No.126 告白したいオトメ
更新なのです!
そうだ!
僕は1つ忘れていた事があったんだ。
あの怪しい時計台に入ってない、潜入するのを忘れてた。
「どうしたの? 浮かない顔してるけど」
「ん? いや、僕は時計台に行ったじゃん?」
「うん」
「そこでさ、敵に夢中になるあまり、時計台に入り忘れたんだよ」
「でも敵は、えっと……ドボルは倒したんでしょ?」
「そうだけどさ、なんか怪しいじゃん。鐘が鳴ると靄が出たりとかさ」
そうだ。
それが納得いかないんだよ。
なんで時計台は靄が出るのを知らせているんだろうか?
別に知らせなくてもいいような気がしないでもないのに。
「カズラ!」
「どうしたの、ムウ」
「敵だよ! 空飛ぶブリキの兵隊たちだよ!」
「お、おう」
敵が玩具だからなのか、とても興奮した様子だ。
「ムウが相手をしていいよ」
「いいの? 敵じゃないかもしれないのに?」
「……うん。この世界には未練も何にもないから」
「わかった」
うん、もし何かあってもある程度だったら対応出来るし、いざと言うときはこの世界から逃げればいいんだ。
「カズラ、酷いね」
「えっ」
「いや、ムウだけに殺らせるの?」
「僕も戦え、と?」
「うん!」
そうか、シャルは僕に戦ってほしいのか。
そっか、そっか。
それはしょうがない。
「シャル姫の仰せのままに」
僕は優雅にお辞儀をしてから庭に出る。
「あれ? カズラも殺るの?」
「うん、やるよ。宝玉の力よ」
僕は7つの宝玉を呼び出す。
ムウはというと、
「レディース アンド ジェントルメン」
そう言って、鬼の角を生やしてからトランプを撒き散らした。
そのトランプたちは意思を持ったかのようにフワフワと浮いていて、
「殺れーー!」
元気な声で似合わない台詞を言うと、トランプはブリキの兵隊たちに飛来して爆発する。
流石だ。
「黒鬼。陽法 新・翠の太刀 裁き」
世界樹の枝が無数にブリキの兵隊目掛けて飛んでいき、根こそぎ力を吸い取って無力化していく。
ブリキの兵隊がまだ出てくるって事は敵がいるって事だな。
そして、敵の名前は、
「アビス、いるんだろ? 出てこい!」
気配は一切感じない。
が、ガンマターチから結構離れたここで、近くにいない訳ない。
「そうかそうか、わかってしまうのか」
「うげぇ」
それは空中に姿を現した。
うん、ムウの姿って白を貴重としたマジシャンの格好で可愛いんだけど……敵の、アビスの格好は青と赤が半々のマジシャン姿。
もし、こんなのが町中にいたら胡散臭いなんて物じゃない、通報レベルだ。
「この姿に感動して声も出ないかな? ん?」
「キモいし胡散臭いだよ!」
「おぉ、酷いね。そんな黒の地味な……じ、地味な服の人に言われたくないな」
わかりやすいくらいに目を一瞬だけ輝かしてくれた。
そりゃ、カッコいいよ、この服は。
THE・貴族って感じでね。
「アビス、であってるよね?」
「そうだよ、正解、大正解」
「敵、でいいんだよね、認識は」
「うーん、そうだね……敵、だよ」
口が耳まで裂けたと錯覚するほど凶悪そうな笑みを浮かべている。
「さぁ、夜になるまで遊ぼうか」
アビスがそう口にするだけで、靄の結界が張られ逃がしてはくれないらしい。
まぁ、僕は対策をいくつか用意しているからね。
その1つを、
「シャル」
「わ、わかった。宝玉の力よ」
シャルがそう口にすると、無色透明の水晶、宝玉がフワフワと浮かび上がり、僕の宝玉は消え失せる。
そして、靄は嘘のように消えて無くなり、沢山いたブリキの兵隊たちも消えて、空に浮かんでいたアビスは
