No.151 色欲とカコと
更新!
ブクマが増えてた!
本日2話目
こっから第2ラウンドの始まりだ。
――――グギァァ
クーンは口からドス黒いブレスを吐くと、トラッシュ全体の空気が悪いものへと変わっていく。
「シャル、大丈夫そう?」
「うん。大丈夫だよ」
シャルはなんだか浮かない顔をしてるけど……心配だけど教えてくれないんだよな。
「さぁ、死ね! 女神さまの為に死んで死んで死ぬんだ」
「憤怒に堕ちて」
僕を中心として巨大な、トラッシュを包み込むほどの魔法陣が浮かび上がる。
それは強い光を放ちつつ、ゆっくりと、それでいて不気味に回転し始める。
「結界陰法 黄昏の鳥籠」
クーンを包み込むほどの巨大な鳥籠……龍籠はクーンの力を吸い取り弱らせていく。
「そのまま眠れ。超新星」
龍籠の中で小規模な、それでいて桁違いの威力の爆発が起きクーンの頑丈な鱗の体に風穴を開ける。
「これでオッケー」
クーンの姿は人形に戻って、眠っている……うん、眠っている。
「回復陰法 世界樹の雫」
世界樹から1滴ほどの雫を垂らすと、たちまち風穴は治り次こそ眠っている。
「カズラ、お疲れ」
「うん、ありがと。さて、そろそろ女神が起こって来てくれないかな」
「カズラからはいかないの?」
「なんで?」
いや、僕が行った方が手っ取り早いけど、これはしょうがない事なんだ。
そう、女神が人の心を持っているか、仲間意識を持っているかの試練なんだから。
「さて。ドラコさん、大丈夫?」
「だ、大丈夫に見えるか?」
声は掠れて虫の息だ。
これも僕がやった訳だけど裏切り者なんだから仕方がない。
そもそも、結構な猛毒なのに意識があるってすごいな。
流石は龍族だ。
「回復陰法 地獄樹の血」
地獄樹から赤い雫が1滴、ドラコさんに落ちる。
すると、あっという間にドラコさんの赤い斑点は消えていた。
「どう? 良くなったでしょ」
「あ、あぁ。ありがとう」
「なにその目は」
「いや、カズラは俺の事を治さないとばかり思っていたから」
「そうかそうか、治さないのがお好きと」
「違う違う違う。そういうんじゃなくて、その妹が迷惑をかけた」
本当だよ。
クーンはどんだけその女神さまが好きなんだよ。
もうここまでくると狂気の愛だよね。
しかも兄より女神を優先させるなんて嫌な感じだな。
まるで、
「色欲に魅せらたみたい」
「えっ」
シャルが急におかしな事を言った。
いや、ただ原因を考えてて独り言として言ったのかもしれないけど……。
「シャルは色欲に魅せられてた時の記憶ってあるの?」
確か、ユリエーエの時にチルが「色欲の宝玉」を使って魅了してたよな。
「うん、覚えてる……というか思い出した」
「思い出した?」
それはまたおかしな事だな。
何をトリガーにして思い出したんだろう。
「いつ思い出したの?」
「あの時。元々、虚飾の宝玉を持ってたクリス・シュトールと戦ってた時」
「あの時か」
でも何故だ?
