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“薄皮一枚”

ーーーーーーー





「ライラ!!受け取れッッ!!」


「!?」


 アッシュはライラに向かって陶器の瓶を投げ渡す。


「これは!?」


「ポーションだ!飛びっきりのな!ナーロに使ってやれ!それが終わったらさっさと逃げろ!!」


「分かった!ありがとう!!」


 ライラは即座にナーロに使い、そして二人で逃げて行く。


 しかしバルドゥークは二人を追わずに口角を上げ、アッシュを見つめた。


 アッシュは口を開く。


「……もう少し怒ると思ってたんだがな……」


「別に……?どの道テメェも……奴等も生かすつもりはねぇ……。なら……()()()()は後からの方が……楽しめるだろう……?」


「ケッ!俺はメインディッシュってか!?」


「いや……テメェは()()……トカゲ野郎が来るまでのなッッ!!」


「!?」


 バルドゥークが鉄槌を跳ね上げ、柄の先がアッシュの顎へと迫る。


 アッシュは上体を逸らしてそれを躱すが、バルドゥークは振りかぶった鉄槌をそのまま振り下ろす。



「ガァァァァッッ!!」



 ──ドゴォッ!!──



 轟音と共に砕け散る石畳。


 アッシュは寸前で後方に下がりそれを躱すが、バルドゥークはそのまま前進し、地面をえぐりながら鉄槌を振り上げた。


 このまま行けば鉄槌は直撃するだろう。


 しかしアッシュはスキルを発動させてそれを防ぐ。


「“大楯ビッグシールド”!!」


 大楯ビッグシールドは装備した盾のDF値に補正をかけ、その上で防御範囲を拡張するスキルだ。


 このスキルはアッシュが装備している様な小盾バックラーでも発動が可能で、そしてスキルインターバルも短い。


 使い勝手の良いスキルで、アッシュも得意とするスキルの一つだった。


 ()──




 ──ドゴォッ!!──




「ぐっ!?」


 アッシュは強烈な衝撃に表情を歪める。


 DF値に補正が掛かるとは言え、それを上回る破壊力が有れば当然ダメージを受ける。


 そして、バルドゥークの一撃は当然の如くそれを満たしていたのだ。


 弾かれた反動で大きくバルドゥークから離れるアッシュ。


 どうにか態勢を立て直すが、その隙の無さから再び攻め込む事が出来ない。


 バルドゥークはそれを見て笑う。


「クハハ……威勢が良いのは……最初だけか?」


「……はっ!俺は()()()なんだよ!!テメェこそそんなデブった身体で飛ばして大丈夫か!?」


「不味い……かもなぁ?……まぁ……テメェが死んでから休むかッッ!!」


「!?」


 バルドゥークは鉄槌を水平に持ち変えると、一気にアッシュへと近付いて来る。


 そして横一文字を鉄槌を振るった。


 唸る風切り音。


 しかしその踏み込みは浅く、軽く背後に下がるだけでアッシュは躱す。


 “めたッッ!!”


 アッシュはそう思った。


 バルドゥークは巨漢だが、それでもあの大型の鉄槌を振るえば否応無しに重心は狂う。


 実際にバルドゥークは鉄槌の勢いに引き摺られ、半身をひるがえしていた。


 アッシュはその隙を逃すまいと前に踏み込み、剣を上段に構えて振り下ろそうとする。


 ()──




 ──ゴオッッ!!──




「グッッ!?」


 突然の衝撃と痛みに、アッシュは大きく吹き飛ばされる。


 訳も分からず転がりながら何とか態勢を立て直すが、バルドゥークの方向を見て思わず目を見開く。


 既に上段に鉄槌を構えたバルドゥークが迫って来ていたのだ。


「〜〜〜ッッソッ!!」


 必死に後ろへと逃げるアッシュ。


 どうにか鉄槌は躱せたが、しかし距離を取る為に走り回る羽目になった。


 何とか距離を取れたアッシュだが、バルドゥークはそれを余裕の表情で見つめ、そして笑った。


「クックック……今のは……()()鉄槌コイツを振ったのは……誘いと……勢いを付ける為だ。……随分と……単純だな……?」


「う、うるせぇぇぇッッ!!」


「クックック……」


 感情的になるアッシュに対して余裕を見せるバルドゥーク。


 そして、アッシュはそんなバルドゥークを見て思い知った。




 “コイツ……()()()……!!”