「うわぁぁぁぁぁぁ」
そんな情けない声をあげながら海へと落っこちていった。
やっぱり神々の力を持っていたっぽいな。
に、しても流石は神殺し。
「ありがと、シャル」
「でもどうするの? この家を動かせないんじゃ」
「あぁ、気にしないでいいよ。宝玉の力よ」
また僕の後ろに宝玉がフワフワも浮かび上がる。
理を書き換えたから、他の宝玉の影響は受けないんだ。
いや、一瞬だけ消えちゃうんだけどね。
「うーーん、海に落っこちて見えないから追撃は無理そうだな」
「じゃあ?」
「逃げる1択だよ。急げ!」
僕は空に浮かぶ家を急いで動かしてエクスターチに……うん。
「宝玉の力よ。嫉妬に狂え」
エクスターチの上空に瞬間移動する。
最初からこうすればよかったんだ。
とりあえずは石上家に行き、
「ドールさん、原因は処分してきました」
「お帰り、って慌ててどうした?」
「いやー、ちょっと敵を連れてきてしまったかもしれないので後始末を」
「そうなのか? それは悪い事をしたな。なにか手伝うか?」
「大丈夫です。すぐに行くのでペトラたちをよろしくお願いします」
ペトラたちを引き渡してから、シャルと2人でエクスターチの港に向かう。
海は黒々と変色していて、魚の死体が浮かんでいる。
「シャル、準備はいい?」
「うん、大丈夫」
目の前にはドス黒く高い波が刻一刻と近づいてきている。
それは神聖な禍々しさという矛盾している気配を漂わせている。
「「宝玉の力よ」」
魚たちが可哀想だし、僕に敵対するんだ。
全身全霊を以て殺してあげないと失礼にあたるからな。
「何もカモ壊してコワシテ壊してやる!」
叫び声が聞こえる。
遠いから小さい音なのだけど、いや、音のはずなのにエクスターチにある窓ガラスは次々に割れていく。
エクスターチの上空にある僕たちの家も例外ではなく窓ガラスが割れたのを感じた。
その瞬間、僕の中でなにかがキレた音がした。
「混沌陰法 死神の吐息」
標的はアビスと迫り来る波。
戦いのシーンとかどうでもいい。
速攻で終わらせる為に、理を書き換える。
僕の吐息に触れた物は灰となり朽ちる。
「ふぅーー」
高が吐息、然れど吐息。
吐息に吹かれたアビスと波は灰となり海と藻屑へと変わった。
「カズラ、私の出番は?」
「ごめん。ついカッとなって」
「お家の窓ガラスって魔道具だからすぐに元通りになるよね?」
「……はい、お恥ずかしい限りです」
そうだ、僕が窓ガラスが壊れたとわかった原因は窓ガラスを直す為に魔力が消費されたからだ。
まぁ敵を倒したんだからいいでしょ。
「戻る?」
「うん、特に問題はないだろうけど心配だからね」
という事で戻った訳だが、
「なんで!」
「何がかな、ペトラ?」
ペトラがえらくご立腹な様子。
僕としては一切心当たりがなく、なぜ怒られているのか知りたい。
いや、すぐに教えてくれるだろうけど。
「なんで私だけ相手がいないの!」
「あー、そういう事ね」
何となくわかった。
A組の皆は相手が一応いる。
いや、ムウだけいないけどね。
それが不満なのだろう。
そりゃ、目の前でイチャイチャされたら不満にもなるか。
「ペトラ、次はギャンのある世界に行く予定だから、そこで許嫁とかいるでしょ?」
「……いる、けど」
猫耳が高速でピコピコ動き始めた。
照れてるのか?
照れてこんな可愛い行動をとるのか?
「カズラ?」
「な、なんでしょうか」
この後僕は、シャルにお家に連れてかれ色々されました、はい。
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