を奴隷にする人たちは今ので死んだだろう。
でも、
「なんで、私よりも強い力? 神様、私は鬼灯を殺す為に力をくれたんじゃないの? なのに、なんで。なんで鬼灯の方が強いの!」
やっぱり生きてた、か。
女神がそう簡単に死ぬとは思ってないけど……。
それと、強いって言ってもほんの少しだけで、押しきるには足りないんだよ。
「理を喰らえ」
1番最初に手に入れた宝玉で1番強い……馴染んだ宝玉。
喰らう理は相手は、「女神は宝玉を持っている」という事。
「地獄樹」
こっちが1度でも相手に、女神に触れられたら勝てる。
女神の力を削ぐことが出来る。
のに、女神は悉く僕の攻撃を避けて避けて避ける。
「なんで、なんで“暴食の宝玉”をそんな簡単に使えるの!」
「なんでって、馴染んでるから?」
女神は使えないのか。
なら、普通に押しきれる。
否、押しきれないという未来は存在させない。
「簡易武器」
髪の毛に血をつけて簡易的に武器にする。
「陽法 金の太刀 裏・裏切り」
女神が一瞬でもいた場所、通った場所を斬りつける。
すると、そこを通った時と斬った位置が重なり、
「ち、力が……力がぁ」
女神の宝玉はパラパラと壊れ崩れ廃れ腐り縮れ消えてしまった。
「罪を命を持っ――――」
――――ッッッ
謎の光と強い衝撃波で、僕は女神に止めを刺す前に吹き飛ばされてしまう。
抵抗しようにも体の自由が効かない。
体が動くことを拒んでいるかのように、何かに怯えているかのように動かせない。
『何度邪魔をすれば済む?』
頭の中にゴンッゴンッとその声が響いてくる。
聞いた事がある。
忘れもしない。
「神」
『そうだ。私は神だ』
どうにか口を動かす事が出来た。
が、まさか女神の後ろに、世界を滅茶苦茶にした神がついてたなんて。
『何度も何度も邪魔をしおって。直々に裁きを下してやる』
――――ッッッ
またも、謎の光が僕を襲うがそれだけ。
それだけだった。
これと言っておかしな所や怪我の1つもしていない。
1つだけ違うのは、
「シャル?」『それは!』
シャルの持つ「虚飾の宝玉」が強い強い光を放っている、という事。
何度でも言おう、「虚飾の宝玉」の力は“神殺し”。
「神をも殺す力、ね。僕と自称女神は神じゃないから理を外せば防げたのか」
で、神は神で神以外の何者でもないから効く、と。
でも宝玉ってこの神が用意したんだよね?
「まさか」
いや、そのまさかだ。
僕の頭の中に直接語りかけてきているのがわかる。
『……聞こえますか? 私は今、あなた方の心に直接、語りかけています』
そんな優しくどこか懐かしさを覚える声が“心”に広がっていく。
いやぁーー。ブクマが剥がされてしまったぁーー
今日、残りの全部更新して完結させます。