 ──そう、Sランク冒険者の実力を。



 バルドゥークは鉄槌を水平に振り、回転。そしてそのまま尻尾をアッシュに打ち付けたのだ。

 しかも意図的に間合いを浅くする事でアッシュ自身に踏み込ませ、尻尾の間合いに誘っている。


 初手の攻防にしてもそうだ。鍔迫り合いから柄での攻撃に展開し、そしてそのまま上段からの振り下ろし、距離を開けさせ、掬い上げて追撃。


 攻撃の一つ一つが次に繋がる様に計算されており、そしてその全てが流麗だった。


 そう、バルドゥークは唯のパワーファイターでは無い。


 “技”と“力”を両立する、“超一流の戦士”だったのだ。


 バルドゥークは鉄槌を上段に構えると、口角を上げた。


「クックック……。だが……思ったよりは……お前もやるな……。“覚醒解放”。……そして、俺の攻撃を喰らっても……まだ生きてる……。……トカゲ野郎が来るまで……退屈しなくて済みそうだ……」


「ケッ!!師匠が来る頃にはテメェは死んでんだよ!!」


 アッシュはそう言って駆け出しながら、トカゲとの修行を思い出していた。





ーーーーーーー

 




「……微妙な覚醒解放だな……」


 アッシュは師匠の言葉に思わず項垂うなだれた。


 オークでの一件で褒美を与えると言われたアッシュは、トカゲに弟子入りを志願した。


 トカゲは最初若干の難色を示していたが、アッシュはどうにか口説き落として弟子入りし、こうして特訓を受ける事になった。


 その流れでアッシュは自分の覚醒解放について助言を求めたのだが、効果を聞いたトカゲからは予想通りの答えが出たのだ。


「……覚醒解放は我々魔物の切り札だ。だが、スキルと違って一人一つしか手に入らないし、その一つすら手に入らない場合が多い。使える様になったのは十分に当たりと言えるが……その効果は私が知る限り強い方では無いな」


「……やっぱそうか……」


 アッシュの“遅参英雄エルレガーデン”は発動時に最大魔力量の半分を使用する事と、()()()()()()の付いたものだった。


 条件を満たせば高い効果を持つが、その二つの条件がネックとなり、今一つ強いとは思えない。


「……まぁ、覚醒解放はあくまでも武器の一つでしかないし、無理に使う必要も無い。実際、私は覚醒解放は使えないが十分にやれてるしな」


「そりゃ師匠は“継承”なんてクソ便利なスキルが有るから言えるんだよ。何でもかんでも強いスキル集めりゃそりゃ負けねぇだろ」


 トカゲは“継承”と言う他者のステータスやスキルを奪える強力なスキルを持っている。

 それさえ有れば次々に強いスキルを集められるし、強くて当たり前だとアッシュは思っていたのだ。


 しかしトカゲは首を振った。


「……それがそうでもない」


「へ?」


「良い機会だ。特訓をする前に私がこれまでで学んだ事を幾つかお前に教えてやる」


 トカゲはそう言うと、羊皮紙とペンを取り出した。


「先ず、“何でもかんでもスキルを集めれば強くなる”って話だが、それは不可能だ」


「なんで?」


「“許容量”と“スキルコスト”というものが有るからだ。良いか?これを見ろ」


 そう言ってトカゲは羊皮紙に正方形を描いた。

 そしてそのままパズルの様にその正方形を細かく刻む線を引く。


「この正方形が“許容量”。文字通り個々の魔物が許容出来るスキルの上限だ。そしてこのパズルのピースの様な物がスキルに掛かる“スキルコスト”だ。これが許容量の範囲に収まらないとスキルは習得出来ない。見ての通り、今はこの正方形にキッチリと収まっているが、例えばこんな形のスキルを収めようとするとどうなる?」


