進化しとるやん!!
さて、引っ越すとは言ったものの、どうすれば良いのやら……。
『グワッガァ……』
私はため息を吐きながら、ゆっくりと森の中を歩く。
この周囲はまだ私がダークネスアイズレッドテイルブラックアガマだった頃から歩き回っていた縄張りであり、比較的安全は確保出来ている。
私は取り敢えずの巣の候補地探しと、自分の現状を確かめる為にここに来ていた。
“彼を知り己を知らば百戦殆うからず”
自身の現状を理解する事はサバイバルでは最重要と言えるのだ。
しかし、我々の前に山積する問題の解決は未だ遠い。引っ越しを決めたは良いが今のところ候補地は無く、取り敢えずジャスティスをリーダーとして比較的安全が確保出来てる範囲で餌集めに出させているが、我々の腹を満たし続けるにはもっと広範囲で餌を集める必要があり、このままでは遠からずして供給不足に陥る事になるだろう。
『グワッガァ……』
私は何度目かになるため息を吐く。
本当に参った。取り敢えず私は昔読んだ人外転生物の携帯小説の事を思い出してみる。丁度自分の状況に良く似ているからだ。
しかし、それ等に急激なヒエラルキーの変化への対応は詳しく書いてなかった。
もう少し詳しく書いておいてくれと思ったりもするが、そこは創作物に求める物でも無いのかも知れない。
『グワッガァ……』
まぁ、これ以上愚痴をこぼしても仕方あるまい。
私は気持ちを切り替え、ステータスを表示する。
『グワッガ!(ステータス)』
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ステータス
種族:“ダークネスアイズ・ブラックスケイル・アーマーリザード・ドラクル”
種族概要:リザード系統の希少種族。同系統の中でも竜の因子を強く受け継ぐ種族で、極めて個体数が少ない。防御・攻撃共に物理干渉に長じている。
スキル:ユニークスキル:“継承LV3”
:オリジンスキル:“真実の絆LV3”
:EXスキル:“コカトリスの魔眼LV5”、“異次元胃袋LV2”、“王の器LV1”
:ノーマルスキル:“暗視LV8”、“しっぽ切りLV15”、“強化嗅覚LV9”、“金剛硬皮LV1”、“隠密LV2”、“猛毒耐性LV15”、“軽微再生能力LV8”、“強化魔法適正LV4”、“雷撃魔法耐性LV8”、“雷撃魔法適正LV2”、“尾技適正LV8”
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ふむ、なかなかのスキル構成だと思う。
本来なら適正系は使える魔法やスキルも表示してくれたら便利なのだが、鑑定スキルの無い私では不可能のようだ。
ラインナップ的には目新しい物はほぼ無いが、進化して新たに手に入れたスキルが二つほどある。
先ずは“金剛硬皮”だ。
これは“硬い外皮”の上位互換スキルで、常時DF値(物理防御力)に補正がかかる効果と、瞬間的にDF値を跳ね上げる“ダイヤモンドスキン”の二つの効果がある。
実際にどれくらいの効果があるのか試してみたい気もするが、まだ野生での自分達の立ち位置が不明瞭な今、わざわざダメージを受ける可能性が有る実験はやるべきでは無いだろう。
次にEXスキルの“王の器”。
どういう取得条件があるのかははっきりとしないが、恐らくは私が王を宣言し、配下が出来た事に起因するスキルなのだろう。
効果は結構シンプルで、配下への強化と配下からの忠誠度を高める効果が主となる。
単純ではあるが有用度は極めて高く、この先に於いて重要な役割を果たして行く事になるだろう。
実はこの他にも、“魔眼を進化させますか?”と天の声に言われたのだが、検討の結果拒否した。
天の声が提示した進化先は二つ。
一つは“バジリスクの魔眼”と呼ばれる物で、効果は“停止”だった。
恐らくあのヘビが持っていた物と全く同種であると推測されるが、正直これはコカトリスの魔眼の下位互換みたいな使い道しか浮かばないので論外と言えた。
