No.128 願いをホシに
ブクマが増えたー!
やったー!
襖が急に開き、畳の部屋が露となる。
「よく来たな」
「は、始めまして」
「靴はそこで脱いでから上がれ」
「はい」
僕は靴を脱いでからシャルと一緒に畳の部屋へと入る。
その人は女性で、着物がよく似合っている。
時代劇とかで出てくる遊女のような格好をしていて、目のやり場に困る。
「話を聞きたい。アビスとドボルは死んだのか?」
「はい。正確には僕が殺しました」
「そんな睨まんでもいい。でもそうか、殺してくれたのか」
なんか含みのある言い方だな。
「あなたは?」
「私かい? 私はひたぎ姫。そう呼ばれている。あなたも可愛いわね」
「わ、私はシャル・ユリエーエです」
「そうか……ユリエーエ、ね。そっちは?」
僕の事だな。
「吸血鬼第二始祖の鬼灯葛です」
「ほう、吸血鬼とな? 実際にいるんだな」
「それで、あなたは何者ですか?」
「私は絡繰使い。どこから説明しようか」
ひたぎ姫は何か事情があるのだろう。
ひとしきり考えてから、
「紫の太陽が始まってから2000年」
「えっ、ちょっと待ってください。そんなに経って無いはずです」
「そうなのか? 私の間違えじゃなければ2000年だったぞ?」
「そ、そうですか」
時間の流れがそこでも違ったのか。
しかも2000年は長い、長すぎる。
「話を続けるぞ。私は日本からイギリスに旅行に来ていたんだ」
「日本からイギリスに……」
「知っているのか?」
「はい……日本から来ましたから」
「そ、それは本当なのか? 今はどことも繋がってはいないはずだろ」
「だからこじ開けたんです」
でも、やっぱり日本出身だったのか。
絡繰にしろ、畳の部屋にしろそんな気はしていた。
「で、だ。人々には力を与えられた。弱い力から強い力まで様々」
「力、ですか?」
「そうだ。地球に伝わる神を模した力からターチに伝わる神を模した物まで様々だ」
「ちょっといいですか? そのターチって?」
「ターチは地球と同じ意味でこの星の事を言う」
なるほど。
それで、どの大陸にも最後にターチがつくのか。
「それで私も強い力が宿った。で、気がついたら2000年が過ぎていたんだ」
「な、なるほど」
どちらかと言うと、「気がついたら」の所を詳しく知りたかったな。
でも2000年なのか。
ドリーさんといい勝負だな。
「ひたぎ姫はこれからどうしたいんですか?」
「私は……そうだな。ここに残るよ。人の身でない私はここで朽ちてくのが1番だ」
「人間じゃないんですか?」
「あぁ、とっくに人間は止めている」
カチャと音をたてて胸の部分が開いた。
そこには歯車や色々な機械が埋め込まれていて、人間と呼ぶにはおかしい構造をしていた。
「わかったか? この身は当の昔に絡繰になったんだ。で、何か用があったのだろ?」
「……そうでした! このガンマターチの回りに木を植えていいですか?」
「木をか? 植物を植えられるのか?」
「えっ、出来ないんですか?」
「出来ないんじゃない。出来なくなったんだ。2000年前はガンマターチも森や林が沢山あった。半分以上は木々で覆われた大陸だったんだ」
想像出来ない。
だって、この大陸は雑草すら見かけないし、工場しかない大陸じゃん。
ん?
だからか。
だから木々が生えなくなったのか。
「多分思っている通りだよ。アビスとドボルの手によって木々は伐採され草花は刈られた。そして工場が次から次に建てられていき、環境がどんどん破壊されていき最終的に有毒ガスを発生させる大陸になってしまったんだ」
「そう、ですか」
酷い話だ。
でも木々を沢山沢山植えれば元に戻る可能性があるって事だよな。
なら、尚更植えないとだな。
「本当に出来るのか?」
「出来ます。いや、やります」
「そうか。なら頼めるか?」
「でも……」
「なにか気がかりでも?」
気がかり。
それはもちろんある。
また木々が伐採されないか心配なんだ。
「また自然破壊されませんかね?」
「それは大丈夫だ。カラクリの兵隊たち」
ひたぎ姫が呼ぶとカラクリの兵隊たちはゾロゾロとやって来た。
「この子たちに監視をさせるから問題ない」
「ありがとうございます」
「なに、緑を見れるならいいって事よ」
僕とシャルはひたぎ姫に挨拶をして時計台を出た。
出るときは凄いあっさりとしていたな。
中々入れなかったのに。
「植えに行く?」
「うん。シャルのはコレ。地面に落とせば自然と根を張ってくれるから」
「わかった」
「じゃあ1周しよう」
僕はシャルと別れてガンマターチの周りを飛びながら木の苗を落としていく。
苗は地面に落ちるとすぐに根を張り、たちまち大きな木へと変化する。
それに従い空気が少しずつ少しずつ澄んでいく、綺麗になっていく。
「ひたぎ姫の話が本当ならヨーロッパは2000年の時を経たのか?」
そういう事になるよな。
これは1度行ってみたいな。
どんな風に変わっているんだろうか?
空から苗木を落とすこと数時間。
「カズラ!」
「シャル。そっちも大丈夫そうだね」
「うん。凄い早く成長するから驚きだよ」
今はガンマターチを木々が囲むという異様な光景を見せている。
して、仕上げといこうか。
「怠惰に生きよ。世界樹の加護」
1つだけ小さな小さな世界樹の木を生やす。
そこに、植物の種を置いとけば、その内誰かが見つけるだろう。
捨てようとしたり、独り占めしようとしたら世界樹から天罰が下るからそこの心配もない。
「これで大丈夫?」
「うん。大丈夫だと思うよ」
時間をかけていけば、植物は成長して緑を取り戻すだろう。
後は、少しでも工場が減るか、悪い物を出さないようになってくれれば御の字だ。
「そろそろ帰ろ。エリーちゃんたちがお家を買ったかもしれないし」
「そうだね。開け、世界を繋ぐ扉」
※
「では、俺たちの家を祝して乾杯!」
「「「乾杯!!!」」」
家は無事に購入してくれて、エクスターチとグロンダントとは繋げることが出来た。
後はギャンなんだけど、行った事がないから素材が必要なんだ。
けど、そう簡単に素材が集まらないのが現実で、中々どうしてペトラの機嫌は悪いままた。
だから、と言う訳ではないが、男子は男子で楽しく話、女子は女子で楽しく話ている。
「に、してもこれはありがとな」
「別にいいって。それにドールさんの協力あってこそだもん」
文鷹が感謝してるのはスマホだ。
が、ただのスマホではないのは当たり前。
そろそろ気がついてるかもしれないが、他の世界でも繋がるようになってるんだ。
もちろん、五帝神とA組の皆……にあげた。
「では、第1回、クリスマスプレゼント交換を始めまーす」
この日はクリスマスという事もあり、大いに盛り上がったのは言うまでもない。
マージでありがとなのです!
感想、ブクマ、ptぜひぜひくださいまし!