No.105 欠片サガシ
更新!
「皆はどうする?」
僕は皆に問いかけた。
選択肢としては、このグロンダントに残るか、日本に行くか、日本の魔法学校に行くかがある。
ドワーフのエクスターチに行くには素材が無くて鍵を作れない。
獣族のギャンも同様だ。
「もし、魔法学校に行くなら今から連れてくよ。あっ、後ココナ先生はこれを」
ドリーさんに預かっていた封筒を渡す。
それは、魔法学校の資料であり、教師をしろという物である。
ちなみに、宮内先生も悪いヤツで、
「み、皆さん。ぜひ魔法学校で勉強しませんか?」
「ど、どうしたの、ココナちゃん先生」
「エリーちゃん、いい機会です。折角また日本に行けるんですよ?」
どこか必死さを感じさせる説得。
「ペトラちゃんは来ますよね? ね?」
「は、はい」
まずはペトラが押し負けた。
次いで石上が落ちて義宗が道連れにされる。
「ココナちゃん先生、なんで必死なんですか?」
誰1人として質問しなかった事をエリーが聞いた。
もちろんココナ先生は答える訳で、
「A組の、皆さんを連れてこないと私の仕事が無くなるんです」
「そ、そういう理由ならいいよ。文鷹もいいよね」
エリーにそう言われ文鷹は無言で頷いた。
うんうん、いい感じになっているな。
「桜さんは?」
「わ、私は」
僕の事を伺うようにチラチラと見てくる。
僕が行くと言ったらついてきて、行かないなら一緒で行かないんだろうな。
「もちろん僕は行くよ」
「なら私も」
それを聞いて安心したのかココナ先生は胸を撫で下ろした。
「そういえば気になったんだけどなんで皆は会話出来てるの?」
「「「えっ!」」」
それは気になっていた事だ。
ドワーフやエルフ、獣族に人間と種族や世界自体が違うのになんで会話が成立しているのか。
皆も今ごろそれに気がついたのか考え始める。
試しに、
「桜、ここに名前を書いて」
「わかった」
桜はスラスラと名前を書く。
それも日本語で。
吸血鬼だからかな。
「義宗、名前をここに書いて」
「お、おう」
義宗もスラスラと名前を書く。
それはエルフの文字だった。
「義宗が書いたのはエルフの文字。で、こっちの桜のが日本の文字」
「あれ? 俺、日本の文字が読めないぞ」
「私も」
日本の文字は誰1人として理解していなかった。
これは、残された人への救済処置かな?
神の粋な計らいか。
「宝玉の力よ。喰らえ、皆の言葉の壁を」
言葉の壁は大きい。
言葉が通じないと色々と大変だからな。
「エリー、シャルと喋れる?」
「えっと、始めまして、シャルちゃん」
「は、始めまして、エリーさん」
よし、会話が成立した。
これで不便は無くなっただろうな。
「じゃあ今から日本に戻るよ。開け、世界を繋げ……」
「どうしたの、葛くん?」
「いやー、ここに連れてきた人が他にもいたのを忘れてた。危ない、置いてく所だった」
僕は五帝神の存在をすっかり忘れていた。
いやはや、殺されかける所だった。
「じゃあちょっと行ってくるから待っててね」
皆で行くのにも理由がある。
時間の流れが違うから面倒な事にならないようにだ(主に設定面で)。
僕は五帝神を探す……と言っても中心からドミニカさんが来た方角に進む。
手っ取り早く、連絡とれる手段としてスマホでも渡しておけばよかった。
または原始的にトランシーバーとか。
原始的じゃないけど。
「で、桜とシャルはついてきちゃったの?」
「うん、だって葛くんと一緒にいたいから」
「わ、私もカズラと一緒がいいから」
うんうん、その気持ちは嬉しいんだよ。
男の子として2人の可愛い子にそんな事を言われたら最高だよ。