正直、何故これが進化先と呼ばれるのかが分からないレベルだ。
しかし、もう一つはかなり悩んだ。
“バロールの魔眼”と呼ばれるもので、光の反射を操作するというかなり強力な効果だった。
使い方次第ではかなりの可能性を秘める魔眼だったのだが、コカトリスの魔眼の“遅延”の効果もかなり応用の幅が広い為、止む無く諦めた。本当に惜しかったが、まぁ、どちらを選んでも相応の後悔は残ったと思う。
私のステータスに関してはこんな物だろう。
次は妹達のステータスでも見たい所なのだが、正直変わり映えしない事が分かっている以上、時間の無駄になるのでやめておく。
ユニークとEXを除いた全スキルが私と同じ構成と思って貰えれば良い。文字数稼ぎは好みでは無いのだ。
現状の整理という意味であれば、本来ならジャスティスやヤスデ姉さん達のステータスも見たいのだが、実はそれは出来なかったりする。
なんと、私と妹達が持っている“真実の絆”と、二人が持っている“真実の絆”は、別のスキルだったのだ。
ジャスティスとヤス姉さんに伝染した“真実の絆”はスキルカテゴリーが“オリジン”ではなく“EX”に変化していた。
オリジンスキルである“真実の絆”は、私と二人の妹達にしか発現せず、それ以降の伝染した二人の“真実の絆”は“EX”。
そして、ジャスティスから伝染したであろう配下達の“真実の絆”はノーマルカテゴリーに分類され、カテゴリー毎に効果は下降していたのだ。
オリジンカテゴリーの場合は、ノーマルスキルの全てが共有されるが、EXカテゴリーの場合は所持しているノーマルスキルの内、3つまでしか共有されない。
そしてノーマルに至っては、1つだけと、オリジンとの性能差は歴然としたものだった。
まぁ、それでも副次効果である意思の疎通の補助や、スキルレベルが上がった事で獲得出来た遠距離会話など、高い凡庸性と利便性を誇るのだが、ステータスの確認が出来るのはオリジンカテゴリーの“真実の絆”を持つ者同士だけの様だ。
因みにジャスティスがあの時生きていたのは、“真実の絆”が伝染し、軽微再生能力が共有されたからの様だ。
確かに言われてみれば、あの時、気が付けば私とジャスティスは普通に会話していた事を思い出す。
その時点で真実の絆が伝染していたのなら、回復したのも納得できる。
『グワッガ』
私がそんな事を考えながら歩いていると、あのヘビとの死闘があった河原へと着いた。
つい一昨日の話なのに、あの時とは全く違う光景に見える。
私は改めて自分の体へと視線を流す。
黒く艶のある鱗。力強い四肢。そして、長く強靭な尾は、まるで一本の剣の様な存在感を放つ。
体長で言えば2mを超えているだろう。まぁ、胴体に対して尻尾がかなり長いから、数字で見る印象よりは小さいだろうが、それでもかなり大きくなった。
今ならあのヘビを正面から容易く倒す事が出来るだろう。
『グワッガ!』
私は試しにレイジングテイルを河原に転がる石にぶつけてみる。すると、なんの抵抗も無い様に粉々に砕け散った。中々に強くなっている様だ。
次に私は河原を駆け足で移動してみる。しかし、今度は逆に動き辛さを感じた。
恐らくこれは進化して体が大きくなった事でSTR値(物理干渉力)が適正に近付いた結果だろう。
例えて言えば、体長20㎝にしては高かったSTR値は、体長2mになれば平均的なSTR値とほぼ同じくらいと言う事だ。
まぁ、これは極端な例えで、進化した以上かなり強化されているのは間違い無いが。
しかし、これは注意が必要な事実だ。小さかった頃と同じような戦術は使えないと考える必要があるだろう。
私はその後も検証を続けた。
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すいません。前回のステータス表示時に、“尾技適正LV1”を書き忘れていました。
レイジングテイルやニードルテイルはこのスキルに起因しています。




