No.130 輝くゲンセキ
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3日はあっという間に過ぎて、修学旅行の日がやって来た。
「A組は全員揃ってますね……南条さんだけいないんですか」
空港に集合した僕たちだが、南条だけ来ていない。
A組はA組で集まるから、集団行動は乱さないでほしいと思うが、まだ集合時間にはなってないから厭らしい。
「カズラ、カズラ!」
「どしたの、ムウ」
「さっきから楽しそうにニコニコしてるけどどうしたの?」
「そんなに顔に出てた?」
おかしい、ポーカーフェイスには自信があるのに(ウソ)。
なんでバレたんだろう?
「冗談。でもさっきから警戒はしてる」
「あー、ね」
そりゃ警戒もするだろう。
空港と言ったら何かしら起こる。
それは絶対の決定事項だ。
しかも、それを裏付ける理由として空港内に入った時から監視されている。
「ムウ、裏切らなければ大丈夫だから」
「あれ? バレてるんだ。はい」
そう言って、マジシャンの帽子から盗聴器を出して潰した。
次に服の内側についているGPSを。
更には靴の裏に内蔵された爆弾を花に変えた。
「そ、そんなにあったんだ」
「うん。でもよくわかったね」
「勘でね」
嘘だ、全くの嘘だ。
「強欲の宝玉」が情報をくれるから言ったまでだ。
――――バキュン
その音が聞こえた頃には僕の服に弾丸が到達していて、弾丸は既にひしゃげていた。
「強欲な願いを」
A組の皆を囲むように時間の流れを止めて守りの盾とする。
音が届かなくなった空間で、空中に何百もの銃弾が浮かんでいる。
「さて、敵だ。B組をエリーと文鷹。C組をドーラと義宗。D組をシャルとチルとペトラで。F組は僕がやるから」
「僕は?」
「ムウはココナ先生の護衛ね」
「わかった」
「じゃあ頑張って」
空間を切り離し飛ばす。
各自を今言った通りの場所に飛ばしておく。
他の組も同じような状況で怪我人も少しだが出ていた。
情報を共有すると、やっぱりF組が1番怪我人が多いな。
「結界陰法 波紋」
薄い水の結界が張られる。
そこに銃弾が撃ち込まれると波紋が発生して銃弾がポロポロと地面に落ちる。
「誰も死んでないね? 回復陰法 世界樹の雫」
一応全員を回復させておく。
「あなたは?」
「えっと、先生ですよね?」
「はい」
「僕は3年A組の人です」
「あなたが」
おかしいな、学校なら顔写真くらいあるでしょ。
それにA組だよ?
普通に興味を持って知っといてくれててもいいじゃん。
「あなたが鬼灯さんですね。皆、A組の1番が生で戦ってくれるから今の自分たちとどのくらい差があるのか確認してくださいね」
おい、なにちゃっかり先生してるんだよ。
しかも戦う方向に持っていってるし。
僕の場合は魔法じゃなくて陰法とか宝玉なんだよ。
見せられる戦いは出来ないよ。
「いや、魅せる戦いをすればいいのか。宝玉の力よ」
色鮮やかな宝玉が僕の後ろにフワフワと浮かぶ。
魅せる戦い、魅せる戦い。
「うーん、水魔法」
空間を犯人の頭に繋げて窒息させる。
流石に死んでないよね?
まぁ、僕の担当しなきゃいけない犯人は全員倒れただろうな。
「終わりました」
「えっ? な、何もない空間に魔法を放っただけじゃ? でも銃弾の雨は止んでる」
「眷属陰法 黒執事。連れてこい」
真っ黒の黒子のような執事。
数秒して犯人たちを連れてきてくれた。
「ありがと」
ペコっと音がなりそうな可愛いお辞儀をして消えた。
「す、凄いですね。桁違いです。それにしても背が低いんですね」
「……」
「背が低いんですね」だと?
普通は言わなくてもいいだろ、そんな事。
1人の生徒が小声で言っているが、こっちは人間の何倍も優れてるんだよ。
だから聞こえちゃうんだよ、声が。
「はぁー。これで大丈夫なはずですけど、とりあえずはまだ動かないでおきましょう」
警察がすぐに来てくれるだろう。
そうすれば修学旅行は再開されるはずだ。
少しすると、
「葛くんか」
「心夜先輩!」
「なら大丈夫だったね。怪我人も……うん、いない」
いや、治しただけでいましたよ?
「ソイツらが犯人か」
「はい。主犯はわかったんですか?」
「いや、これからだよ。ん? 目星はついてるって顔だね」
「そうですか?」
心当たりがあるだけだ。
そりゃそうだろ?
A組の中で1人だけ来てない人がいたんだから怪しむのも無理はないよね。
まぁ、確証を得ないといけないけど。
「では、心夜先輩お願いします」
「了解、お願いされました」
「心夜先輩は知ってますか? この後どうなるか」
「うーん。知らないけど、空港と相談してからじゃないかな? こんな事になっちゃったし」
「ですよね」
「あっ、葛くんはA組の所に戻って大丈夫だよ」
「わかりました」
心夜先輩とF組の皆に挨拶をしてからA組の所に戻る。
「お帰り」
「おう。そっちは大丈夫だった?」
「あぁ、怪我人も少なく問題なかったな」
「流石、義宗。で、文鷹たちはまだか?」
「今戻ってるってよ」
「そうか」
うん、誰1人殺されてはいないな。
シャルの気配もちゃんとあるし大丈夫そうだな。
ココナ先生が先生方と相談して帰ってきた。
「お待たせです」
表面上はしょんぼりとしているが、脈拍が早く興奮しているから行けるのだろう。
「残念ながら....行けます!」
ほら、やっぱり。
あっ、エリーたちになんで「残念」なのか凄い追求されてる。
「カズラ」
「なに、シャル」
「結局、南条さんは来ないのかな?」
「わかんない」
それに興味もない。
僕からしてみると、ただの小判鮫だ。
最初は姫山快斗について、それが使えなくなると北星渚に乗り替えて。
で、次は誰を狙ってるんだろう?
僕には敵対心しか見えないからあり得ない。
義宗も文鷹も相手がいるから無理に近い。
ムウは……うん、ムウにつこうとしてるのか。
「ムウ」
「どうしたの?」
「南条は来る予定か?」
「うん。あっ、来たよ」
「優雅に」という言葉が似合う雰囲気を漂わせているが、僕的には南条の事が好きではない……嫌いだから優雅とか認めたくない。
うん、滑稽にやって来た。
足元をずらして転ばせる。
これで本当に「滑稽に」という言葉が似合うようになった。
あれ?
皆の視線が僕に……いや、犯人は絶対に南条なんだからこれくらいいいだろ?
えっ?
犯人は南条だよね?
「お、遅れました」
「理由を聞いてもいいですか?」
「ちょ、ちょっと車が混んでいて」
「そうですか? どこも混むなんて事は起きないのですがね」
ココナ先生がしっかり先生をしている。
いや、先生なんだけど。
「それで、なんで集合時間に遅れたんですか?」
「それは」
――――ヒュ バンッ
その音で南条の頭に綺麗な血の華が咲く。
「混沌陰法 影討ち」
とりあえず影を使って犯人を殺しておく。
これは仲間割れと見るべきかな?
次に、
「嫉妬に狂い。輪廻転生」
南条を甦らせる。
なんでそんな事をするかって?
そりゃ、力があるのに使わないのは「傲慢」って物だ。
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