No.144 廃ったカンガエ
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これは?
意味がわかるけど理解したくない。
いや、理解出来てしまう。
理解しないように考えるだけで理解して、わかってしまう。
「シャル」
「うん。カズラに勝てないからこんな作戦に出たんだと思う」
「サリエル、だよね?」
「多分だけど」
「シャルは一応ここで待っててくれる?」
「……うん、わかった」
「別に観るな、とは言わないから」
僕も、もう少し考えるべきだった。
強い力を持った主人公がいた時、相手は大抵人質をとる。
それも仲のいい人を。
僕は吸血鬼だけど、まだ人間を辞めきれてない。
強い力を持った主人公が怒ったら怖い事を思い知らせてやろうか。
「宝玉の力よ」
僕は最初からフルマックスで行こう。
「強欲な願いを」
集めれるこの世の情報を集める。
サリエルに協力した人……アメリカ組のターニャ以外か。
それと軍も妄信的に協力しているのか。
後は、南条暦。
「場所は……」
どこで、どういう場所なのかを「強欲の宝玉」が事細かに教えてくれるので、「嫉妬の宝玉」で瞬間転移する。
――――パチンッ
そんな指を弾く音が聞こえる。
もちろん僕は指なんて弾いていないし、敵の中にも指を弾いた人はいない。
「クックックッ」
1人の……1鬼の子が嬉しそうに、楽しそうに笑う。
A組の皆は「壊れたのか?」と不思議そうに、敵陣も「やっと壊れたか」と安堵に胸を撫で下ろしている。
いやいやいや、ムウは何をしてるの?
急に指は弾くは、大きく笑い声をあげるはで。
挙げ句の果てには角を2本も生やして、
「レディースエンドジェントルメンッ!」
ムウはそう言って縛ってあった紐から抜けて立ち上がる。
僕が助けにくる意味ってあったのかな?
「さて、今夜ショーを魅せてくれるのは……鬼灯葛です!」
なに?
もしかしなくても、盛り上げるためだけにやったの?
しかも、今ので大分ハードルが上がった気がするけど。
もうこれ、中途半端な事は出来ない雰囲気なんだけど、マジでどうしてくれるんだし。
「はぁーーー。宝玉の吸血鬼、鬼灯葛です。以後、お見知り置きを」
まぁ、以後なんて作らないけどね。
「鬼灯!」
「煩い、黙れ。誰が喋っていいと言った?」
殺気と言霊の2段構えの威圧にサリエルは呆気なく尻餅をつく。
「嫉妬に狂い、怠惰に生きよ」
世界樹でA組の皆を解放、回復させて、ココナ先生を解放する。
そして、ココナ先生を、
「輪廻回生」
「あれ?」
「1度死ぬ気分はどうですか? いや、ごめんなさい」
「い、いえいえ。そうですね、1度死ぬ気分は最悪でした。苦しくって苦しくって」
「だそうです」
もう1度2段構えで、今度は敵陣全員を威圧する。
「文鷹も義宗もごめん」
「大丈夫だ。俺も手伝うか?」
「えっ、なら俺も手伝う」
あっ、手伝うの前提なのね。
なら、
「理を書き換える!」
ローブをバサッとしてカッコつけとく。
「神器生成」
文鷹には短すぎる刀を。
義宗には、2丁の銃を。
どちらも、鬼灯印の最高級品質の武器だ。
「文鷹、あそこに無精髭を生やしたおじさんが座ってるでしょ?」
「いや、腰が抜け――――」
「――――座ってる。その人が、使い方を知らないで能力を持ってたから文鷹に移動させたよ。とりあえず、相手を畏怖させれば動きを封じれる“蛇睨み”だって」
上手く能力は使わないと宝の持ち腐れだ。
でも、文鷹なら――――
「――――俺の見た目と合間って大丈夫だろうとか考えてるのか?」
「な、なんで最近、僕の心の中が読まれるの!」
「いや、普通に顔に出てるんだって」
「おかしいな? (自称)ポーカーフェイスなのに」
まぁいい。
次だ……ん?
