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メダカのキモチ  作者: freedomlife
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第2話 メッセージ


メダカたちを飼い始めるとともに、恭介が仕事から帰ってからの日課は、水面の汚れをすくい取ること、餌をあげること、そしてメダカたちが泳ぐのをじーっと眺めること。


メダカたちはまだ成魚になる少し手前のようで、若く動きも素早い。


そして、性格も4匹4様違うようで、餌をあげるとすぐ水面に上がってくる子と、それを横取りしようとちょっかいをかけてくる子、最初から餌争いに加わらず、じーっと底で待っている子、餌が水底に落ちてくるとそれを拾い食いする子・・


見ているだけでとても面白い。


そんな仕草を見ながら、恭介は4匹それぞれに名前を付けた。


餌にすぐ飛びつく子が、背ビレの大きい「ヒレ吉」、いつもそれを横取りしようとする子は太っちょの目の大きい「パンダ」、そしてずっと底にいる子は、ひたすら逆境に耐える「たえ子」、いつもおこぼれに与ろうとする子はピンク色の体が綺麗な「ピンキー」。


ヒレ吉がこの4匹の中では積極的な性格で、群れを引っ張るような感じである。


けど、本当のボスは、大柄で一番喧嘩が強そうな?パンダである。


たえ子は、いつも元気なさそうな感じで、この群れの中では一番立場も弱そうである、が、多少のことではめげないタフさがある。


ピンキーはお気楽でちゃっかりした性格で、喧嘩に勝った仲間の後ろにピッタリくっつき、一緒に餌にありつこうとする。


彼らのコミカルな動きを水槽越しに見ると、仕事で心がささくれだった時でも、次第に和んでしまう。


狭い水槽に4匹いると、糞や餌の残りなどであっという間に水が汚れてしまう。


だから、恭介は週に1度、水槽の水替えもしている。


休日は、メダカを眺めながら好きな音楽をかけ、部屋の掃除をしている。


恭介の日常は、もはやメダカ無しでは成り立たなくなるくらい、彼らへの愛情は日に日に増していった。





恭介は、友達を探し、あわよくば恋人も見つかれば・・という思いから、大手SNS「mottogram」のメンバーになっている。いつもは外出先や出張先で食べたものをアップしているのだが、メダカとの生活が始まってからは、彼らの表情をスマートフォンで撮影し、自分のアカウントがあるmottogramにアップし始めた。


すると、同じようにメダカや淡水魚が好きな見知らぬアカウントの人がアクセスしてくるようになった。


そんな反応を見るうちに、恭介は更に多くの写真を撮って、アップするようになった。


メダカを正面から撮った時の表情、真横からの表情、そしてピョコピョコ動くかわいらしい尾っぽ・・


恭介は、自分が心癒やされる彼らのかわいい表情、かわいい仕草を写真に収め、アップした。


やがて、恭介のアカウントに、同じように魚好きなアカウントから、友達申請が来始めた。2人、3人・・1ヶ月近くの間に、8人に達した。


そんな中、1人のアカウントが特に恭介の写真に興味を持ち、写真をアップするたびに、気に入った投稿に対して押す「good!」のボタンを押してくれていた。


アカウントの名前は「guppy-ansumble」。


guppyって・・・熱帯魚のグッピー?


恭介はこのアカウントが毎回good!のボタンを押してくれることに、嬉しいと思いつつも、自分の拙い写真を毎回見てくれるなんて、一体どんな人なのかな?とちょっと気がかりであった。





ある日、ピンキーがヒレ吉と一緒に、まるでシンクロナイズド・スイミングのように、並んで泳いでいる姿を見て、これはシャッターチャンスとばかりに写真を撮った。


そして、いつものように写真をmottogramにアップし、2日位経ってからアクセスすると、「メッセージが届いています」のアイコンが出ていた。


え?メッセージ・・?普段めったに見ることのないアイコンを見つけ、一体誰から?と不審に思った恭介は、早速アイコンをクリックすると、


「こんばんは。毎回、「kyodream」さんの写真を拝見させていただいています。今回の写真、とっても可愛いですね。写真のメダカちゃん、2匹とも仲良さそう。あまりにも可愛くって、思わずメッセージ送っちゃいました。またメダカちゃんの写真、待っています。」


kyodreamは、mottogram上の恭介のアカウント名である。


そして、送り主のアカウント名は、「guppy-ansumble」。


恭介は驚き、そして、今回メッセージを送ってくれたguppyというアカウントが、どんな人なのか、ますます興味を掻き立てられた。


いてもたってもいられず、思いに任せてパソコンのキーボードをたたき、guppyへの返信を送った。


「こんばんは。kyodreamです。感想、ありがとうございました。メダカがとにかく可愛くって、表情やしぐさを僕だけじゃなく、多くの人たちにも見てもらいたくて、アップしています。今回、たまたま二匹が一緒に泳いでる姿を見つけたんで、すかさず?シャッターを切りました。guppyさんは、メダカがお好きですか?また、いい写真ができたらアップしますね。」





翌日、仕事から帰るといつものようにメダカに餌を与え、終わったあとにmottogramにアクセスすると、「メッセージが届いています」のアイコンが表示されていた。


恭介は思わず唾を飲み込み、アイコンをクリックすると、送り主が「guppy -ansumble」のメッセージが表示された。


「こんばんは。返信ありがとうございます。わたしもメダカ、大好きです。自分でもヒメダカを飼っています。すっごくかわいいですよね。仕事で疲れた時、メダカちゃんがゆうゆうと泳いでるのを見ると、とっても癒やされるんです。kyodreamさんとメダカの話したいです。気が向いたら、またメッセージ送ってくださいね。」


わ・・わたし?ということは、guppyというアカウントは女性なんだろうか?


恭介は嬉しいと同時に、胸がとてつもなく高鳴りはじめた。


もっと話したい、ゆくゆくは本人に会ってみたい!


そんな気持ちが強くなっていった。


水槽では、パンダが餌のほとんどを食べてしまい、ヒレ吉はがっかりしたかのように、水槽の底へと去っていってしまった。


ピンキーは時々水中にこぼれおちてくる餌を見つけてはついばみ、たえ子はいつものように、じーっと水槽の底で微動だにせず、何か考え事をしているのかな?と思うような表情をしていた。



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