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宝玉の吸血鬼。~人間を辞めきれない大罪人~  作者: ホタル。
4章 遊戯者編
116/155

No.115 消せないオト

更新!




 京都。

 来たのは2回目……多分2回目であり、観光目的を含めたのは今日が初めてだ。

 まぁ、もう23:56で日を跨ぎそうだけど。


 夜の空をフワフワ移動していたら思ったよりも時間がかかってしまった。

 やっぱり新幹線の方が速かったし、シャルに抱き付いたままという恥ずかしい思いをしなくてすんだ。


「やっぱり新幹線がよかった」

「そうですか? 私は満足です。カズラが甘えん坊で可愛かったので」


 そう、問題はソコだ。

 僕は背が伸びないのに対して、シャルはこの1ヶ月で結構な成長を遂げ、可愛く育った。

 そして、僕よりも背が……背が大きくなってしまったんだ。

 いや、そんなんで嫌いにはならないけどさ、


「大きくなりたいんですか?」

「そうなんだよ……ってシャルは心を読まないで」


 最近のシャルは僕の心を読んで、色々と先回りしてくる。

 そして、僕が恥ずかしいと思う事をするという、Sっ()があったりする。

 今もこうやって、僕の頭に顎を乗せて抱き付いている。


「まぁ、人は少ないし目も気にならないけど」

「そうですか? 残念。それで、カズラは何処に連れてってくれるんですか?」


 何処にと言われても、時間が時間だからどこもやってないんだよな。

 やってるとしてら居酒屋だけど、流石に年齢的に補導されかねない。

 まだ高校生だからなね、一応は。


「君たち、こんな遅い時間に何やってるの。お家は?」

「あっと、これを」


 案の定、警察に補導されるとは。

 僕は持っていた「聖ダン会」のバッジを見せる。


「これは……そうか。ごめん、ごめん。パトロール中かな?」

「いえ、休憩なのですが、夜ご飯を何処かで食べたいと思ってまして」

「何処か、ねぇ。この辺じゃないのか?」

「はい」


 僕はダンジョンカード(ダンジョンないけど)を見せる。

 ダンジョンカードには色々な情報が載っているけど、警察とか所定の場所じゃないと見れないんだよな。

 しかもお金はカードで現金なんて物は無い。


「そうかそうか。ダン高の生徒だったか。なら、この通りを真っ直ぐ行って、途中に“焼かし”という看板が見えるから」

「ありがとうございます」


 警察に言われた通りに道を進んでいく。

 と、言っても看板が見えるまで真っ直ぐだから迷うなんて事は起こらないはずだ。

 否、はずだった。


「カズラ」

「うん」


 いつの間にか、道の端には提灯(ちょうちん)がぶら下がり、笛や太鼓、お囃子の音が聞こえてくる。

 更には、多くの人で賑わう声まで聞こえてくる。


「戻ろっか」

「う、うん」


 シャルは少し恐怖を抱いているのか、僕の腕にしがみつくようにして歩く。

 少しだけ、ほんの少しだけ歩きずらかったりするが、悪くはないので止めない。


「戻ってるよね?」

「うん、そのはずだけど」


 ――――ボッ


 すると、僕たちが戻っていく道の先まで提灯によって照らされる。

 途中、いくつかあった路地も消えていて、文字通り一本道と化した。

 そして、底知れぬ嫌な予感が僕の心を締め付ける。

 ここに居てはいけないと、脳が警鐘(けいしょう)を鳴らしている。


「宝玉の力よ」


 いち早く逃げるために、この場所から去るために宝玉を呼び出す。

 が、


「出ない、か」


 嫌な予感は的中した。

 それも、1番嫌な予感が。


 いや、まだ嫌な予感は続いている。

 僕の心を締め付けている。


「まさか、ね。混沌陰法」


 炎を出そうとするが意味がない。

 特に何も起こらないんだ。

 それどころか、血が垂れたまま治らない。

 吸血鬼としての回復力も失われている。


 とりあえずら指を食わえて止血する。


「カズラ、大丈夫?」

「相当ヤバい。シャルは陰法を使わないでね」

「うん」

「それから手は離さないで」

「わかった」


 今はただの人間も同じだ。

 陰法も回復力も宝玉もなければ、ただのひ弱な中2がいいところだろう。

 いや、まだ望み薄だけど、


「黒鬼」


 黒鬼は呼び出せた。

 武器があるのは、せめてもの救いだ。


「陽法 翠の太刀」


 そこまで式句を言っても、刀は翠色に光らない、輝いてはくれない。

 けど続ける。


「飛雲」


 結果はわかっていたよ。

 そうだよ、無理だよ。

 僕に残されたのは、頑丈な服と神器である刀だけ。

 ……いや、どちらもおかしいくらいに強い武器だな。


「カズラ、どうする?」

「元凶をぶっ潰す。それ以上でもそれ以下でもない」


 何処かに元凶がいるはずだ。

 傍観なんていう、つまらない事なんてしないだろうな。

 もし、僕が犯人ならしないから。


 来た道を戻るのではなく進んでいく。

 音の鳴る方に、声の聞こえてくる方に向かって歩き始める。



「これは!」

「うん。お祭り、だね」


 縁日と言うべきか。

 そこは色々なお店が立ち並ぶお祭りへと続いていた。

 いや、迷い込んだの方が正しいだろうな。

 後ろを見ると、さっきまでは提灯の道だったのが、お店が立ち並ぶお祭りへと変わっているのだから。


「邪魔だよ、道の真ん中に突っ立ってるな」

「すみません」


 僕たちは道の端に移動する。


「カズラ。人じゃないよね?」

「うん、人じゃないっぽい」


 僕たちに声をかけてきたのは顔が無い、所謂(いわゆる)「のっぺらぼう」と呼ばれるやつだ。

 それだけじゃない。

 天狗やら鬼やら色々な種族がいる。

 どれも日本では「妖怪」と呼ばれる類いの者たちで、人間は1人もいない。

 僕たちも人間じゃないから、本当の意味で人間はいないと言える。

 いや、人間の子供並に今はひ弱だけどね。


「なんか怖いよ」

「多分だけど大丈夫。こっから何かをしない限り襲われないと思うから」


 こういうのって、普通は「人間だ!」って襲われるけど、僕たちは生憎人間を止めている。

 だから、手を出さなければ大丈夫なはずだ。


「ん? 珍しいな。人間(もどき)か?」「本当だ。おかしな気配だ。人間っぽいけど人間じゃない」「人間じゃなーい」


 僕たちの上をフワフワと狐の霊が飛び回っている。

 たしか「霊狐(れいこ)」と呼ばれる妖怪だったか?

 この霊狐たちから情報を貰うとするか。


「ここの主を知らない?」

「なんでなんで? 知ってても教えるわけ無いじゃん」「無いじゃーーん」

「そっかー、じゃあ祓わないとだな」

「嘘だ、祓う力なんて無いでしょ? 笑わせないでよ」「笑わせなでよーーー」


 合いの手が入ってくるが、無性にイラっとくる。

 なんて言うんだろう……そう、「虎の威を借る狐」だ。

 両方同じくらいの強さなのに。

 まぁいい、


「黒鬼」


 黒鬼を出すと、妖怪たちの目が一瞬にして僕に、僕の黒鬼に集中する。

 お祭りの音が、笛や太鼓、お囃子の音が消え、誰も喋らなくなった。


「ヒイィィィ!」


 霊狐たちの悲鳴が辺りに響いて、たちまち逃げてしまった。

 そして、誰かが固唾を飲み込む音だけが静寂を際立たせている。



ブクマとかいっぱい欲しいよぉ

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