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第2話 最後の1日 後編

「さぁ、アイナ。時間よ。行きましょ」


「私、フェリシアにお別れを言ってくるわ」


 そう言うとアイナは、フェリシアのドアの前で話しかけました。


「ねえ、フェリシア。本当にお別れよ。最後にもう一度あなたの顔を見てちゃんとさよならを言いたかったわ。本当は私・・・」


「何も聞きたくないっていってるでしょ!さっさと帰ればいいじゃない!早く帰りなさいよ!」


「さよなら」


 アイナは悲しそうにそう言ってみんなのもとに行きました。


「おじさん、おばさん、本当にありがとう。料理とてもおいしかったわ」


「こちらこそ楽しい時間をありがとう。元気でね。体に気をつけるんだよ」


 ビリーがやさしく言いました。


「アイナ。あなたに会えてよかったわ。フェリシアのこと、許してあげてちょだいね」


「もちろんよ、アニーおばさん。だって私たち、友達だもの」


「さぁ、ぐずぐずしてるとトンネルが消えちゃうわよ。行きましょ」


 アイナ、ルーシー、リックスの3人は、トンネルに急ぎました。


 フェリシアは、その様子を窓からこっそりとのぞいていました。本当にこのまま別れてしまっていいのかと複雑な気持ちでした。


「フェリシア、あなたは間違っているわ。」


 キラキラと不思議な光が輝くと同時に、そこに妖精の女王が現れました。


「女王様・・・」


「ねぇ、フェリシア。さっきアイナが何を言おうとしていたかあなたにわかる?」


「・・・・」


「あの子は本当はここに残りたかったんじゃないかしら。」


「え?・・・そんなことはないわよ。だってアイナは自分の家が1番落ち着くって言ってたもの」


「ええ、そうね。でもね、あの子は迷っていたのよ。家に帰れば独りぼっち。ここでみんなと仲良く暮らせばどんなに素敵だろう。でもおばあさんのお墓をほったらかしにはできない。だからフェリシア、あなたにここに残ってほしいって言ってほしかったのよ。そうすればあの子はここに残ることを決心したと思うわ。あなただってここに残ってほしかったんでしょう?でもそれを素直に言えなかった。だからこうして部屋に閉じこもるしかなかったのよね。今ならまだ間に合うわ。さぁ、早く行きなさい。そして自分の本当の気持ちを伝えるのよ」


 そう言うと女王は姿を消しました。


 フェリシアはトンネルへと急ぎました。その顔に、もう迷いはありませんでした。


「ああ、私はなんてバカなのかしら。何でアイナの気持ちをわかってあげられなかったのかしら。何で素直に自分の気持ちを伝えられなかったのかしら・・・」



 その頃アイナたちは、トンネルの前で最後のお別れをしていました。そこには、さっきまでフェリシアの部屋にいたはずの妖精の女王もいました。


「ああ、とうとうみんなともお別れなのね。みんな本当にありがとう。みんなに会えてよかったわ」


「あなたのことは忘れないわ」


 ルーシーが言いました。その目にはうっすらと涙が光っています。


「元気でな」


リックスが言いました。


「みんなさようなら」


 そう言ってアイナがトンネルに入って行きました。その時です。後ろから叫び声がします。それはフェリシアでした。


「待ってアイナ!いかないで。ずっとここにいてちょうだい。お願いよ!」

 


 トンネルはどんどん薄くなっています。フェリシアがもうだめかと思ったその時でした。そこにアイナの姿がうっすらと見えたのです。それに気づいたフェリシアは、必死にアイナの手を引っ張りました。それと同時に虹のトンネルは完全に消えてしまいました。次に虹のトンネルが姿を見せるのは100年後。もう二度とアイナは、おばあさんとの思い出が詰まったあの家には戻れないのです。


「よかったの?本当にこれでよかったの?」


 フェリシアは何回も確かめるように言いました。


 アイナは、そばにいた女王の顔を見つめました。


「何も気にすることはないのですよ。あなたがそう決めたのなら私は何も言いません。村の人たちもきっとやさしく受け入れてくれるでしょう」


 そう言って女王はやさしく微笑みました。


「アイナ!!信じられないわ。まだ夢のようよ。本当にこれから毎日いっしょにいられるのね」


 フェリシアは泣きながら言いました。


「ええ、そうよ。もうどこにも行かないわ。もしかしたらシャボン玉をつかまえることができたおかげかもしれないわ。これからもよろしくね」


「本当によかったわ」


 ルーシーも嬉しそうに言いました。


 「まぁ、よかったよ」


 リックスは照れくさそうに言いました。


 こうしてみんなは、笑顔で村へと帰っていきました。その姿をやさしく見つめていた女王のもとに、遠くから見ていたグリムがやって来ました。


「私がフェリシアに言ったことはよけいなことだと思いますか?グリムおばあさん」


 女王は静かに言いました。


「それでよかったんじゃないかね。あんたが何も言わなくても最後はああなると思うよ。それがあの子たちの運命なのさ。死んだアイナのおばあさんも、あの子が独りで暮すよりもこのほうが安心するだろうしね。でもこれからが大変だよ。あの子はしょっちゅう問題を起こすだろうからね」


「そのわりにはずい分と嬉しそうね」


「年寄りの楽しみが1つ増えたっていうことさ」


 そう言ってグリムが笑いました。






 アイナが戻って来たのを見て、アニーやビリーが喜んだのは言うまでもありません。アイナはフェリシアの家に泊めてもらい、仲良く2人で眠りました。



 2人が気持ちよく眠っているそのころ、何やら大人達が集まって話をしていました。


「さぁ、明日はいそがしくなるぞ」


 そう言って長老は楽しそうに笑いました。


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