“またね”
ーーーーーーー
「……ここら辺で良いわ、トカゲ」
「そうだな」
私はそう言ってレナ達に向き直る。
私の視線の先に居るのは旅支度をしたレナとアテライード。
そしてその横にはナーロに手配させた獣車が有る。
この先は随分長旅になるだろうが、私が心配する必要は無いだろう。
……私の方が圧倒的に弱いし。うん。
──あれから色々有った。
先ずはスロヴェーン戦の事後処理。
アバゴーラは最低限の都市機能を回復させた後、スロヴェーンの伝手を使って秘密裏に向こう側との協議を進めた。
無論、今回の戦役は連邦の勝利となる訳だが、表向きには今回の戦役は国王であるアイゼンが指揮したものでは無く、黒鎧のイスラとか言う幹部格の魔物が指揮していたという形で話をまとめる方針だ。
スロヴェーン側としても、王であるアイゼンがあっさりと殺されたと公表するのは具合が悪いらしく、当面の間は秘密にし、折を見て病没した事にして処理するつもりらしい。
まぁ、かなりの人数に見られていたから噂自体は相当広がってしまうだろうが、どの道政府の公式見解はこれで行く事になる。
そして戦後賠償だが、残念ながらこれは相当割安になる予定だ。
人間の大陸に最も近いスロヴェーンをこれ以上に消耗させるのは避けるべきだし、恩を売る事でこの先の安定に繋げたいと言う考えらしい。
ここら辺の事は基本的にナーロとアバゴーラに任せている。私では情報が少な過ぎて手落ちをする可能性が有るし、そこまで時間が取れない。それにプロである彼等の方が余程上手く事を運べるだろう。
そしてそのナーロだが、なんと今や暫定的な連邦議長だ。
今回の戦役に於いて、ナーロは一早くフィウーメの異変に気付き、凄腕の冒険者を雇い入れて対処させる事で事態を最短で収束させた。
まぁ、実際の所は偶然が重なってそうなっただけなのだが、対外的にはナーロが単独で動いてフィウーメを救った形に見える。
つまりナーロは今回の戦役の最大の功労者であり、そして連邦に於いてアバゴーラの次に強い影響力を持つバーロ・ウッシュの息子。
権力も功績もコネクションも血統も全て完璧で有り、アバゴーラ失墜後に連邦議長を名乗れるのはナーロを置いて他には浮かばない。評議員も非公式ながら満場一致でナーロの就任を認めている。
未だに“暫定的”な理由は評議会を開けていないからと言う理由だけで、正式な任命は評議会の日程が決まり次第と言う事になる。
ナーロの連邦議長就任は連邦史上最年少の記録であり、恐らくこの先永遠に塗り替えられる事は無いだろう。
そして次にアバゴーラだが、奴は秘書官の失態の責任を取り、連邦議長及びフィウーメ都市長の職位から正式に退いている。
しかしこれまでの功績も考慮され、ナーロの相談役としての職位が与えられた。
反アバゴーラ派の評議員の中にはこれに強く反対する者も居たが、ナーロの父親であるバーロ・ウッシュが上手く話をまとめたらしい。
アバゴーラ派閥の評議員達もそれが落とし所として納得した様だ。
龍王国としては今回の事件を利用して連邦を崩したかったのだろうが、結果としては政治中枢にアバゴーラが相談役と言う形で残る事になり、そしてナーロと言う新たな英雄も出現した事で連邦はなんとか結束を維持する事が出来た。
また別の形で干渉して来るだろうが、向こうも当面は今回の様な大きな動きは起こせないだろう。
ざっとだが、これが戦後処理の流れだ。
そして私達冒険者チーム“黒鉄”だが、今回の功績を持って史上最短記録でSランクの冒険者に到達した。
“史上最短でSランク”……!!
厨ニ病をくすぐるフレーズ。悪くない。実に悪くない……!!
