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宝玉の吸血鬼。~人間を辞めきれない大罪人~  作者: ホタル。
4章 遊戯者編
118/155

No.117 法とタイザイニン

更新!



「これでちゃんと名乗れるのか」


 長かった。

 本当に色々な意味で長かったよ。


「“宝玉の吸血鬼” 鬼灯(ほおずき)(かずら)です。以後お見知り置きを、ってクリスに以後なんてないけどね」


 さて、まーずは桜の悪夢を晴らしてあげよう。


「怠惰に生きよ。世界樹の百合(かご)


 世界樹が「ゆりかご」の形になり、桜を寝かしつける。

 これで悪い悪夢は去ってくれる。

 そのはずだ。


「次はクリス、君だ」

「(殺さないで)」

「殺さないでとか思っても意味ないから」

「(俺はただ遊んでただけなのに)」

「だからってやり過ぎたんだ」

「(俺にはやることが)」

「安心しろ、そのやることは僕が引き継ぐ。新しい神を決めるとかなんとか知らないけど、それに巻き込まれたせいで普通の恋は出来ないし……和紗(かずさ)は死んじゃうし。だから安心して死ね。暴食に喰らえ」


 理を書き換える。

 その「虚飾の宝玉」はシャルに与える。

 有意義に使わないと宝玉が勿体ない。


「嫉妬に狂え。バーンッ」


 空間を切り取る。

 天神族も言うては人と同じ構造をしている。

 心臓が無くなればそれで、


「終わりだ」


 クリスの命が途絶えると同時に、裏世界と呼ばれる妖怪たちのお祭りから京都の1本道に戻ってきた。


「シャル、終わったよ」

「うん、カズラは残酷無慈悲でカッコよかった」

「……」


 うん、聞こえなかった事にしよう。

 まさか、それが惚れた理由じゃないよね?


「カズラ困ってる? 冗談だよ、ありがと」

 

 何に対しての「ありがと」かわからなかったが、色々な意味を含んでいるのはわかった。

 後さ、急にキスをするのはやめてほしい。

 流石に照れるという感情はあるから。


「桜ちゃんはどうする?」

「このまま近くの交番に行くのが1番だと思う。その上で届けるか、(ただし)さんに迎えに来てもらうかだね」

「そっか。なら、この道を真っ直ぐだよ」

「よし、行こっか」


 僕は桜をゆりかごに乗せたまま重力で浮かせて交番に届けた。

 なんでもよっぽど心配なのか忠さんが迎えに来る事になった。



 ※



 さて、気を取り直して京ダン高改め京魔高に行く。

 用があるのは、京魔高のA組にいるドワーフのロード。

 言い方はアレだけど、THEドワーフって感じの子だったけど、どう変わったかな?