 そう言ってトカゲは正円を描く。


「……えっと、普通に中身を取り除くしか無いんじゃねぇの?」


「そうだ。そして、このピースを嵌める為にはこれだけの範囲が必要になる」


 トカゲはそう言って正方形の中心から、先程描いた正円が入る様に指でなぞって見せた。


「……当然、この範囲にかかったスキルは取り外すしか無い。この端っこしか範囲内にかかっていない様なスキルも外す必要が有る。強いスキルになればなるほど、このスキルコストの形状は独自性を増し、他のスキルの習得を圧迫する。それに今回は分かりやすくする為に許容量を正方形で描いたが、実際のところはこの形状は個体によってかなり変動する。生来持ち合わせたスキルや自然習得出来るスキルはこの許容量の形状に合った形のスキルコストが設定されるが、それを強引に引き込む“継承”はその個体に合ったスキルコストの形状のまま引き込むからどうしても無駄が多くなってしまう。まぁ、これは感覚的な話で、正確に言語化するのは難しいがな」


「……な、なるほどなぁ。でも、それでも強いスキルを選んで入れる事は出来るんだろ?小さなスキルは切れば良いんじゃねぇか?」


「極論で言えばそうだ。だが、実際の戦闘で小技が必要な場面はかなり多いし、生活の為に切れないスキルもある。例えば毒耐性系のスキルとかだな。お前もこの森で暮らしてるんだからそれは分かるだろう?」


「……まぁ、確かに無けりゃ長生き出来ないな。この森じゃそこらの雑草にだって毒が有るし、毒を使う魔物も山程居る。普通に食ってる食材だって、耐性が無けりゃ死ぬ様なもんも有るし」


「そういう事だ。スキルとは戦闘だけに必要な物では無い。それに戦闘に於いても使える戦術や得意な戦い方、ステータスバランスで同じスキルでも利便性がかなり変動する。確かに使えれば強いスキルは山程有るが、それら全てを無理に獲得するよりも、相性の良いスキルを揃えて自分に合った形の構成にした方が遥かに効率が良い。これが私がスキルを何でもかんでも集めない理由だ。分かったか?」

 

「……分かった」


 そう言ってアッシュは頷く。


「まぁ、進化するとスキルが馴染んで許容量に余白が出来るし、許容量自体も大きくなるから再度構築を練る事が可能になるがな。……次に“種族値”と“個体値”だ。我々魔物には“ステータス”と呼ばれる補正値が存在している。これは通常の物理作用の他に干渉力が加算されるもので、例えば生身で岩を砕いたり出来るのもこれが有るからだ。本来ならタンパク質の塊で岩を砕ける訳が無い」


「え?そうなの?」


「……そうだ。更にこれが無ければ存在出来ない魔物なんかも山程居る。ヤスデ姉さんなんかが代表例だな。ステータス補正が無ければ立ち上がるどころか呼吸すら出来ずに自重で潰れて死ぬだろう。そして“種族値”と“個体値”はこのステータスの上限と下限を設定する為に存在する概念だ」


 そう言ってトカゲは各ステータスの名前を振った棒グラフを描き、そこに二本の線を足す。


「これが私のステータスとする。そして、この一番下の線が種族値の下限。その上の線が種族値の上限。その更に上にあるグラフの最上部が個体値による限界値だ。要は種族値の上限の上に個体値が加算され、その総量がステータスの上限になる。これ以上は何をしても絶対にステータスは上がらない。進化を除いてな」