表面的には「まいったなぁ、目立ちたくないのに……」とか言って謙虚を気取りながらも、内心浮かれまくっていた私は率先してチヤホヤされに行った。
街を歩けば声をかけられまくり、権力者からはパーティの招待を受けまくり、何故か蜥蜴人の雌は目線が合うだけで失神しまくり、嫉妬と逆恨みに狂った雄の蜥蜴人に襲われまくり、返り討ちにして全員ボコりまくり、それを見た憲兵に事情を説明しまくりだ。
……お陰で蜥蜴人界隈でビックリするくらい評判が下がった。
レナにも、「目立ちたくないとか言ってる癖に自制もしないし、少し考えれば目立つって分かる様な事も率先してやってるし、頭どうかしてるの?正直言ってストレートに目立ちたい、褒めて欲しいって言ってる方が余程まともに見えるわ。気持ち悪い」と、言われた。
……なんかおかしくない?昔読んでた小説とは全然反応が違うんだけど。
そして私以外のメンバーもチヤホヤされまくっていたのだが、その中でも私が一番予想外だったのが──
「アッシュくん!次会ったら今度こそデートしようね!」
「アテライード、わ、悪いけど俺は惚れた女が居るから……」
「分かってるって!でもデートくらい良いじゃん?別にそれで付き合うって訳じゃないし!」
「い、いやそれでもちょっと……」
──アッシュのモテモテ具合である。
アッシュはバルドゥークとの戦いの後、“ハイオーガーレイス”と言う亜人形の魔物に進化した。
ハイオーガーレイスはオーガの近縁種なのだが、オーガよりも均整の取れたステータスを持つのが特徴だ。
能力的にはゴブリンの完全上位互換となる訳だが、なんと見た目がほぼ完全に人間みたいなのだ。
整いつつもヤンチャそうな雰囲気を兼ね備えた顔。
無駄な肉の無い引き締まった肉体。
総じて言えば、今のアッシュは角が生えてるだけで唯のイケメンである。
そしてそんな進化したアッシュを見た人型の魔物達は、ゴブリンだった頃を忘れたかの様に手のひらを返して言い寄り出したのだ。
エルフやダークエルフ、名前は知らないが兎の耳が付いた人間みたいな魔物。その他もろもろ人間っぽい見た目の魔物、ついでにラズベリルとアテライード。どいつもこいつもアッシュに好き好き言いまくっていた。
アッシュ自身はどうやらゴブリンとかオーク、トロールの方が好みの様だが、そっちの連中からの評判は変わらずで、活躍した分若干言い寄られる機会が増えた程度。
まぁ、結局アッシュには心に決めている相手が居るとかで全員振った訳だが、何故かアッシュは「一途な所も素敵!」「私待ってる!」とか言われて評判が上がる一方だった。
私みたいに「手当たり次第雌の蜥蜴人を昇天させてる」とか「カップルを引き裂いて男をボコボコにして回ってる」とか不名誉な事は言われていない。
だけどアッシュはボコボコにした。
そして流れで加入させたアニベルも大変な状況だ。
アニベルは強力な魔龍に跨る竜騎兵だと住民達に思われている。
しかもその魔龍が敵の将を一撃で仕留めたとあって、フィウーメでは“実はアニベルこそが黒鉄最強の冒険者なのでは?”とまことしやかに言われている。
一応、護衛と強さに説得力を持たせる為にグリフォン親子をアニベルの騎獣として側に付かせているのだが、それを見た調教師のクラスを持った他の冒険者が「高位の魔獣を3頭同時にテイムするなんて信じられない……!あんな事をしたら脳の神経が負荷に耐えられなくて焼き切れてしまうのに……!!」とか言い出してなんか凄いみたいな扱いに拍車がかかってしまった。
何か設定だけで凄さを描写しようとするけど、実際の人物像は大した人物には見えない小物主人公みたいな状況なのだ。
とは言え、実際のところアニベル自身には何の能力も無い。
本人はこの嘘がいつかバレるのではないかと非常にビクビクしている。
つまり、アニベルはビクビクで、アッシュはボコボコだ。
バドーは全治三ヶ月で、今もまだベットで寝ている。
必要ならばポーションをやろうと思っていたのだが、ライラに「馬鹿な真似をした罰だから」と言われてそのままにしておいた。
“命懸けでライラを助けようとしたのに可哀想だ”とも思ったのだが、ライラは細君と一緒に甲斐甲斐しくバドーの身の周りの世話をしており、バドーはなんだか嬉しそうだった。
あの言葉はきっと彼女なりの照れ隠しで、この状況は恩返しなのだろう。
因みにアッシュがバドーから借りたデカログスは、そのままアッシュが貰った。
最初はアッシュに対して凄まじい勢いで返せと言っていたのだが、私とアッシュが壊れたラジオの様に「「バドーさん!デカログスをくれて、どうもありがとう!」」と繰り返し言っていると語気が弱まりだし、トドメに「分かった。そこまで言うなら返すけど、娘の命の恩人に対する態度がそれなんだな?ふーん。別に良いけど、お前にとってライラの命ってたかが剣一本分も無いんだな。いやぁ、知らなかった。なぁ、アッシュ。私達なら剣一本でライラが助けれるなら喜んで差し出すけど、バドーは違うんだってさ」と言ったら素直にくれた。
その後、「さっきまで散々剣返せって言ってたよな。この話を忘れさせる為なら……お前はいくら出せる?」と言ったら追加で金貨200枚と相当値が張りそうな魔術道具をくれた。
わーいわーい!
