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騎士団の排斥


 用意といっても、俺に鎧や兜はなかった。急だったというのもあるが、仮にも救世主候補に対する扱いがそれでいいのだろうか。


 俺自身は自分の命が惜しいのでどうにも落ち着かない気持ちだったが、女騎士はそうでもないようだ。


「よし、それじゃ作戦を説明する。.......その前に、お前に今回の作戦のメンバーを紹介しなければな」


 冷淡な女騎士はそこで少しだけ相好を崩した。


「私はレギーナ、このガパス共和国騎士団の団長をしている。一瞬でもこの騎士団に所属するからには、私の命令には絶対服従だ」


「あー、俺もいいっすか?」


 すると、あの軽薄そうな印象の騎士が手を挙げる。


「俺はシュナイダーって言って、一応副団長って言われてるけど、経験が長いだけで何の権限もないからまぁ気軽によろしく」


 一息に言ってしまって握手を求めて手を突き出してきた。


 俺は握手に応じながら、こんな奴が副団長で大丈夫なのか、と考える。レギーナが堅物ゆえにバランスを取っているにしても、もう少し適任者がいる気もするのだが。


「あ、俺はエリックね。まだあんまり戦闘経験はないけど、まぁ心配しないでくれたまえ」


 先ほど訓練場で俺が頭を叩かれるのをニヤニヤ見ていた男だ。


 くるくる巻かれたその銀髪と口調を見る限り自尊心は高そうだが、少ない経験でこの騎士団に入れるということは相当な実力の持ち主と見て間違いないだろう。


「そんで、最後は.......あー、クラリスか」


 シュナイダーがもう一人、レギーナの後ろに少し隠れるように立っている白髪の少女に声をかける。少女といっても18歳ほどで、ユキと歳が近そうだ。


「.......クラリス、です。よろしくお願いします」


「おいおい、そんなのじゃ困るぞ?今回は.......いや、今後においてもお前が間違いなく、作戦のキーパーソンになるんだから」


 レギーナが呆れた様子で肩を叩くが、クラリスと名乗った少女は怯えているようで要領を得ない。


 こんなメンバーでこの騎士団は本当に大丈夫なんだろうか。


「.......まぁいい、とにかく作戦を説明する。と言っても、要は一つだけだ。『前に進み続けろ』」


 レギーナは語気を強めて言った。


「こいつ.......タイガというらしいが、こいつの持つ勇者の剣の能力は、敵の親玉にこそ使うべきだ。我々が束になっても到底敵わないであろう逢魔にな」


 逢魔の社会は実力によってのみその地位が定められる。


 歳を取り力のなくなった逢魔は淘汰され、新たな強い逢魔がその頂点に就く。そうした支配体系の果てに、一つの地域を治める、いわゆるボス猿の位置の逢魔は他の逢魔とは比べ物にならないほど優れた知性と戦闘能力を持つ。


 そして彼らは、自信を他の逢魔と区別するため自らに名をつけ、誇示するという特徴がある。


「もう常識だろうが、『名前のある逢魔』に出逢ったらすぐに剣を抜け。それがお前が倒すべき敵だ」


「それ以外の敵はどうするんだ?」


 シュナイダーがぷらぷらと手を挙げる。


「そこだ。もちろん敵のアジトに突っ込むんだ、逢魔は二匹や三匹ではないだろう。.......だが、全て無視しろ。敵の頭が死ねば、他の逢魔はパニックに陥って勝手に潰し合ってくれる。とにかく頭を取ることに集中して、前に進むんだ。.......そして無視できなくなった時は、我々の中から一人ないしは二人を置いて行く」


「何だって!?」


「もちろん、そのような事態を起こさないために全員で最善を尽くすんだ。.......そして今回の肝は、クラリス、お前だ」


 レギーナに名指しされ、クラリスがビクッと肩を震わせた。


「お前の異能.......‘’救世主の献身‘’(メシアプロテクト)』は、自分以外の一人に絶対防壁を張る。今回はそれをタイガにだけ使え」


「.......え?でも、今までは皆に.......」


「俺たちはいくらでも替えが利くが、彼はそうはいかない。この騎士団の命全部よりも、こいつの命の方が重い。そういうことだよ」 


 エリックが微笑する。


 だが、その眼は1mmも笑ってはいない。


「まぁ心配するな。勇者様の手を煩わせるまでもなく、全部俺が殲滅してやるから」


 そして、俺への当てつけも忘れない。


 少しの辛抱だと自分に言い聞かせても、元来こういうものに耐性のない俺の眉間に皺ができる。


「もちろん、本当にできるならそれがベストだ」


「お任せあれ、団長」


 レギーナの俺への視線を見るに、どうやら完全アウェイってことらしい。



 どうでもいいが、頼むから失敗だけはしないでくれよ。

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