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宝玉の吸血鬼。~人間を辞めきれない大罪人~  作者: ホタル。
6章 免罪者編
141/155

No.140 結果がスベテ

更新!



 さて、サリエルたちアメリカ組がA組の所にいるから僕は近づけないでいる。

 いいよ。

 僕はムウを連れて美味しいご飯を食べに行くから。


「ムウ、何か奢るから食べに行こ」

「いい。僕もA組の所に行く。じゃ」

「えっ」


 僕は誰からも姿が見えない、という状態でレストランの入口で放心している……。



 ※



 あれ?

 僕は……


「どうしたんだい、お客さん」

「あ、ありがとうございます」


 僕の目の前にはグラスに丸い氷が入った茶色っぽい飲み物。

 それを一思いに飲む。

 シュワシュワとした炭酸が口を刺激するジンジャーエールだった。


「何かあったのか?」

「いえ、特には」


 なんにもなかった。

 いや、1人でご飯を食べるのが寂しいというだけだ。

 ただ、それだけ。



 ※



 カズラが殺された。


 という事になった。

 


「シャルちゃん、大丈夫だよ」

「ありがと、エリーちゃん」


 シャルたちはお互いに励ましあっている。


「あのー、ご一緒してもいいですか?」

「あぁ、構わん」


 サリエルがアメリカ組を連れて席に来た。

 文鷹が答えるが、その前に図々しくも席に座る。

 

「鬼灯葛が亡くなったようだね」


 ニマニマと卑しい笑みを浮かべて言う。


「何が言いたい?」

「いえ、ただ可哀想だな、とね」

「それだけか?」


 その場の空気が文鷹の殺気でピリピリとした物に変わる。


「違いますよ。朗報ですよ。俺が手に入れた情報によれば鬼灯は生きてるらしいです。なんでも上手に偽者を作って殺させたそうです」

「……」

「あれ? やっぱり驚かないんで……」


 A組の1人を除いて驚いてない。

 驚いてるのは南条ただ1人。


「し、知ってたんですね、1人を除いて。俺が汚れた血と言ったのが悪かったです。どうですか? 鬼灯と手を切っては。アイツは悪ですよ。ね?」


 サリエルは握手しようと手を出すが誰1人としてその手を取らない。


「なんでですか? 鬼灯は悪です。手を切らないと軍に狙われるのはあなたたちてすよ?」

「それが?」

「心当たりはありませんか?」


 葛が悪い事をしているかどうかを考える。

 そして、


「そうだね、ある」

「「「えっ」」」


 義宗がそう言うと、A組の皆は驚きの声を重ねる。

 それを嬉々として、


「ですよね!」

「あぁ、葛と最初に決闘した時に加減がわからなかったみたいでさ、首の骨を折られたんだよ」

「へ?」

「まぁ、今となっちゃぁいい思い出だよ」


 違った。

 サリエルにとっては嬉しくも無い返しだった為、怒りに震えている。

 サリエルは少しすがるように、


「他の、他の皆は!」


 エリーはエルフの大陸に連れていってくれたと。

 ドーラはドワーフの大陸に連れていってくれたと。

 チルは間違いを正して命を助けてくれたと。

 文鷹は一時、日本から出るのを手伝ってくれたと。

 義宗も同じく日本から出るのを手伝ってくれたと。

 ペトラはギャンに連れていってもらう約束していると。


「私はカズラの婚約者だから!」


 シャルはそう言い放つ。

 ムウはいないから、残るは南条。


「南条さんは?」

「私はもちろん手を切るわ。サリエルくん、守ってくれる?」

「あぁ、喜んで」


 予想はしていただろうから驚きの声は上がらない。

 が、呆れて言葉も出さない。


「楽しそうなお話だね?」

「ムウくん!」


 南条は媚を売る猫なで声でムウを引き込もうとしている。


「ムウくんは鬼灯の事をどう思ってる?」

「うーん、チョコくれるから好きだよ、友達として」


 チラッとシャルの方を見た。

 しかも「友達として」を強調してた。


「ムウくん、君も鬼灯と手を切った方がいいよ?」

「なんで?」

「アイツは悪だ。人を殺したり、俺の目覚めた力を奪うし」


 サリエルは勝手に語り出す。

 それを遮るようにムウは、


「僕はカズラにつくよ」

「なんで!」

「だって、カズラがいなかったら僕は死んでたかもだし、色々な所に連れてってくれるもん」

「どうして、どうして鬼灯が悪だとわかってくれないんだ! そうだよ! 鬼灯(クソ野郎)に何を吹き込まれたかわかんないけど目を覚まそ? なんなら私も助けるから」


 南条もシャルたちを説得しようとする。


「そうだ、シャル。君は鬼灯と付き合ってるんだよね? 止めた方がいい。俺が君を守ってあげるから」


 サリエルの手がシャルの髪に触れそうな所で、


「止めといた方がいいよ」

「邪魔をするな」


 寸の所でムウが止めた。


「邪魔だって?」

「そうだ、邪魔だ!」


 空気がより一層悪くなる。

 

「そういえば」


 南条が何かを思い付いたかのように言った。


「ザグーくんはどこにいるの?」


 誰も持ってなかった疑問であり、大きな疑問でもある。

 アメリカ組は9人しかいないのだ。


「あー、ザグーね。死んじゃったよ」

「えっ、なんで?」

「だってしょうがないんだ。ザグーは君たちの事を殺そうとしたんだ。死んで当然だ」


 さも、自分で手を下したかのように言い放つ。

 否、


「俺が可哀想な被害が出ないように殺したんだ」


 自分で手を下したと認めた。


「だから安心していいよ。A組の皆の命を脅かす者は亡くなった。ね? 俺はA組の皆を助けたんだ!」

「サリエル、抑えて」

「ターニャは黙ってて。俺はA組を助けたんだからさ、鬼灯なんかとは手を切ろうよ。ね?」


 そして最初に落とす標的を決めて、


「シャルちゃん。俺は一目見た時から可愛いと思ってたんだ」


 シャルがあからさまに顔を引きつらせる。

 サリエルはそんなのお構い無しに、


「だから、さ? 鬼灯なんかよりも俺にしようよ。騙されてるだけだって」

「カズラの何がわかるの?」


 シャルは冷たく言い放つ。

 レストランの空気は凍りつくように冷たく、料理の数々は冷めている。

 1人、また1人とレストランから人が去っていく。


「そんなに鬼灯の方がいいか? アイツはザグーの事を1度殺してるんだぞ?」

「それを言うなら、サリエルはザグーを殺したまま生き返らせてないよね?」


 義宗が聞くも、


「今は鬼灯の話をしてるんだ。俺の話は関係ない」

「いや、あるよ。どっちにつくかって話でしょ? なら、お互いに殺してるんだから判断材料としては十分でしょ? それに加えて葛は強いからね。葛のおかげでお金にも困らないし」

「……」

「それに比べてなに? ザグーが殺すかもしれない、というだけで殺して……葛だったら守るって選択肢を選ぶよ。それと、友達を悪く言われて黙ってるほど人は落ちてないから」


 義宗は席を立ち出口へ向かう。

 A組の南条以外がその場を去った。


「残念だね、サリエル」

「ちっ。俺の何が不満なんだ」

「まぁ、ザグーを殺さなかったら可能性はあったかもね?」

「黙れ、ターニャ。お前には聞いてない」

「ふーん」


 不穏な空気のままアメリカ組と南条は冷めきった料理を食べた。



なんで更新か……それは完結するからです。

後10話くらいで終わるので毎日更新します。

感想とかブクマとかくださいまし!

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