相手は何をしてるのかって?
大人しく待ってるよ、僕の威圧で動けないから。
「義宗はごめん。良さそうなのが無かったから、適当にあそこのおばさんの能力を奪っておいたから。“神運”だって、これで銃は百発百中じゃないの?」
「マジか! すげぇな」
義宗は何発か銃を撃つと、全て敵の右目に命中した。
「おい、俺の物は取るな」
「えー、早い者勝ちじゃないの?」
「いいぜ、殺ってやろうじゃないか」
「俺も負けないよ?」
文鷹と義宗が仲良く競争を始めちゃったよ。
まぁ、僕に出来る事をしよう。
「さて、気分はどう?」
周りのアメリカ組や軍の人たちは義宗、文鷹、ムウの手によって地獄にされている。
本当になんで人を殺して生き生きしてるのか。
「で、こんな事をしたんだから覚悟は出来てるよね? って答えてもらわなくてもいいから。黒鬼」
一刀の下にサリエルの首を落とす。
サリエルの価値観は自分の考えが、自分だけが正義だと思っている節がある。
言うなれば『免罪者』……かな?
自分の罪は許し棚に上げ、他人の罪に過剰に反応しては糾弾する。
「まぁ、僕としては1番許せないのは君だよ。南条」
A組の皆を捕まえたのも、ココナ先生を殺したのも、文鷹と義宗とムウを薬浸けにしたのも南条の指示だ。
本当に懲りないなって思うよ。
「で、最後に何か言うことは?」
威圧を解いて聞いてみる。
「お、同じクラ――――」
「輪廻回生」
「えっ……」
「気分は? って言っても一瞬だったもんね? 紺の太刀 戯れ」
血が出て、適度な痛みが出るように斬る。
何となくだけど、今の僕の顔って生き生きしてるんだろうな。
あっ、僕も義宗たちと同じだ!
「い、痛い。痛いよぉ」
「そっか。じゃあ楽にさせてあげる。桜の太刀 堕ち」
黒鬼は桜色に染まり、南条の首を落とす。
そして、
「輪廻回生」
「いや、いやいや、いやいやいや、いやいやいやいや」
首をブンブンと振って「いやいや」と拒絶している。
南条の死ぬ前の記憶としては、僕が大事な人に見えて裏切られたような気分だろう、斬られたし、中身は僕だし。
「新・桜の太刀」
もう1度、黒鬼は桜色に染まる。
「墜」
黒鬼は宙を斬る。
それと同時に物凄い程の重力が南条を潰しにかかる。
骨は耐えきれずに折れて、血を吹き出す。
声すらも回りに届かないほどの重力に血の海だけが広がる。
「輪廻回生」
これで最後にしよう。
小さな声で呪文のように繰り返している。
「じゃあね、僕の敵につく小判鮫」
心臓から少しずらした位置に刀を突き刺す。
そしてすぐに抜く。
そして、首を落とす。
こっちの方が痛みを感じなかっただろうな。
「さーて……終わった?」
軍の人たちは最初よりも増えている。
応援にかけつけたのを3人で片付けてしまったのか。
「いやー、葛ありがとな。強い力のおかげで殺りやすかった」
「俺も銃がこんなに当たるなんて、楽しいな」
「2人とも、人を殺すのに味をしめちゃダメだよ? しかも、今回のは形上は正当防衛のつもりなんだから」
そう、正当防衛だ。
……なんか、これじゃあサリエルと変わんない気がするけど気にしない!
「あっ、今言うことじゃないかもだけど、獣族の世界に行けるようになったよ」
血に囲まれた廃工場でそう言い放つ。
ブクマ増えた、ありがとなのです!
お昼までブクマが切れなかったらもう1話更新します
感想、ブクマ、ptぜひぜひくださいまし