「ここ?」

「うん、ここだね」


 そこにはちゃんと「京都魔法国立学校」と書かれている。

 京魔高に入り事務室に向かう。

 そこで、


「ダン高改め魔高2年A組の鬼灯葛です」

「あー、鬼灯くんね」


 通された部屋で先生に挨拶をする。

 あの時は先生を覚えようとしてなかったから誰かわからないけど、相手は僕の事を知ってくれてるらしい。


「そういえば、レベルSダンジョンクリアおめでとう。すごいよね。どうだったの? 難しかった?」

「はい、難しかったけど、仲間のおかげでなんとか」


 そう、今はいない仲間のおかげで。

 とと、本題に入らせてもらおう。


「ドワーフのロードに会いたいのですが」

「あー、ロードくんね」


 ん? なんか歯切れが悪いな。


「何かあったんですか?」

「うん、ロードくんは1週間前から行方不明なんだ」

「行方、不明ね」


 クリスめ、死んでもなお、僕の邪魔をすると言うのか。

 厄介極まりないな。


「では僕の方でも探してみます」

「ほんとうか? それはありがとう」


 それからいくつかの情報を貰って京魔高を後にした。


「いなかったね」

「うん。クリスの仕業だけどね」

「えっ、死んでないの?」

「いいや、確実に死んでる。てか、ちゃんと殺した」

「じゃあなんで?」

「そりゃ楽しいからでしょ」


 殺したのに殺せてない。

 そんなモヤモヤした気分だ。

 もしかしたら、これだけに止まらないかもしれないな。

 他にも何かがあるかもしれない。


「浮かない顔してるね」

「まぁ、ね。まだ終わってないだろうから」


 天神族って本当に意味がわかんない。

 決めた事に忠実なだけで、なんで神の使徒なんだよ。


「この人たちなにかな?」

「さぁ?」


 僕たちは真っ昼間だと言うのに囲まれた。

 いや、認識阻害の結界陰法が張ってあるところを見ると、


「吸血鬼か」

「第二始祖の鬼灯葛だな」

「そうだ」

「色欲に魅せられ。頭が高い」


 重力で頭を地面に埋めつける。

 どうせ第五使徒くらいだろうな、弱いから。


「か、カズラ///」

「ん? えっと、シャル、しっかり」

「はっ! カズラがカッコいいのはいつもの事だけど、今はカッコよさが倍増してた」

「本当に?」


 ふむ、「強欲の宝玉」によれば、宝玉を使いすぎることによってデメリットがあるらしい。

 「暴食の宝玉」はお腹が極端に空くかいっぱいになるかのどちらか。

 「怠惰の宝玉」はその場から動けなくなる。

 「傲慢の宝玉」は一時的に運が極端に下がる。

 「色欲の宝玉」は自動魅了。

 「憤怒の宝玉」は血圧が上がる(吸血鬼だから関係ない)。

 「強欲の宝玉」は目にした物の情報からいらない情報まで常に頭に流れ込んでくる。

 「嫉妬の宝玉」は使うと小さな嫉妬で周りの怒りを買うことがある。


 うん、どれも良いものとは言えない。

 いや、憤怒と怠惰は実害が無いからいい。


「それでこの吸血鬼たちはどうするの?」

「僕は何もしていない。ただ、上下関係を理解して頭を地面に埋めただけ」

「そっか。わかった!」


 うん、納得してるかわからないけど、理解してくれて助かる。

 さーて、情報によればロードは今、病院に、特殊な病院にいるらしい。

 なんでも、症状が激しく大変との事。


「で、その病院がここなのか」

「そうなの? 普通のお家みたいだけど」


 見た目は和な家だが、情報曰くここらしい。

 ここにロードがいるという。


「お邪魔しまーす」

「お、お邪魔しまーす」


 2回ほど扉を叩いてから敷地内へと入る。

 庭は綺麗に細工されていて、見ていると心が落ち着く。

 シャルはなんか感動しちゃってるよ。


「お客かい」

「あっ、お邪魔してます。ここにロードというドワーフの子がいると聞いて……情報があって来ました」

「そうかい。上がりな」


 縁側から顔を出したお婆さんについていき、1つの部屋に通された。

 そこには布団の上で横たわるロードの姿があった。


「昨日、というか夜中に症状が治まったんだ」

「夜中?」


 それは僕がクリスを倒した時って事か。

 にしても酷い。

 ロードの顔や体は醜く腐ってしまっている。

 あのグロンダントの少女のように。


「怠惰に生きよ。世界樹の雫」


 畳から小さな盆栽程度の世界樹が生えて、そこから一滴、ロードの口元に落ちた。

 すると、みるみる内に腐っていった体が治っていく。


「これで大丈夫だろう」

「凄いね、凄い力だね」

「ありがとうございま……す」

「どうかしたのかい?」

「い、いえ」


 いや、さっきは気がつかなかったが、お婆さんの額に小さな角が生えていた。

 そう、ムウと同じ鬼の角が。


「えっと、友達を看病してくれてありがとうございます。お名前を聞いても?」

「私かい? 私は波瀬(はせ)守胡(すう)だよ」

「そ、そうですか」


 やっぱり、か。

 ムウの家族になるのか。

 うん、関わらない方がいいな。


「こちらに使いの者が来ますので後はそちらに。では」


 僕はそう言ってシャルを連れて目的も忘れ東京に帰った。



宝玉の吸血鬼と堂々と名乗れるようになった!

感想、ブクマ、ptぜひぜひくださいまし!

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