バルドゥークの鉄槌とバドーのデカログス、そして貰った魔術道具。アッシュのユニークスキルとはかなりの良相性だ。
これでアッシュはもっと強くなれるだろう。
まぁ、そんなこんなで約一ヶ月、目まぐるしい日々を過ごしたのだ。
そして──
「……これでお別れね」
「ああ」
私はレナの言葉にそう返す。
フィウーメの騒乱はまだ収まっていないが、街の権力者達の大半は支配で押さえる事が出来た。
そしてスロヴェーンとの交渉も順調そのもので、私達が絶対に必要な場面は当面は無い。
レナ達もそうだ。
アテライードは救出出来たし、レグナートが死んで御家騒動真っ只中の光輝龍が再びレナ達を襲う可能性も低い。
──これ以上、フィウーメに留まる理由は無いのだ。
私はレナ達の横に有る獣車を指差して続ける。
「その獣車に乗ればバトゥミまで連れて行ってくれる。そこからナーロの手配した外洋船で人間の大陸に渡れる筈だ。御者や手配した連中は全員私のスキルで支配しているから、裏切りや職務放棄の心配は無い。とは言え、ここは魔界だ。道中障害も有るだろうが……まぁ、そこは私が心配する必要が有るかどうかは少し微妙な気もする様なしない様な」
「私より弱いもんね。トカゲ」
「……多少は謙遜したらどうだ?」
「でも過ぎた謙遜は嫌味になるでしょ?」
「フッ。確かにな」
そう言って笑い合う私とレナ。
強者同士だからこそ通じ合う会話だ。私は大人だから弱いと言われてもへっちゃら。
「師匠、手がプルプルしてるぞ。結構効いてんじゃねぇか」
「直接言われると来るもんが有るんだよ!!私だって俺ツエーが良いんだよッッッ!!」
レナは私達の様子を見て軽く笑う。
「ふふふ……。まぁ、トカゲだったらもっと強くなるんじゃない?まだまだ成長期なんだろうし」
「当然だ。次会う時はお前から逃げ切れるくらいには強くなっておく」
「ティラノ……あんたそれでも“逃げ切れる”くらいなのね。もう少し欲張れば良いのに。……でも。“成長期”って、ティラノってそんな若いの?落ち着いてるし良い歳かと思ってたんだけど。何歳?」
「見て分からないのか……いっちゃいでしゅ!!」
「はぁ!?100パーんな訳無いじゃん!!」
「アテライード、マジだぞ。師匠は多分マジで一歳ぐらいの筈だ」
「うそ!?え、マジ!?34歳くらいの落ち着きじゃん!!」
惜しい。前世もカウントしたらそんなもんだ。
私達はそのまま暫く言葉を交わした。
こんな風に笑い合うのは、これが最後かも知れない。
そう感じながら。
そしてひとしきり話が終わると、レナが私に右手を差し出した。
「……なんのつもりだ」
「見れば分かるでしょ?握手よ。最後くらいね」
「“魔物”と“神託者”がか?」
「違うわ。“私”と“トカゲ”がよ」
レナはそう言って笑う。まるで、友人に向ける様な笑顔で。
「……」
私は暫くその手を見た後、握る代わりに一振りのナイフを渡す。
「……何のつもり?」
「手切金だ」
「師匠……」「ティラノ……」
私の言葉にアッシュとアテライードがジト目で此方を見るが、私はそれを無視して続ける。
「……前にも言ったが、お前は甘過ぎる。そして、そのくせ利用価値が高い。私がお前の親より高位の貴族だったとしたら、それこそどんな風にでも利用する手を思い付く」
「……でしょうね。だから私も帰ったら死んだ事にするつもり。アティも公式には死んだ事にされてるし」
「それが良い。お前の双極夜天曼荼羅なら死体も再現出来るだろうし、上手く行けば安寧の暮らしが送れるだろう。……だが、その嘘を見抜いたり、お前達の正体に気付く者も出て来るかも知らない。そうすればお前の力ではどうしようもない事態に陥る事もあるだろう。その時にそれを使え」
