No.124 災害はトツゼンに
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心夜先輩が鼠を放ってから数十秒。
「こっちだ」
「はい」
心夜先輩を中心として結界が張られているため、先行しても問題ない。
そして、少ししてから、
「ほんと気色悪いね」
「そうだな。肌が痒くなって仕方ない。鬱陶しいにも程があるから、島ごと焼き尽くすか?」
「それはカズラが許さないよ」
「それもそうか。ガハハハハハハハ」
うん、声が聞こえてきたけど随分と元気そうだ。
「カズラ、来たんだ」
「ムウも……ドラコさん?」
それは人形のドラゴン。
ドラゴニュートとか呼ばれるそういう系だ。
「ん? そうか、この姿は初めてか。いかんせん変な物が鬱陶しくってな。この姿なら抑えられるんだ」
「な、なるほど」
ドラコさんの身長は180cmくらいあったが、更に大きくなり、210cmくらいにはなっているだろう。
ペトラもこんな感じで変化するのかな?
それはそれで見てみたいかも。
「よし、後はシャルだな。ついて来て」
シャルの位置は自分の事のようにわかるから安心だ。
それに、シャルには危害が加えられない。
それも安心の理由と言えよう。
少し走ってシャルたちの所に到着した。
「大丈夫そうだね」
「うん。けど、結界はギリギリかも」
「わかった、交替するよ。結界陰法 神聖なる砦」
ペトラに結界を張り直す。
これで靄も気にしないで大丈夫だろう。
「とりあえずは宿に帰ろう。靄の影響で情報を探すのが困難だからね」
宿に帰ることにした。
その選択は間違いだとすぐに気がつくことになる。
「開いてない」
宿に入るための扉が一切開いてないのだ。
鍵をかけられ、ヘンテコな結界まで張られている。
その結界は厭らしいことに、破ると近くにいる人を含めて呪いが降りかかるらしい。
それも、何重にも防衛されていて、解呪するのが大変な。
えっ、どんな呪いかって?
それは……小さな小さな不幸が降りかかるってもの。
例えば小指を何処かの角にぶつけたり、手が滑って皿を割ったりなど。
「本当に厭らしい」
「何が?」
「ここに張ってある結界が。簡単に壊せるんだけどね、その後の効果が本当に厭らしいの」
「そ、そうなんだ」
しょうがない。
「ちょっと待っててね」
僕は蝙蝠傘を呼び出して空を飛ぶ。
そして靄から抜けて、
「開け、世界の扉。家よ来い来い!」
この世界に、日本に置いてきた家を呼び出す。
客間も人数分あるし問題なく使える。
とりあえずはこの家を拠点に情報を収集しよう。
「よし、皆ついて来て」
「私飛べないよ」
「……ムウに乗せてもらったら?」
気持ち的に僕が引いていくのは気が引けるため、ムウにお願いする。
ムウの魔法の絨毯は人が5人は乗れるであろう広さがあるからね。
「いいよ。はい」
「ありがと」
うんうん、小さい子供が玩具を友達に渡す光景のようだ。
あっ、ムウに睨まれたから行こっと。
※
太陽が昇って朝になった。
いつの間にか靄は消えていて、活気のある島へと戻っていた。
「結局、昨日のはなんだったんだろうね?」
「わかんないけど、とりあえずは良くない物だよ」
普通は心夜先輩やペトラのように人体に影響が出るだろう。
調べないといけない事が1個増えてしまったな。
「じゃあ、皆。昨日と同じように2人1組で調べよう」
という事で皆は行ってしまったけど、
「ちょっと待ってね」
「わかりました」
心夜先輩は何かを作っている。
紙に、水のついた筆で何かを書いている最中だ。
「それは?」
「これはね……出来た。式神呪装 辰鱗」
紙を腕に触れさせると、そこから墨が広がっていくかのように、心夜先輩の体へと巻き付いていく。
それは龍の鱗のような柄へと変わった。
「凄いですね!」
「これで多分、昨日のようにはならないよ」
「流石です」
昨日の今日で対策をするとは、流石としか言えない。
僕なら理を書き換えるだろうな。
「では行きましょう」
目指すは時計台。
シャルたちにはのガンマターチの事に関しての聴き込みをお願いしてある。
ムウたちにはドールさんの依頼通り、複製品に関してをお願いしてある。
「ここだね」
「どうするんだい? ここから」
到着したのはいい。
けど、そこから先は一切考えていなかった。
扉は見当たらない。
入れる場所が無さそうだ。
「どこか違う所から入れるパターンか」
よくある……よくあるかはわからないけど、古ぼけた小屋から繋がってるとかそんな感じだろう。
「まぁ、それらしい小屋なんて無いよね」
「小屋? なんでだい?」
「何となく、入り口がないから古ぼけた小屋から繋がってたりしないかなーって」
「なるほど。でも小屋は無いからね」
「そうなんです」
なら、どこから入れるんだろう?
えっ、なんで中に入りたいかって?
それは「強欲の宝玉」が中に何があるって情報をくれるんだもん。
詳細な情報じゃないのが酷いけど、多分宝玉持ちがいるからわからないんだと。
「君たち、こんな所で何をしている。身分証を見せろ」
カチャカチャと音をたてて、鎧を身に纏った傭兵がやって来た。
どうやら怪しまれているらしい。
「どうぞ」
「これはなんだ? 第1特区許可証だ。まさか違法侵入者か?」
「あっ、うん。色欲に魅せられ」
魅了で動きを封じる。
ギリギリ、笛を吹かれずにすんだ。
もし吹かれてたら仲間を呼ばれて大惨事になるところだったな。
「色々と聞かせてもらうよ」
「はい」
「第1特区ってなに?」
「第1特区はここの事を言って、段々となった場所ごとに名前があり、最下層は第9特区と呼ばれている」
特区は1~9まであって、3から上は許可証が必要になるとの事。
そして、特区は身分も現すため、どこに住んでいるかで格差があるらしい。
「靄について――――」
――――カチッカチッカチカチカチカチ
僕の言葉を遮るように歯車は大きな音をたてて回り出す。
それに従い時計の針はどんどんと進んでいき、
――――ボーーン ボーーン
と鐘の音が10回ほど鳴った。
「はっ! に、逃げなくては」
そう言って傭兵は僕たちを捕まえること無く行ってしまった。
てか、魅了が切れるなんて。
「出たよ、葛くん」
「ですね。結界はまだ張りませんよ」
「危険そうだったらお願いするよ」
靄はたちまち僕たちを、町を、島を囲んでしまった。
「だい、じょうぶだな」
「良かったです」
さて、2回目の靄だ。
僕が「靄」に関して聞こうとしたらこうなったけど、聞かれたくなかったという事かな?
「出てきてくれたら楽なんだけとね」
「そうはならないよ。流石にね」
「心夜先輩ならこの後どうしますか?」
「俺なら、そうだな。手下か何かを送り込んで様子を見るかな」
「ですよね」
「?」
「黒鬼。陽法 新・朱の太刀 嵐腐」
雨風その他起こりうる自然災害が、迫り来るブリキの兵隊を壊して焼いて凍らせていく。
「心夜先輩の言った通りですね」
「これは凄い。けど」
「まだまだ沢山いますね」
辺り一面には集まったブリキの兵隊が海のように迫ってくる。
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☆を★に……