「……なぁ師匠。上限の方は分かったんだけど、下限の方は何でこんな中途半端な位置なんだ?この一番下が下限じゃないのか?」


 アッシュはそう言ってグラフの底面を指差す。


「いや、そこには絶対にならない。何度か試したが、ステータス補正が無くなるまで継承する事は不可能だった。恐らく魔物と通常生物を分ける基準がこのステータスの有無なんだと私は考えている」


「ふーん……」


「そして“種族値”だが、実は全く同じ種族でも値に大きな差がある。生まれたてのオークと戦士のオークを使って調べたのだが、同位階にも関わらず体感で約150倍程の差が有った」


「へ!?そんなに差があるんじゃ“種族値”なんて名前変じゃねぇか!?」


「確かにな。これは単純な加齢や成長の差だとは思う。だが共通点が有ったから“種族値”と名付けたんだ」


「共通点?」


「そうだ。種族値自体に差は有っても、その配分比率が完全に一致していたんだ」


「……え、えーっと……?」


「……要はステータスの高い場所と低い場所が完全に一致していると言う事だ。オークならHPとSTRとDFが高く、他が低い。どんなにステータス差が有っても、種族値に限ればその比率が一致する。つまり、その配分比率こそが種族的なステータスの特徴を表していると判断した。だから“種族値”と名付けたんだ」


「……う、うん……わ、分かった……」


「次に“個体値”だ。個体値は文字通り“個体によるステータスの差異”だ。流れでオークで例えるが、黒南風とかが良い例だな。奴はオークの中でもズバ抜けて高いSTRを誇っていた。これは種族値の比率配分を大きく上回る程で、その力はオークの領域を超えていたと言って良いだろう。これは奴の特異体質に起因するものだが、他にも走り続けたりするとSPDに個体値が加算されたりするし、瞑想してたらMATとMPが加算されたりと本人の行動で変動する。要は“種族値以上に努力と考察の余地が有るステータス補正”だ。だが、これも個体毎に一定の総量が存在する上に振れる幅にも個体差が有る。だから振り方が相当重要になる」


「……えーと……全部に均等に振れば良いんじゃねぇの?」


「それをすると器用貧乏になる。振れる上限が決まっている以上、“長所を伸ばす”か“短所を補う”かどちらを選択する方が効率が良い。私達の群れで言えばジャスティスは前者で、私が後者になる。ジャスティスはSTRとMPとSPDの三つに全振りしてて、私はMPとSPDの二つに全振りしている。まぁ、私の場合はSPDメインだがな」


「師匠デカいもんな……」


「ああ。初期状態だと流石に鈍重過ぎて話にならん。だから欠点を補う為にSPDに個体値を振った。逆にジャスティスは長所を伸ばした。MPをメインに振る事で覚醒解放の使用回数を上げ、そしてSTRとSPDで通常戦闘を行う。ジャスティスは種族値にも恵まれてるからな。HPとDF以外のステータス全てがかなり高水準だ。その分その二つはかなりお粗末だが、アイツは避けるし近寄り辛いからデメリットをメリットが遥かに上回っている。……まぁ、講釈はこれくらいにしておこう」


 そこで区切ると、トカゲはアッシュの肩に振れる。


「師匠?」


「“継承”」


「!?」


 アッシュは次々と跳ね上がって行く自分のステータスに驚く。


「……取り敢えず、全ステータスを種族値の上限まで継承させた。これでお前は長期間修行してその位階に馴染んだ奴とスペックだけなら匹敵する」


「凄えぇぇぇぇッッ!!……あ、でもじゃあ師匠のステータスが下がったんじゃねぇのか?」


「心配するな。いざとなったらオーク達から回収出来るし、狩りもするからその内元に戻る。だが、急に変動したステータスに慣れるのはそう簡単では無い。私は何度もこの感覚の変化を経験しているが、お前は初めてだ。結構苦労すると思うぞ」


