表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小人族御伽草子 橘姫と神の卵  作者: おかやす
第四章 天の歌、地の舞
37/48

5 千年の恨み

 『鈴丸……やはりお前か』

 「これはこれは。一寸法師ではないか」


 冷たく響く鬼の声に、楓の体がすくんだ。間近で感じる鬼の力は、やはり圧倒的だった。しかも一寸法師を認めた瞬間、鬼の力は激しい憎悪に包まれた。そのすさまじい憎悪に、楓の全身には鳥肌が立った。


 「もはや死体ではないか、一寸法師。かつて鬼の軍団を手玉に取った策士も、時の流れには勝てぬか」


 鬼は結界に足を踏み入れた。小人族の力が鬼の力に反応し、爆発が立て続けに起こった。しかし鬼は動じた様子もなく、さらに一歩を踏み出した。


 『小人族の結界だ。この結界はお前には破れぬ』

 「どうかな?」


 鬼は一気に力を解放した。解き放たれた鬼の力が津波のように押し寄せ、結界をすっぽりと覆った。小人族の力と鬼の力の反発が激しくなり、ひときわ大きな爆発が起こった。


 「鬼の力には強い小人族の結界も、物理的な爆発には弱い」


 鬼の力には耐えた結界だが、連続して起きた爆発には耐えられなかった。結界に無数のヒビが入ると、鬼はとどめとばかりに、ありったけの力を叩き込んだ。


 「私を誰だと思っている。千年もあったのだ、小人族の結界を破る方法ぐらい、考えつくわ!」

 『くっ……行け!』


 鬼が小人族の結界を破った瞬間、一寸法師は残る全ての力で楓を結界の外にはじき飛ばした。鬼は楓には目もくれず、無防備となった一寸法師に襲いかかった。


 「貴様だけは許さぬぞ! 八つ裂きにして、その身を獣に喰らわせてやるわ。貴様さえおらねば、我らはあれほどの屈辱を浴びずに済んだのだ!」


 鬼は渾身の力で、何度も一寸法師をけりつけた。すでに寿命を迎え死んでいた一寸法師の肉体は、鬼が蹴るたびに砂のように崩れていった。


 「一寸法師様!」


 楓の叫びを聞いて、鬼は動きを止めた。


 『早く……早く、打出の小槌を!』

 「無駄だ」


 楓が打出の小槌を振り上げた瞬間、鬼は鋭い視線で楓をにらみつけた。それだけで十分だった。楓は鬼の力に包まれ、金縛りになった。


 「あ……か……」

 「せっかくの機会がふいになったな」


 鬼は愉快そうに笑い、楓の胸ぐらをつかんで持ち上げた。


 「再び礼を言うぞ、小娘。お前のおかげで打出の小槌を取り戻せた上、一寸法師にとどめを刺すことができたのだからな!」

 『その子を離せ!』

 「心配するな一寸法師。この小娘は殺さぬ」


 鬼は楓の目をのぞき込み、ぞっとするような笑みを浮かべた。


 「殺す程度で我が恨みは晴れぬ。小娘、お前には私の子を産んでもらうぞ。千年間、お前の一族が戦い続けてきた鬼の子をな! 光栄に思え!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