No.148 結末をカエル
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初めてのギャン……な訳だが、獣族の世界という感じが無い。
近未来的な都市が広がっているのだから。
「これが、ギャン?」
「はい、これがギャンです」
シャルの質問にパルが答えた。
というか、パルは初めからこの近未来的な都市がギャンだから違和感を感じないんだろう。
けど、僕とシャルは地球にいた時にギャンの写真などを見たせいで違和感しか感じない。
綺麗な大自然だったし、見たことのない植物があって楽しみにしていたというのに。
「とりあえず、パルはこれを」
認識阻害が付与してあるフードつきローブを渡す。
これで変な目を向けられる事は無いだろう。
後はペトラとドラコさんに同じ物を渡さないとな。
後、ドラコさんは暴れるだろうか?
妹を紹介すると意気込んでいたからな。
10時間ほどして、全員が集まった。
「ドラコさん。ちょっと」
先にドラコさんを抑える為に話そうと思う。
一応、ドミニカさんも一緒に居てくれた方がいいだろうか?
まぁ、いっか。
「どうした、カズラ」
「先に伝えてようと。覚悟していてください」
「それは、俺の妹がいないかも、という事か?」
「はい。そうです」
顔色は一切変わってない。
が、心の中は僕が想像できないほどグチャグチャだろうな。
「なに、辛気臭い顔してんだよ!」
バチンッと音をたてながらドラコさんは僕の背中を叩いてくる。
いや、普通に人なら痛いかね?
僕は吸血鬼だから未だしも。
「安心しろ、妹の反応は地下にある。そのトラッシュって場所にいる事は確かだ」
「そ、そうなんですね」
それはそれで厄介だ。
トラッシュの環境が良い訳ない。
それを見てドラコさんが暴走しかねないか心配だな。
「ドミニカさん、ドラコさんが暴走したら止めてくださいよ?」
「あぁ、その時がきたら善処する」
ドミニカさんに耳打ちしたけど、これは止めてくれないやつだな。
はぁ、面倒事が増えそうだな。
「じゃあ、情報収集をしよう。A組9人と五帝神4人だから4人1組で1人あまりね」
あまりと言っても1人は拠点に残ってほしかったから丁度いい。
で、ある程度の強さが必要になるから、
「ドミニカさんにお留守番をお願いしてもいいですか?」
「あぁ、構わない」
「ありがとうございます。それとパルの面倒を見てくださいね」
その後、組分けをした。
僕はシャルとペトラとムウと。
ペトラは獣族だから守らないといけない。
いや、ドラコさんも獣族だけどスペックがペトラと比べると違うからね。
「じゃあ行こっか」
さて、トラッシュにはどうすれば行けるだろうか。
通行人に聞くのは悪手だろうからな。
だって、この世界だとトラッシュは当たり前の事だ。
そんな事を知らないのは色々とおかしい。
「カズラ」
「なに、シャル」
「獣族って奴隷なんだよね?」
「うん、そのはず」
「ならさ、奴隷市みたいな所ならトラッシュに繋がってるんじゃ?」
シャルがペトラに配慮して耳打ちしてきたけど、それは1理あるな。
でも僕たちが行くより他の組に行ってもらった方がいいよな。
文鷹たちにお願いするか。
※
文鷹たちが奴隷市を調べると案の定と言うべきか、トラッシュに続く道を見つける事が出来た。
それが「今」目の前に広がっている奈落の穴だ。
下がどれくらい深いのかわからないが、真っ暗でいい臭いではない物が込み上げてきている。
「まさかこんな所にあったなんてね」
ギャンのプルトという都市の外れにある奈落。
奴隷市の中にもあったらしいが、厳重に警備がされていて大人数で入るには向いてない。
そこで義宗がこのトラッシュの入り口を見つけてくれた、と。
「じゃあ、いっちばーーん!」
ムウが奈落に勢いよく落ちていった……。
「混沌陰法 楓の種」
楓の種はクルクルと回りながらゆっくりと落ちていく。
それと同じ……同じようにゆっくりと落ちていく陰法だ。
クルクルは流石に目が回るし気持ち悪くなるからね。
落ち続けると、少ししてから光が見えだした。
景色は一言で現すなら「ごみ箱」。
ゴミがそこかしこに散らかっていて、空気は死ぬほど悪い。
そして獣族はその運動神経を買われたのか、ハムスターの回し車のように走らされている。
走っている獣族は全員が全員痩せこけていて、栄養が行き届いてないのが見てわかるほど痛々しい。
「これは」
「酷い、な」
誰とも言わずにそんな声が漏れてしまう。
「葛。あれはどう思う」
「あれか」
文鷹が指さしたのは巡回している兵士、だろうか。
その装備が、おかしなほど強力で神器と言っても過言でない。
神の使途が関与しているだけある。
「神器ならこっちも対応させるか。宝玉の力よ」
宝玉を呼び出して、
「傲慢な世界に。錬金術 神器生成」
皆の装備を一新させる。
「皆に後はこれを」
僕はとある鍵を渡す。
「これは?」
「不思議の城に繋がってる……勝手に繋げたから」
そう、これで安全な場所にトラッシュにいる獣族たちを行かせられるのだ。
後でドミニカさんに怒られるかな?
まぁ、そしたらそしたらだ。
「じゃあ解散!」
僕の言葉で皆が獣族を助ける為に動き出す。
僕も近くにいた兵士を一撃の下に殺す。
他も同じ感じなのか騒ぎが大きくなっていく。
「避難場所はこっちです!」
大きな声で逃げるように指示を出していく。
それを聞いた獣族たちは一目散に僕の方に来るので鍵で開けておく。
「逃げるなんて呑気な物、ですね。私は怒られかねない、というのに」
そんな声と共に獣族たちは足の腱を切られたのか地面に倒れている。
そして現れた1人の人間。
「何者ですか? ゴミを手助けするなんて、万死に値する!」
「はっん! 何がゴミだよ。それならお前は人間のゴミだな」
「言ってくれます、ね?」
相手は白装束で僕はどちらかと言うと黒装束。
なんか僕が悪みたいだな。
「では、死ぬ前に名前を聞いてあげましょう。ほら、10秒あげますから名乗って、ください」
「……宝玉の吸血鬼、鬼灯葛です。以後、お見知りおきを」
優雅にお辞儀をしてから、
「まぁ、以後なん――――」
「――――時間切れ、です」
男はそう言ったが、まだ普通に10秒経ってないし、まだ途中だったんだけど?
せめて最後まで言わせてよ。
って、今の僕は氷に包まれて動けない……動けないんだけどね。
「はぁ。呆気なかった、ですね。さて、逃げようとしたあなた達には選択肢が2つあります。1つ、私に無惨に殺される。2つ、私以外の人に殺される。まぁ、私的には前者の方が嬉しいの、ですがね」
さて、僕もそろそろこの氷から出るとするか。
「嫉妬の宝玉」。
――――バキンッ バキンッ バキンッ
「はぇ?」
「3つ目ー! 僕に助けられて逃げーる」
残りの体にくっついた氷は黒鬼で綺麗に切り落とす。
「黒の太刀 断絶」
「ば、馬鹿な! そんな簡単に壊せる、なんて!」
男は手をこちらに向けてそこから氷が勢いよく襲ってくる。
もうすぐ完結!
ptいれてくださいまし!
あと、感想とかブクマとかも……