「大丈夫だ!!任せてくれ!!」


「……今一安心出来ないが、その気概は認めておこう。知っての通り、私は典型的な獣型ビーストタイプの魔物だ。身体能力とスキルでゴリ押す事が得意で、お前に武器を使った戦闘を教える事は出来ない。だが幸いにもお前は父親から武芸の手解きは受けている。後はそのステータスでそれを十全に使い熟せる様になれば森でも十分に通用する様になる筈だし、武芸は無理でも戦い方は仕込んでやれる」


「そうか!!うぉぉぉ!!スゲェェェ!!」


「……止めろ。なんか不安になる。……まぁ、最初に“お前の覚醒解放は微妙だ”と言ったが、成功時の効果自体はかなり強い。リスクとコストに見合うだけのものだと言って良いだろう。だがそれでも格上との戦闘はかなりキツい。それはお前も分かるな?」


「ああ!」


「だから戦闘の組み立ては必須だし、その為に応用力のある攻撃手段が必要だ。幸いにもお前達ゴブリンの種族値はかなり平均的で、その分個体値による多様性を持たせる事が容易になっている。……と言う事でアッシュ、これまでの話を踏まえた上で実は試してみたい構築があってな。……お前が良ければそれを試してみたいんだが、構わないか?」


「分かった!!全部任せる!!」


「……ちょっと待て、お前私の話どこから分からなくなった?」




ーーーーーーー






「“ハイスラッシュ!!”」


 アッシュは攻撃スキルを使用して再びバルドゥークに斬りかかる。


 “ハイスラッシュ”はSTRに高い補正値が掛かる攻撃スキルで、アッシュの物理攻撃系のスキルでは高火力のものの一つだ。


 しかし──




 ──ガキィンッッ!!──




「!?」


 響く金属音。


 バルドゥークが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「……なっ!?」


 驚愕するアッシュ。


 バルドゥークはそんなアッシュを心底面白そうに見て笑う。


「クックック……。何を驚いている……?……ひょっとして……“スキルまで使ったのにどうして!?”とか……思ってんのか……?」


「……ッ!!“追従せよ!!”デカログスッッ!!」


 魔剣の効果で密着状態から再度ハイスラッシュを放つアッシュ。

 しかしバルドゥークは多少下がる程度で押し留まり、そしてそのままアッシュを大剣ごと弾き飛ばした。


「ぐッ!?」


 尻餅を突くアッシュ。


 バルドゥークは鉄槌をアッシュに向かって突き付け、そして告げた。


「……言っただろ?……“前菜だ”ってな……。スキルを使っても……それを上回るステータスなら……容易く防げる。……つまり……テメェ程度じゃ俺の足元にも及んでねぇんだよッッ!!」


「!?」


 アッシュへと迫り来るバルドゥーク。




 “このままじゃ勝てない”



 アッシュは素直にそう思った。


 バルドゥークの言う通りだ。

 奴のステータスは()アッシュを圧倒的に上回っている。いや、それだけじゃなく技量でもアッシュよりも遥か格上だ。場数だって全然違う。


 戦士として、確かに足元にも及んでいないだろう。










 ──だが、()()()()()()()()()()()()()










「“ギガフレイム”ッッ!!」


「!?」


 バルドゥークの視界を突如巨大な炎が包む。


 バルドゥークは慌ててそれを躱すが、その先には剣を構えたアッシュが待ち構えていた。


「“スラッシュ”!!」


「!?」



 ──ザシュッ!!──



 バルドゥークの腕から血が流れる。


 首を狙った一撃に合わせ、咄嗟に左腕を差し込んだからだ。


 アッシュはそのまま距離を取ると、バルドゥークに向かって言った。


「……糞硬ぇな……。スキル使っても薄皮一枚くらいかよ。まぁ、それならそれで死ぬまで刻んでやるけどな」


「テメェ……戦士職じゃねぇのか!?」


 そう言ってアッシュを睨みつけるバルドゥーク。


 アッシュは左手から炎を生み出すと、それをバルドゥークに見せる様に突き出した。




「誰がそんな事言ったよ?……俺は、“()()()”だ」





ーーーーーーー

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