擬人化
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私が天幕に入ると、そこにはステラ他、将軍級や、貴族級等、位階の高いオーク達が立ち並んでいた。
彼等は黒南風の群れで中心的な役割を持つオーク達であり、状況と今後の方針確認の為に集まらせたのだ。
それに加えて自警団長と村長。そしてココの村の代表であるノクトの姿もある。
忘れた人の為に補足しておくが、彼はココの村の代表で、人質を取られて私に襲いかかって来たゴブリンだ。
彼が家族と再会した時は、それはもう大号泣だった。まぁ、内心死んだと思っていた家族が生きていたのだ。無理からぬことだろう。
そして彼は深い感謝を私に述べ、忠誠を誓ってくれた。
今は農耕地の開拓を指揮する立場に付けているが、中々の手腕を持っている様だ。
そしてもう一人。
「オッス、師匠」
そう私に話し掛けて来たのは、一匹の雄のゴブリン。
しかしその姿は並のゴブリンとは懸け離れており、180㎝を超えるであろう身長と、無駄の無い筋肉が見て取れる。
彼はゴブリンの少年。もとい、進化してユニークネームドとなった、“ゴブリン・ハイエリート”の“アッシュ”だ。
アッシュはあの戦いの後、その勇気を認められ、武神タケミナカタから名を授かり、進化した。
そのステータス上昇率は驚異的で、今や我々からも一目置かれている程だ。
アッシュは間違いなくオーク達の戦いでの殊勲賞だ。妹たちも勿論そうだが、彼が居なければ勝つ事が出来たか分からない。
まぁ、正直ダシに使った様なものなのだが、謝罪も兼ねて彼に褒美を約束すると、彼は躊躇なくこう言ったのだ。
「……俺を強くしてくれ」
と。
それ以降、私と彼は師弟関係となり、彼は私の事を師匠と呼んでいる。
「……お前少しは場を考えろよ。トカゲも困ってんだろ」
「……」
そう言ってアッシュの軽口を嗜めるジャスティスだったが、アッシュは黙ってジャスティスを睨み付けるだけだった。
この二人は何故か仲が悪い。正確には、アッシュが一方的にジャスティスを嫌っているだけなのだが、理由を聞いても中々教えてくれない。
ジャスティスにも聞いてみたが、心当たりが無いらしく、少々手を焼いている。
気のせいかもしれないが、ステラとジャスティスが話をしている所を見てから、更に悪化した気がする。
……。
……まさか……!?
いや、あり得る……!自警団長が言っていたが、オークとゴブリンとエルフは近縁種の関係にあるらしいし、寧ろこれしか無い……!
──アッシュはステラに惚れているのだ……!!
フフフ、なんと言う事だ。それなら確かに納得がいく。
ジャスティスとステラは、現在は共に私の副官という事になっている。
まぁ、正確にそこまで厳密な上下関係は無いのだが、役割としてはそうなのだ。
当然、彼等が会話する機会も多く、それをアッシュが妬いているのだろう。
まぁ、ビーバーのジャスティスがオークのステラとどうこうなる訳も無いのだが。
私が自身の灰色の脳細胞に驚嘆していると、ステラがこちらに来た。
「陛下、みな揃いました」
「……うむ」
私はステラに促されて椅子に座る。
するとその様子を見てから全員が椅子に座った。
私はそれを一瞥するとこう思った。
──正直言って……悪くない♪
良いんじゃない?なんかこう、王様感出てるんじゃない?
私は思わずニヤニヤしてしまう。やっぱ人の上に立つのは気持ちが良い♪
私のニヤケ面を見てオーク達が若干怯えてる気もするが、ジャスティス達は呆れ顔だ。
仕方ないじゃない。出世欲強いんだもの。
因みに私が椅子に座れたのは、私が進化して新たなスキルを獲得したからだ。
私はステータスを開く。
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ステータス
種族:リザードマン・ダークメタルキング(仮)
種族概要:リザードマンの最上位種の一つ。物理ステータスが極めて高く、手先が器用。……に擬人化している。
スキル:ユニークスキル:“継承LV32”、“支配LV22”
:オリジンスキル:“真実の絆LV25”
:EXスキル:“コカトリスの魔眼LV31”、“異次元胃袋LV22”、“王の器LV38”、“鋼龍の因子LV68”、“魔眼殺しLV48”
:ノーマルスキル:“暗視LV45”、“しっぽ切りSPLV59”、“強化嗅覚LV45”、“金剛硬皮LV74”、“超毒耐性LV85”、“高位再生能力LV28”、“強化魔法適正LV18”、“雷撃魔法適正LV22”、“尾技適正SP LV58”、“脚技適正SP LV61”、“視線察知LV128”、“擬人化LV20”
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かなり強化されている。まぁ、幾つか外れたスキルもあるが、進化した事でスキルコストの上限も上がったらしく、不備は無いスキル構成に仕上がったと思う。
そして私が椅子に座れたのは、ノーマルスキルである“擬人化”の影響だ。
今の私の本来の種族だと、大き過ぎて椅子に座る等不可能なのだが、このスキルを発動させるとこうしてリザードマンの姿に変身出来る。
本来の姿と比べると格段に弱くなってしまうのだが、必要な食料が減ったり、場所を取らなかったりとメリットも大きく、私は殆どこの姿で過ごすようになっていた。
初めてこの“擬人化”を確認した時は、“人間の姿に戻るかも”、と思ったのだが、結果はリザードマンだった。
要は人型種族に化けるスキルの様で、人間に化けるスキルでは無い様だ。
因みに姉さんも“擬人化”を習得しており、基本的にその姿で生活している。
擬人化した姿は、“昆虫人”と呼ばれる種族で、かなり人間に近い。
唯一の違いと言えば触覚があるくらいで、ほぼ人間の姿だ。予想に漏れず、美少女。
黒髪のユルフワロングで、メリハリのあるボディライン。そして何故か医師の様な白衣を着ている。本人にも白衣が何処から来たのかはサッパリ分からないらしい。
ただ、人間に性的魅力を感じなくなった私からすると、元の姉さんの方が見慣れてる分良かった気がする。
全員が椅子に座ったのを確認すると、ステラがそれを一瞥し、口を開いた。
「……それではこれより軍議を開始致します」
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