けどね、
「2人はあの中で1番強いから守っててほしいの。お願いできる?」
「わ、わかった。カズラがそう言うなら」
よし、シャルは物わかりがよくて助かる。
「私は引き下がらないよ!」
「桜、お願い、戻れ」
何があるかわからないんだ。
皆を守れるのは僕だが、僕が行かなきゃいけない。
少し強く言い過ぎたか、桜は瞳に涙を浮かべる。
「ご、ごめん桜。言い過ぎた」
「う、うん。だ、大丈夫」
大丈夫じゃない。
涙が次から次へと落ちていく。
「はぁ、結界陰法 無限朧」
村全体に外から来た者を迷わせる結界を張る。
これで魔物や敵の心配はある程度大丈夫だろう。
それに結界が壊れたらすぐにわかるからそこも抜かりない。
「2人とも、ついてきていいよ」
すると、桜は急にケロっとして、シャルはニマニマと笑っている。
うん、やられた。
完全に騙されたよね。
「2人とも、覚悟はいいよね?」
僕は右側にシャルを担いで左側に桜を担ぐ。
そして、
「宝玉の力よ。重力」
重力を弱めて大ジャンプする。
次にある程度の高さまで行ったら2人を離して先に落ちる。
「反省しろー」
多分、今の僕は嫌らしい笑みを浮かべているだろうな。
重力を僕だけ強めて先に地面に着地する。
「して、2人は」
身体強化で目を強くして見ると、2人で協力して速度を弱めようと色々な魔法やら陰法やらを使ってる。
「そろそろ助ける準備をするか」
僕は魔法収納袋から風船を1つだして膨らませる。
それを宝玉の、『憤怒』の力で巨大化させて、
――――ドゥンッ
変な音が鳴って2人を受け止めた。
「反省した? それとももう1度……ごめんなさい」
僕が風船をよじ登って2人の近くに行くと、申し訳ない事になっていた。
恐怖のあまり、あれをあれしちゃったらしい。
僕は綺麗な土下座で謝罪の意を表明する。
次いで、魔法収納袋から布を何枚か出して、錬金術で服を、ワンピースを作る。
「ごめんって」
2人はズンズンと先に先に進んでいく。
そして魔物が出るとバッタバッタと鬱憤を晴らすかのように倒していく。
ダメだ、機嫌を直してくれなさそう。
これは僕が悪い。
ここで言い訳をしよう物ならどうなるかわからん。
殺されはしないだろうが、半殺しは確定事項だ。
「な、なんでもするから」
最後の手段。
「なんでもするから」を使う。
これは結構な無理難題がきたら終わりの奥の手。
「じゃあ、私はデート」
「私もデート」
シャルと桜はデートがご所望らしい。
よかった、思ったよりもキツくなくて。
「ちなみにいつ?」
「「日本についたらすぐに」」
2人の声が重なる。
そして2人はいがみ合うようにしてから同時に「良いことを思い付いた」という顔をして相談し出す。
で、
「2人をデートに連れてってね」
「それでいいの? シャルも桜も」
「「うん」」
それでいいなら、いいけど。
両手に華とか最高じゃん。
「あっ、葛くん、村だよ」
「本当だ。じゃあここにドミニカさんがいるのか」
いない、なんて無いよな。
てか、今って真夜中じゃん。
こんな時に行くって迷惑だよな。
「紙飛行機」
紙飛行機に「少し遅くなる」と書いて風に乗せる。
これでA組の皆の所に届くだろう。
「さて、ここで野宿だけどいい?」
「なんで?」
「今って真夜中じゃん? 普通に今行ったら迷惑でしょ」
「なるほど、王城でも本当に大事な事じゃない限りは朝1番だった」
2人とも納得してくれて、安心して野宿が出来る。
ブクマが更に増えてましたありがとうございます
感想、ブクマ、ptぜひぜひくださいまし!
ついでに☆を★に……




