No.140 結果がスベテ
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さて、サリエルたちアメリカ組がA組の所にいるから僕は近づけないでいる。
いいよ。
僕はムウを連れて美味しいご飯を食べに行くから。
「ムウ、何か奢るから食べに行こ」
「いい。僕もA組の所に行く。じゃ」
「えっ」
僕は誰からも姿が見えない、という状態でレストランの入口で放心している……。
※
あれ?
僕は……
「どうしたんだい、お客さん」
「あ、ありがとうございます」
僕の目の前にはグラスに丸い氷が入った茶色っぽい飲み物。
それを一思いに飲む。
シュワシュワとした炭酸が口を刺激するジンジャーエールだった。
「何かあったのか?」
「いえ、特には」
なんにもなかった。
いや、1人でご飯を食べるのが寂しいというだけだ。
ただ、それだけ。
※
カズラが殺された。
という事になった。
「シャルちゃん、大丈夫だよ」
「ありがと、エリーちゃん」
シャルたちはお互いに励ましあっている。
「あのー、ご一緒してもいいですか?」
「あぁ、構わん」
サリエルがアメリカ組を連れて席に来た。
文鷹が答えるが、その前に図々しくも席に座る。
「鬼灯葛が亡くなったようだね」
ニマニマと卑しい笑みを浮かべて言う。
「何が言いたい?」
「いえ、ただ可哀想だな、とね」
「それだけか?」
その場の空気が文鷹の殺気でピリピリとした物に変わる。
「違いますよ。朗報ですよ。俺が手に入れた情報によれば鬼灯は生きてるらしいです。なんでも上手に偽者を作って殺させたそうです」
「……」
「あれ? やっぱり驚かないんで……」
A組の1人を除いて驚いてない。
驚いてるのは南条ただ1人。
「し、知ってたんですね、1人を除いて。俺が汚れた血と言ったのが悪かったです。どうですか? 鬼灯と手を切っては。アイツは悪ですよ。ね?」
サリエルは握手しようと手を出すが誰1人としてその手を取らない。
「なんでですか? 鬼灯は悪です。手を切らないと軍に狙われるのはあなたたちてすよ?」
「それが?」
「心当たりはありませんか?」
葛が悪い事をしているかどうかを考える。
そして、
「そうだね、ある」
「「「えっ」」」
義宗がそう言うと、A組の皆は驚きの声を重ねる。
それを嬉々として、
「ですよね!」
「あぁ、葛と最初に決闘した時に加減がわからなかったみたいでさ、首の骨を折られたんだよ」
「へ?」
「まぁ、今となっちゃぁいい思い出だよ」
違った。
サリエルにとっては嬉しくも無い返しだった為、怒りに震えている。
サリエルは少しすがるように、
「他の、他の皆は!」
エリーはエルフの大陸に連れていってくれたと。
ドーラはドワーフの大陸に連れていってくれたと。
チルは間違いを正して命を助けてくれたと。
文鷹は一時、日本から出るのを手伝ってくれたと。
義宗も同じく日本から出るのを手伝ってくれたと。
ペトラはギャンに連れていってもらう約束していると。
「私はカズラの婚約者だから!」
シャルはそう言い放つ。
ムウはいないから、残るは南条。
「南条さんは?」
「私はもちろん手を切るわ。サリエルくん、守ってくれる?」
「あぁ、喜んで」
予想はしていただろうから驚きの声は上がらない。
が、呆れて言葉も出さない。
「楽しそうなお話だね?」
「ムウくん!」
南条は媚を売る猫なで声でムウを引き込もうとしている。
「ムウくんは鬼灯の事をどう思ってる?」
「うーん、チョコくれるから好きだよ、友達として」
チラッとシャルの方を見た。
しかも「友達として」を強調してた。
「ムウくん、君も鬼灯と手を切った方がいいよ?」
「なんで?」
「アイツは悪だ。人を殺したり、俺の目覚めた力を奪うし」
サリエルは勝手に語り出す。
それを遮るようにムウは、
「僕はカズラにつくよ」
「なんで!」
「だって、カズラがいなかったら僕は死んでたかもだし、色々な所に連れてってくれるもん」
「どうして、どうして鬼灯が悪だとわかってくれないんだ! そうだよ! 鬼灯に何を吹き込まれたかわかんないけど目を覚まそ? なんなら私も助けるから」
南条もシャルたちを説得しようとする。
「そうだ、シャル。君は鬼灯と付き合ってるんだよね? 止めた方がいい。俺が君を守ってあげるから」
サリエルの手がシャルの髪に触れそうな所で、
「止めといた方がいいよ」
「邪魔をするな」
寸の所でムウが止めた。
「邪魔だって?」
「そうだ、邪魔だ!」
空気がより一層悪くなる。
「そういえば」
南条が何かを思い付いたかのように言った。
「ザグーくんはどこにいるの?」
誰も持ってなかった疑問であり、大きな疑問でもある。
アメリカ組は9人しかいないのだ。
「あー、ザグーね。死んじゃったよ」
「えっ、なんで?」
「だってしょうがないんだ。ザグーは君たちの事を殺そうとしたんだ。死んで当然だ」
さも、自分で手を下したかのように言い放つ。
否、
「俺が可哀想な被害が出ないように殺したんだ」
自分で手を下したと認めた。
「だから安心していいよ。A組の皆の命を脅かす者は亡くなった。ね? 俺はA組の皆を助けたんだ!」
「サリエル、抑えて」
「ターニャは黙ってて。俺はA組を助けたんだからさ、鬼灯なんかとは手を切ろうよ。ね?」
そして最初に落とす標的を決めて、
「シャルちゃん。俺は一目見た時から可愛いと思ってたんだ」
シャルがあからさまに顔を引きつらせる。
サリエルはそんなのお構い無しに、
「だから、さ? 鬼灯なんかよりも俺にしようよ。騙されてるだけだって」
「カズラの何がわかるの?」
シャルは冷たく言い放つ。
レストランの空気は凍りつくように冷たく、料理の数々は冷めている。
1人、また1人とレストランから人が去っていく。
「そんなに鬼灯の方がいいか? アイツはザグーの事を1度殺してるんだぞ?」
「それを言うなら、サリエルはザグーを殺したまま生き返らせてないよね?」
義宗が聞くも、
「今は鬼灯の話をしてるんだ。俺の話は関係ない」
「いや、あるよ。どっちにつくかって話でしょ? なら、お互いに殺してるんだから判断材料としては十分でしょ? それに加えて葛は強いからね。葛のおかげでお金にも困らないし」
「……」
「それに比べてなに? ザグーが殺すかもしれない、というだけで殺して……葛だったら守るって選択肢を選ぶよ。それと、友達を悪く言われて黙ってるほど人は落ちてないから」
義宗は席を立ち出口へ向かう。
A組の南条以外がその場を去った。
「残念だね、サリエル」
「ちっ。俺の何が不満なんだ」
「まぁ、ザグーを殺さなかったら可能性はあったかもね?」
「黙れ、ターニャ。お前には聞いてない」
「ふーん」
不穏な空気のままアメリカ組と南条は冷めきった料理を食べた。
なんで更新か……それは完結するからです。
後10話くらいで終わるので毎日更新します。
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