そんな原因になりそうな事なんて無かったと思うけど。
「でもあの時のシャルって色欲には魅せられてたけど暴走はしてなかったよね?」
「そう、かな? わ、私は結構酷いことをしちゃった、けど……」
最後の方は聞き取れないくらいに小さな声になっていた。
いや、どちらかと言うと豚男の時の皆の方がクーンに近い気がする。
「でも色欲に魅せられてた時の記憶はあるのか」
「うん。心の中がグチャグチャになってて、何が正しいかをわからなく、霧をさ迷ってるような感じで。そして心の奥底ではわかってるのに、表面に出てきた偽者に意思を操られているような……って言い訳みたいな物だけど」
「そんな感じなんだ」
僕は魅了をかける側だからわからないな。
でも、表面的な人もいれば心から魅せられてる人もいるだろうな、あの僕が戦った女神護衛親衛隊1番のルグリスとか、ドラコさんの妹のクーンとか。
「葛、避難は終わったと思うぞ」
「文鷹、お疲れ。他の皆もありがと」
さて、皆が戻ってきたけど女神は仲間を……クーンを助けに来ないな。
都合のいいだけの操り人形だったのかな、これは。
「じゃあ僕は女神とやらに殴り込みに行ってくるから先に城に戻ってていいよ」
あそこなら、ドミニカさんがいるから安全だ。
それに、少ないながらも獣族たちがいるから皆に守ってほしい。
「カズラくん、私は?」
「シャルは……どうしたい?」
「わ、私はついていきたい」
「なら一緒に行こっか」
まぁ、シャルが来てくれるのはありがたい事だ。
1人で寂しい思いをしないでいいし、「虚飾の宝玉」の“神殺し”が女神に通用するのか気になる。
「皆はちゃんと獣族たちの事を守ってね?」
「カズラ、大丈夫。ドミニカがいるから」
ムウのドミニカへの信頼は大したものだろう。
僕はドミニカさんと手合わせをしたことないから、どのくらい強いかわからないんだよな。
まぁ、色んな「呪い」で強そうではあるけど。
プルトの街に出ると、ナンバリングされた兵隊が駆け回っている。
どれも顔は同じで、クローンのような物、だろうか。
「私たちを探してるんだよね?」
「んー、ちょっと違うっぽいよ。ほら」
僕が指さした方には、連れていかれる奴隷の獣族の姿があった。
あれについていけば女神の所に行けるかな?
「カズラ、あの建物が怪しいんじゃない?」
「ん? あれ、か」
この街に似合わないほど高く聳え立つ搭が目に入る。
奴隷の獣族たちもその搭の方向に連れていかれてるし、女神は何となく高い所にいそうだから、行く価値はある。
「とりあえず、あそこに行こっ――――」
「――――そこのお前たち。見かけない顔だな。身分証はあるか?」
おっと、そんな簡単には進ませてくれないらしい。
っていうか、納得させられる身分証なんて持ってないから怪しいじゃ済まされない。
小声で兵隊を魅了してしまう。
「確認完了です。あまり出歩かない方がいいですよ」
「ありがとうございました」
僕たちは兵隊と別れて大きな不釣り合いの搭へと向かう。
認識阻害の陰法をかけているから声をかけられないで済んでいる。
まぁ、相手がそれなりに強いと、
「こっちに何用だ?」
このように看破されてしまう。
「何って」
そんなの決まってる。
「女神を殺しに来たんだよ」
そう言うと同時に、相手の胸元に風穴を開ける。
やっぱり女神護衛親衛隊は強かったんだ。
なんか敵が呆気ないと言うか……僕が強いのか。
まぁ、クーンの事もあるし女神は相当な実力を持ってるから侮れない。
「ここ、だね」
「うん。で、女神は奴隷の獣族を集めてた理由がこれ、だね」
目の前には、1000を越えるほどの獣族たちがいる。
その首にはリングが装着されていて、ピカッピカッと不気味に点滅している。
「カズラ、犬の獣族にはバレちゃってるね」
「みたいだね。シャル、これを無傷で助けたいんだけど」
「カズラくんなら出来るよ」
「そ、そうかな?」
シャルの武器は殺傷能力が高いからこの戦闘には参加出来ないな。
「シャルは待っててね」
「うん。カズラくん、頑張って」
シャルはそう言うと、
――――チュ
僕の唇に柔らかいモノが触れた。
いやー、嬉しい事にpvが30,000を越えてくれました
わざわざ自分のに読みに来てくれる方々のおかげです!
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