「使うとどうなるの?」
私はレナの目を真っ直ぐに見てこう答える。
「それがどんな状況でも、私が必ずお前を助ける」
「……!」
私の言葉にレナが顔を伏せる。
恐らく自分より弱い私が“助ける”と言った事に苛立ったのか、若しくは滑稽に聞こえたのだろう。
アテライードもニヤけた顔で此方を見ている。腹が立つが、まだ話は終わっていない。
「……お前より弱い私が“助ける”と言ったのは、単純な“力”の話では無い。“権力”と言う化け物からお前を守ると言う意味だ。私はお前達と違って人間社会の権力構造の中には居ない。何のしがらみも存在しないんだ。だからこそお前にはとれない手段が平気でとれる。そしてそれは、お前にとって必ず力になる筈だ」
「……」
私の言葉に暫く俯いたままのレナ。
そして、機嫌が治らないのかそのまま私に問いかける。
「……それが、私への“借り”の返し方って訳ね。都市一つ救ったお礼にしては安くないかしら?」
「それはお前が決める事だ。自分にとって都市一つの存続より価値がある事だと判断した時に使え。“支配”もあるし、悪くない条件の筈だ。活かすも殺ろすもお前次第だがな」
「……そうね。貴方は馬鹿じゃないし、上手く使うわ。だけど、もう一つ条件が有る」
「条件?」
「ええ」
レナはそう言うと、顔を上げて再び右手を差し出してきた。
「……なんのつもりだ?」
「見たら分かるでしょ?」
「分かるが……。思いの外しつこいな。それが条件か」
「ええ。嫌がってるみたいだし、逆にもっとしたくなったのよ」
「……良い性格をしているな……」
私は溜息を一つ吐くと、レナの手を握る。
その手は思いの外小さく、そして温かかった。
「……またね、トカゲ」
「……ああ。またな」
ーーーーーーー
「はぁ……。結局アッシュ君と上手く行かなかったなぁ〜。マジでタイプなんだけど。イケメンだし、良い体してるし、性格良いし、なんかウブで可愛いし」
「……アティ、またそれ?確かに整った顔立ちだけど、アッシュは元ゴブリンでオーガなのよ?それでも良いの?」
「何言ってんのよ!イケメンならそれで良いに決まってるでしょ?イケメン最高!!」
「……はぁ。……だったらトーマとかはどうなの?相当な“イケメン”でしょ?」
「ちょ、冗談でも止めてよ!!マジ無い!!アイツは中身がキモ過ぎて本当無理!!」
「ふふ。なんだ。やっぱりイケメンでも駄目なんじゃない。……でも不思議よね。何であんなに気持ち悪く感じるのかしら。一応、見た目だけはかっこいいのに……」
「あ〜……。……なんて言うか、“自分がカッコいいと思う理想像”がズレてるからじゃない?人とズレまくってる感性を持ってるから、自分が目指す理想像そのものがキモいのよ。だから本人がどれだけカッコ良くなったつもりでも、周囲から見るとキモい。なまじ評価と実力があるせいでその歪さが強調されてるんだと思う」
「要約すると?」
「“キモい奴は兎に角キモい”」
「身も蓋もないわね……」
「ははは!良いじゃん!どうせもう会う事も無いだろうしさ。……まぁ、私のイケメン好きは別に今に始まった事じゃないから置いといて、私としてはレナの方が意外だったわよ?」
「……私?」
「うん。まぁ、確かにレナはトーマのせいで男にトラウマが有るし、システィアナのババァのせいで女にもトラウマが有るから普通の恋愛は難しいと思ってたけど、まさかアレに行くとは思わなかったわ……」
「アレ?」
「うん。確かに出来る男だし、ノリも良いし、種族的にはイケメンらしいけど、流石に爬虫類は無いと思ってたもの」
「……ちょっと待って。何の話をしてるの?」
