No.109 成りたいミライ
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ワンダーランド城に乗ること数分、やっと日本が見えてきた。
軽く外を眺めると、一見して平和と言える。
が、一度路地裏に目をやるとソコは無法地帯と化していて、元ダンジョン攻略者であろう人たちが盗んだであろうお金を数えたり、捕まえてきた女性に……ぼ、ボコボコにされたりしてる。
最後のはおかしいな。
てか、どこかで見た事あるな。
誰だろう?
「カズラ」
「シャルか。どうしたの?」
「カズラを見つけたから」
「そっか」
さっきからモジモジしてどうしたんだろう?
ムウが何か耳打ちしてたけど、その事だろうか?
「か、カズラ?」
「なに、シャル」
「え、えっと、ね。カズラは私がお願いしたら聞いてくれる?」
「お願いでも命令でもある程度は聞いてあげるよ」
実際、前に1度命令という形を取ったもんな。
あの時は、そうする事で僕の人殺しが罪に問われなくするためだけど。
まぁ、流石に「何でも」とは答えないけど。
「そっか、カズラは優しいね。そ、そうだ! デート楽しみだね」
そう言って城の中に入ってしまった。
何が言いたかったんだろう?
「葛、帰って来てたんだ」
「この城は僕の城じゃないから不法侵入だぞ、透」
透は僕の後ろに現れた。
てか、本当に透の宝玉が欲しい。
「なによう?」
「可愛い可愛い弟が挨拶しに来たんだよ?」
「どこが可愛いだよ! 僕よりも背が大きくなってるし、僕だけのアイデンティティである“宝玉の吸血鬼”を透もなっちゃうし」
そうだよ。
僕もカッコいい名乗りが欲しいのに、透が宝玉持ちになったせいで、「宝玉の吸血鬼、鬼灯葛」って名乗れないんだよ。
「葛はお母さんたちに会った?」
「まだだけど」
「そっか。同じだ。お母さんがどこにいるか知らない? ハワイに行ってみたんだけど、いなかったから。宿泊場所もこの前まではいた事になってるし、防犯カメラにも写ってて」
「わかった、こっちもなるべく探して連絡するよ」
「お願い。じゃあ」
透は一瞬で姿を消した。
なんで?
いなくなる理由が無いだろう。
お金だって特に困らないだろうに。
なんで?
「葛くん、もうすぐつくってよ」
「ありがと、桜」
桜に呼ばれ城内へと入る。
「カズラよ、次の世界に行くのはいつ頃だ?」
「わかりません。素材の問題があるので」
そう、素材を集めるのが一苦労なんだ。
力をある程度持った物じゃないといけないからな。
「わかった。なら、完成したら連絡をくれ」
「ドミニカさんは学校に来ませんか?」
「必要ない。これでも600年は生きてるんだから」
それでもドリーさんより少ないんだよな。
やっぱり、ドリーさんって見た目と違っておば……。
「はぁはぁはぁ」
急に寒気を感じた。
うん、無駄な事を言うのはやめにしよう。
「言われた場所についたぞ」
「ありがとうございます。じゃあ、皆降りよっか」
そう言って、チルとアイリスを抱えて城から飛び降りる。
次に降りてきたのはシャルと桜。
ペトラが降りてきて、義宗が落ちてくる。
その義宗の上に石上が着地して、エリーと文鷹が仲良く降りてきた。
「葛くん、ココナちゃん先生は無理だと思うよ?」
「あーー、そういえばそうだね。けど、ほら」
ココナ先生が最後に降りてきた。
角を生やしたムウと一緒に。
「ドミニカに学校でも行ってこいって」
「そっか。無理でも僕が何とかするから。でもアレだな、A組って10人までじゃん」
多少の変動があるかわからないけど、学年の上位10人がA組というルールだ。
そして今、ここにいるのは11人。
まぁ、アイリスは抜いたとしても10人になるけどそう簡単じゃない。
だって、A組には僕たち以外に南条暦とクリス・シュトールがいる。
後、僕たちが居なくなってる内に渚がA組に繰り上げをしているだろうから最低でも後8人は追加される。
「その為にはチルを強くさせないとね」
「えっ、私!」
急に話が振られると思ってなかったのだろう。
まぁ、この中で弱いのはチルかなーと僕は思った訳で、
「だ、大丈夫です、カズラ殿。ヤードさんに稽古をつけてもらったので、ある程度は強くなったと」
「そっか、なら気にしなくていいな」
五帝神のヤードが教えたんだよ?
「ある程度は強くなった」って謙遜だよね。
「ほら、皆さん。立ち話してないで来てください。私の仕事の為に!」
ココナ先生に急かされて校長室に向かう。
その途中、何人かの生徒とすれ違ったが目を合わせようとはしてくれなかった。
まぁ、その事についても宮内先生に聞けばわかるだろう。
「さぁ、良く来たね、元A組のみんな」
校長室で開口一番に言った。
「私は吸血鬼第七始祖の宮内奏。ソコの鬼灯くんと同じです」
「「「えぇぇぇえぇぇ!」」」
僕とユリエーエ組以外は驚きの声をあげる。
そりゃ、理事長をやっていた人が、現に校長になった人が吸血鬼だと知ったんだ。
驚きだろう。
「じゃああの噂は本当だったんだ。夜な夜な女子生徒を部屋に呼んでイカせてるとか」
「えっ?」
「怪我をした生徒を見つけては舐めて治したりとか」
「えっ!」
「魔法じゃない特殊な能力を使ってこの学校を支配しているとか」
「えっ!!」
エリー、ペトラ、石上の順に宮内先生の変な噂を言っていく。
「ねぇ」
「な、なんでございましょう」
「どういう事? 流石に気持ち悪いよ」
「グァバシュッ」
変な奇声をあげた。
てか、少し顔が惚けた所を見ると、Mなのか?
Mなのか?
本気で知りたくなかった。
「ま、まぁ、一旦落ち着こう」
「先生がでしょ」
「さ、さて。ここにいる11人がA組候補かな?」
「この子、アイリスは違うので10人です」
「わかった。こっちも皆の実力を把握したいから戦いの場を用意させてもらう」
なら大丈夫かな?
繰り上げのA組じゃ僕たちに勝てるわけないし、危険があるとすれば、同じA組である南条暦とA組に上がってきたクリス・シュトールだろう。
「質問がある者は?」
誰も手をあげないので宮内先生は準備に取りかかる。
と、言ってもすぐに準備が完了し、校庭に集められた。
『これからクラス替え決闘を開始する。A組1位南条暦 対 鬼灯葛』
へぇ、今の1位って南条なんだ。
北星についてたから1位の座を手に入れたんだろうな。
「なんでアンタがいるの!」
「……」
「無視するな! アンタなんて南条家の力で――――」
「――――あんまり公になってないみたいだけど南条家って解体されたんでしょ?」
「な、なんでそれを! ち、違うから。これは嘘だから。アイツが嘘をついてるだけだから!」
必死に今のA組の人たちに弁明しているが望み薄という感じだ。
そんなに家を傘にしてきたんだな。
『それでは、始め』
「黒鬼」
「ま、待って」
「わかった。いいよ」
待って、とお願いされたから待ってあげる。
と、言っても人間に何か出来る訳でも無いし待っても問題ないからね。
「よ、よし。死ねぇ」
そう言って何処から出した銃の引き金を引いた。
なんと気がついたら300,000文字行ってました!
しゅごい嬉しいw
よく書けたな、自分……
感想、ブクマ、ptぜひぜひくださいまし!