No.103 会わせてシアワセ
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「そういえば、2人はなんで会話出来てるんだ?」
文鷹が不思議そう言ってきた。
言われてみれば、なんでシャルと桜は会話が成立してるんだ?
「フッフッフッ、吸血鬼パワーです」
桜が胸を張って答える。
けど、それ以外には理由が無さそうだしそう考えるのが普通か。
または、僕が言葉を理解できるから、子である桜も言葉を理解できるという考え方。
多分、後者だな。
作者がそう言ってるから。
「でだ。皆に聞いてほしい。迎えに来たわけだが、どういう訳か鍵を使えなくなってしまったんだ」
「鍵って?」
「これ。世界を渡る鍵と名付けた」
これを桜に渡して順々に見て回す。
「ちなみに日本はどのくらい経ってた?」
「えっと1週間。だからこっちで2ヶ月過ごせばあっちでは約1日なると思う」
まぁ、今の現状ではそんな事はどうでもいい。
問題なのは宝玉の力が一切使えない事。
なにか、なにか原因があるはずなんだが。
「ここ最近で、なにかおかしな事って無かった?」
「おかしな事? 特にないが。なぁ?」
文鷹が代表して答えて皆に確認するが、皆無言で頷く。
まぁ、もし宝玉を使えなくしたならバレないようにするよな、普通。
「葛、なんか日本の物って持ってきてないのか?」
「俺ピザ食べたい!」
「ピザって日本のじゃないんでしょ?」
日本に帰れると期待していたんだろう。
それが出来ない今、料理だけでもと盛り上がる。
もちろん、期待に答える事が出来るようにちゃんと買ってきてあるから。
「義宗はピザな」
「あんがと」
順々に注文を聞いては用意していく。
が、石上とペトラはエクスターチとギャンだから食材が無いという事で、持ってきた色々な料理を堪能してもらうだけにした。
そういえば、
「エリー、祭壇ってどうなったか聞いてる?」
「えっと、なんか変なのが出来てるから近づかないようにって言われてる」
「変なの、ね」
それが何かしらの原因なのは確かだろう。
てか、それがおかしな事だろ。
とりあえず近づくだけなら危険はないかな?
「カズラ、行くつもりですか?」
「うん、そうだよ。だって、なるべく日本に帰して……」
ん?
石上と義宗は付き合ってる。
その場合ってどっちの世界で暮らすんだろう?
「あぁ、大丈夫だよ気にしないで。俺はエクスターチに行くつもりだから」
「そ、そうか」
考えを読んだのか義宗が言ってくる。
なら、日本に帰さないといけないのは、
「ココナ先生だけか」
「はい。迷惑をかけます」
「いえ、不正教師に比べたら小さい物ですよ」
実際問題、ココナ先生は逃げたいって気持ちはあったかもしれないが、生徒の為って言っていたし、自分可愛さで誰かに迷惑をかける訳でもないからな。
「じゃあ僕はちょっと行ってくる」
「私も一緒に行く」「私もついて行く」
シャルと桜の声が重なる。
「私は葛くんと同じ吸血鬼だから足手まといにならないもん」
「わ、私だって……」
シャルは桜と比べるとお世辞にも強いとは言えない。
それをシャル自身も自覚しているのだろう。
「カズラ、私を吸血鬼にして」
「えっと、いいの? 後悔しない?」
「いい。負けたくない」
なんで対抗意識があるのかはわかるよ、わかるけどさ。
僕的にはハーレムは望んでなくて、ただ可愛いなって思って普通に接してただけなんだ。
とか言うとクソみたいに聞こえるな。
「眷属陰法 血統血鬼」
僕が唇を噛み切ると血が滴る。
そしてシャルと唇を合わせる。
「ンッッッ」
「「「おぉぉぉぉ!」」」
シャルの声にならない悲鳴と、周りの茶化すような歓声。
キスが終わるとシャルはとても嬉しそうな顔で眠ってしまった。
「葛、大胆だな」
「粘膜と粘膜が触れた方が侵食が早いから。義宗もやろうか?」
「じょ、冗談じゃない」
義宗の弄りに冗談で返す。
に、しても中々起きないな。
まぁ、本当は血をかけるだけでよかったけど、ついね。
本当に下心ありありでやりました。
「葛くん」
「な、なんでしょうか、桜さま」
「私が何を言いたいかわかるよね?」
「……はい」
桜を吸血鬼にした時は首から直接血を入れて吸血鬼にした。
なんでシャルと違うんだ、って事だよね。
申し訳ないけど、過ごした時間なんだよ、これは。
それに、シャルには和紗もといシィ・ユリエーエの面影が時折見えてしまうんだ。
だから、って言うのが大きい。
それは僕のせいだけど、悔しくもあり嬉しくもある。
「さて、シャルが起きたら行ってくるわ」
「早めに解決してこいよ」
「了解」
その日は解散となり、割り当てられた部屋に行く。
何故かエルフの人たちに僕と桜とシャルを同じ部屋にされた。
「起きないね」
「うん」
「悲しそう」
「……うん」
悲しそう、か。
割りきったと思ってたけど、案外割りきれていなかったらしい。
次に進めたらどんなに楽だろうか。
けど、僕にその資格があるのか?
助けられる力はあったはずだ。
それなのに助けずに暴走して水に流す形で終わらせる。
うやむやにして終わらせた。
「風に当たってくる」
「うん。シャルちゃんは見とくから」
僕は部屋を出て木に登る。
ここからでも、グロンダントからでも月は見える。
月、と言っても地球の月よりも大きく眩しい。
それでいて綺麗だ。
手を伸ばせば届きそうな距離とはこういうのを言うのだろう。
「カズラ」
「なに、ムウ」
「報告。ドミニカが言ってた。グロンダントの中心におかしな物があるって」
「ありがと。じゃあ僕からも1つお願い。シャルと桜が来ないように止めてくれる?」
「いいの?」
「うん。早めに片付けて帰ってくるつもりだから」
「わかった。報酬はチョコで」
「うん」
ムウに2人の足止めをお願いして中心に向かう。
ドミニカが先に行っているだろうか。
中心についた。
道中、虫の魔物が多く流石にキツかった。
「ドミニカー」
呼び掛けてみるが返事はない。
「来てない、か」
まぁ、別に1人でも大丈夫だろう。
に、しても大きな蕾だな。
不自然なほど力が溜まってるし。
「とりあえず、黒鬼。陽法 黒の太刀 断絶」
シュカっと音はなるが少しも傷がつかない。
神器なんだけどそれでもダメなのか。
「宝玉の力よ」
近いから反応するかと試すが結果はなにも起こらない。
「先客か」
「ドミニカさん、ムウを寄越したって事は先に行ってるって意味じゃないんですか?」
「そんなこと言ってないだろ」
「そうだけど」
そうだけどさ。
出来たら僕がつく頃には解決しててほしかった。
「ドミニカさん、宝玉は?」
「使えん。カズラは試してたよな」
「はい。無理でした」
宝玉が使えないってこんなに不便だったなんて。
ほんと、宝玉さまさまだな。
「一応、混沌陰法 焔柱」
高温の炎の柱が天高く伸びる。
ある程度して火が消えると、
「燃えてない、のか」
「なら私の番だな。魔術 油炎」
炎が水のように蕾を燃やしにかかるが結果はもちろん、
「燃えんか」
「ですね」
ドミニカさんでもダメだった。
何か方法はないのか?
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