「勿論レナの恋の話よ。ト・カ・ゲ!好きなんでしょ?」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?私が!?何を言ってるの!?そんな訳無いじゃない!!」
「だけどティラノから“お前を必ず助ける”って言われた時、相当ときめいてたじゃん。横から見てても分かったわよ?」
「そ、それは誰かに“助けてやる”なんて言われた事が無かったから驚いただけよ!!」
「だけど、さっきからずっと貰ったナイフを見てニヤニヤしてるし、ティラノが使い方を書いた紙も何度も読み返してるじゃない」
「それはいざと言う時に使えないと困るからしっかり見てるだけで──」
「そんな事しなくてもレナなら一度読んだら暗記出来てるでしょ?それに、結局ニヤニヤしてた理由の説明にはなってないわよ?」
「そ、それはプレゼントを貰ったのが初めてだったから──」
「流石にそれは無いでしょ。レナも貴族だし、神託者になってから山ほど贈り物貰ってるじゃん。だけどそんな地味なナイフを見てニヤニヤしてる。つまり、それをくれた相手の事を意識してるって事よ」
「ち、違う!!」
「あぁ……。まさか私の親友が種の隔たりを超えた恋に落ちるなんて……。私はどう応援したら良いのかしら……」
「違うってばッッッ!!」
ーーーーーーー
「師匠……。師匠って人間でもイケる口だったんだな」
「はぁ?何を言っている?」
「いや、レナに贈り物してたし、“俺がお前を守る”みたいな事言ってたじゃん。アレって金貨三枚で買ったヤツだろ?ドワーフのおっさんから効果を聞き出して、妹達にあげるって言って喜んでたのに」
「仕方ないだろう。それぐらいの恩義は有るんだからな。それに、お前の目にどう写ったかは知らんが、私にもレナにもそんなつもりは無いぞ。そもそも爬虫類と哺乳類の時点であり得んだろう」
「そうかなぁ……。でも、師匠にその気が無くてもレナがその気になってたらどうすんだ?」
「あり得んな。だが、もしそうなったら私はレナにこう言うつもりだ」
「なんて?」
「許してぇ……!許してクレメンス……!と……」
ーーーーーーー
いつもお世話になっております!
作者の千葉丸才です!
と、言う訳でやっとこさ第二章が完結しました!
この間、資格の勉強始めたり、資格試験に落ちたり、部署移動で仕事の内容が変わったり、異世界チートスレイヤーが炎上して連載終わったり、チートスレイヤーのルイ=クロフォードがうちのトーマ・スタウ・ローライトにそっくり過ぎて吹いたりと色々有りました!
第二章はサクサク終わる予定だったのですが、思ったよりも長引いてしまいました。
まぁ、元々勢いで書くタイプなので仕方ないと言えば仕方ないのですが、まさかここまで長引くとは……。
さて、次はいよいよ第三章です。
私としては次の第三章が本作で一番面白いものになると思っています。
“二つ名持ちユニーク”は全員出ますし、元カノとの決着も付きます!
まだまだ続きますので、気長にお付き合いお願いします!
追伸、ここまで読んで下さった方で、まだポイント評価を下さっていない方は、宜しければ評価をお願いします!
ーーーーーーー
──石造の部屋に、一つの玉座が有る。
そこに座るのは、一匹の獣。
金色の体毛に覆われた巨躯。
太く、逞しい腕。
鋭く、そして叡智を感じさせる眼光。
彼は、誰も居ない筈のその部屋で何者かに声を掛ける。
「……ご苦労じゃった。神託者は居らんよぅにのぉたか?」
『はい。グレンピースの港から外洋船に乗り込みました。恐らくは人間共の大陸に渡ったと思われます』
「……なら、もう待つ必要は無ぅなったのぅ。……幹部共を集めろ。次は俺が動く」
『かしこまりました。我が王、スグリーヴァ様』
ーーーーーーー




