No.138 正しいコウドウ
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サッカーボールほどあったステーキをA組の全員でペロンと平らげて、食休憩をしていると、
「よかったー、A組の皆いますね」
「ココナちゃん先生、なにかあったの?」
「は、はい。B組の何人かの生徒とB組の先生が連れていかれてしまったのです」
流石にここはレストランで他の生徒もいるんだから、
「ココナ先生、場所を変えましょう」
パチンッと指を鳴らして空間を変えて部屋に繋げる。
「で、では続きを。B組の一部が外に行った時に、狙われたかのように軍に拘束されてしまったみたいなのです。抵抗はしたらしいのですが、全くと言っていいほど歯が立たなかったらしいのです」
「それは」
エリーを含めてA組は僕の顔を見てくる。
別に僕じゃなくてもムウも強いし、A組の皆だって強いんだから大丈夫だと思うけどな。
まぁ、
「わかりました。助ければいいんですね?」
「はい。お願い出来ますか?」
「もち――――」
――――ドゴーーンッ
爆発音と少しの揺れ。
僕は窓を開けて下を見ると人が流れ込んできている。
「はぁ、行ってきます」
僕はそのまま窓から飛び降りる。
その最中、何度も何度も爆発されていく。
こう、何度も爆発され続けたらその内このホテルはもたないよな。
てか、これだけもってるだけでも凄いのか。
「宝玉の力よ。ひれ伏せ」
とりあえず、外にいる人だけを重力で動けなくさせる。
が、
「何人かは大丈夫なのか」
ストンッと可愛らしい音をたてて地面に着地する。
さて、全員が何かしらの神から力を貰ってるだろうな。
「お前だな? ついてきてもらおう」
「何がだ?」
「お前があの動画に映ってた人だな」
「あぁ、あれね。そうだけど、ついてくる意味は?」
やっぱり力が目的かな?
とりあえず、
「口には謹め。これは命令だ」
「撃てよ」
後ろに瞬間移動してきた男が首に銃口を当てて脅してくるが、普通の銃は効かないんだけどな。
いや、ここは普通の銃じゃない可能性を考慮するべきか?
なるほど、吸血鬼か。
上手く隠していて気がつかなかったな。
言われてみれば吸血鬼だな。
てか、信用しても大丈夫かな?
ま、いっか。
「わかりました。ついていきます」
僕は手をあげて降参のポーズをとる。
宝玉は保険として小さく見えない状態にしておく。
※
「来たか」
「は! 連れてきました!」
「下がれ。全員だ」
「で、ですが、相手は何をす――――」
「――――下がれ」
おう、これはいい殺気と言霊だな。
見た目も軍の偉い人って感じの髭にスキンヘッド。
それにムキムキの筋肉。
逆らわずに軍の人たちは下がっていく。
「さて、自己紹介をしておこう。私は軍の第一諜報部隊大佐だ」
「僕は日本にある魔法学校のA組1番、鬼灯葛です」
自己紹介は大事だけど、相手からちゃんと自己紹介をしてほしい。
吸血鬼というのはわかっているけど、第何始祖なのかがわからない。
……ちょっと待て、諜報部隊なのか?
それで見た目がムキムキってなんか変だな。
いや、批判するつもりはないよ?
「では、もう1度自己紹介を。私は第二始祖のデイビット・ジョーカーだ」
「僕は吸血鬼第二始祖の鬼灯葛です。以後、お見知りおきを」
相手が第二始祖ということで少し警戒を強める。
ドリーさんの話では第二始祖は全員殺されたって言ってたし、敵の可能性がある。
ってか、軍だから敵だけど。
「そんなに警戒をしなくてもいいんじゃないか?」
「いえ、そういう訳にはいきません」
「……? 見た目がコレだから警戒してるのか? 特に敵になる訳じゃないのに」
ムキムキの筋肉がションボリとしてしまった。
いや、敵か敵じゃないかは僕が決めることだよ。
まぁ、いい。
確認をしちゃおう。
「僕はドリーさんに第二始祖は全員殺された、と聞いたんですが?」
「な、なるほど」
ムキムキの筋肉は物凄い納得の表情になった……気になるじゃん!
「ドリーさまは相変わらず説明が下手なのだな」
「へ?」
「多分だが、その殺されたというのは日本にいた第二始祖だと思うぞ? 実際、他国にも何人か第二始祖の気配を感じるしな」
「なるほど」
その考えはなかった。
いや、確証は無いから信じる訳にはいかないな。
「ドリーさんに電話をするので」
「あぁ、確認してくれ」
ムキムキの筋肉はドスンッと席に座って待機している。
怪しい行動もとりそうに無いけど一応は警戒しておく。
「もしもし」
『どうしたんだ、葛くん』
「えっと、第二始祖の事なんですけど」
『そこにいるデイビットの言ってる通りだよ』
「あっ、はい。わかりました」
僕はその場に経たり込む。
第二始祖がまだ何人もいるなら厄介だ。
僕は第二始祖+宝玉で力を得ているが、他の第二始祖も同じ感じがある可能性がある。
それを敵に回すと……考えたくない。
「で、どうだったんだ?」
「ム……デイビットさんので合ってました」
「そうか、よかった」
「それで、僕をここに呼んだ理由はなんですか?」
「それはだね……君は今、軍に狙われているんだ」
「それは力が、ですか? 命が、ですか?」
どっちにしても、あげる気はない。
が、どっちかによって対処の方法も変わってくるというもの。
力なら、力を示せばいいし、命なら、相手の命を奪えばいい。
「力、だよ。一応はね。力を奪えないんだったら命を奪おうと考えている。諜報部隊だから先に接触させてもらったのは君の死を偽装する為だ」
「それはありがたい」
狙われなくてすむなら、願ったり叶ったりだ。
まぁ、死の偽装くらい自分で出来るが、敵の中枢に協力してもらった方が確実だろ。
「ホムンクルス モデル吸血鬼」
「おぉ」
僕と全く瓜二つの存在が出来上がった。
たしか、ホムンクルスも錬金術の類いだったような……聞こう。
「デイビットさんは、神からのどんな力を貰ったんですか?」
「貰ったって言うより、手に入れたって感じだけど“錬金術”だ。元々吸血鬼で、それっぽいのは出来てたが、ちゃんと出来るようになったんだ」
「なるほど」
僕の「傲慢の宝玉」と同じだと思うけど、明らか力が弱い。
人口の問題なのかな?
それとも別の要因があるのか……?
「で、これをどうするんですか?」
「その前に、鬼灯には身を潜めてもらいたい」
「わかりました。あっ、捕まった生徒たちってどうしてますか?」
「ん? 捕まったのか? こっちには何にも情報が入ってないが。ちょっとこっちでも調べてみる」
「そう、ですか」
面倒な。
とりあえずは、姿を隠していた方がいいなら、家に帰るべきだな。
「眷属陰法 蝙蝠の目。では、僕は行きます」
「あぁ、なるべく目立たないように頼むよ」
僕は頷いてから家に帰る。
※
さて、ホルムンクスをどうするのかな?
「行け」
デイビットが指示を出すともちろん従い部屋を出る。
そして、
「容疑者が逃げ出した! 直ちに殺せ」
そう、大きな声で叫ぶと、ワラワラとホルムンクスに人が集まっては銃を撃つ。
が、ホルムンクスは吸血鬼力をコピーしているのか、中々殺せずに返り討ちにあっている。
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昨日は誕生日だった……