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帽子男の短編集

なう

作者: 帽子男

 ツイッターにはまっている男がいた。基本的にはつぶやく事はしないが他人の見るのが趣味なのであった。

そんなある日奇妙なツイートを見つけた。フォロワーは自分一人だけ、しかし男はその人物をフォローした記憶はない。つぶやいている内容は「出勤なう」「帰宅なう」など平凡なものばかり。しかし、男が奇妙に思ったのは内容ではなく時間だ。ここ最近のツイートを見てみるとすべて自分の起きた時間、家を出た時間、会社に着いた時間、そして上司に褒められた事まで書いてあるのだ。まるで自分をずっと見ているかのような。初めはたまたまツイートしている人との出来事が重なっただけだと思いそこまで気にしてはいなかった。しかし、最近ツイートの内容が詳細になってきているのだ。例えば「××会社に行き企画と違うと文句をつけられた、なう」、「飲み会に行った店のポニーテールの女定員がすごくかわいい、なう」などだ。男もだんだん気味が悪くなり同僚に相談した。


「最近、変なツイートを呟くやつがいてさ」


「へー、どんな?」


「書いてる内容は普通なんだけど、全部自分のした事や考えたことを呟いているんだ。なんだかもう一人の自分がいるみたいに」


「そんな事あるわけないだろ。気のせいじゃないのか」


「いや、これを見てくれ。この××会社に行った日、時間、それに怒られてしまった事すべてあってるんだ。どう考えてもおかしいだろ」


「まさか、たまたまだよ。もしくは疲れているんだな、有給でも取ってしばらく休んだらどうだ?」


 と、まともにはとりあってくれない。確かに疲れているのかもしれないがどう考えてもおかしい、そう男は考えた。スマートフォンが振動する、また新しいツイートが来たらしい。「同僚に軽くあしらわれた、なう」と書いてあった。男は背筋が凍りついた。そしてそれを同僚に見せる


「これを見てくれ。このタイミングでこの呟きはおかしいだろ」


「えー、どれどれ。同僚にあしらわれたなんてよくある事だと思うけどな。あんまり気にすんなよ、剥げるぞ」


 と言って同僚はどこかに行ってしまった。やはり、誰かが俺を監視している、男はそう思った。


 それから、しばらくして男は有給を申請して休みを取った、申請はすんなりと通った。周りのからも彼は最近変だと噂が立った為だ、上司からも


「最近スマートフォンばかり気にして落ち着きがないぞ、一体どうしたんだ」


「誰かが私を監視しているのです」


「何を言っているんだ、そんな事あるわけないだろう」


「いや、これを見てください。自分の生活がここまで細かく書かれているなんておかしいです」


「どれ…、なるほど。もしかしたらストーカーかもしれないな。よし、分かった。とりあえず、休め。それで休んでいる間に警察に行って捕まえてもらうといい」


 と、優しい言葉をかけてもらって有給を取ることになった。それから、男は警察に駆け込みツイッターを見せた。しかし


「すみません。何か実害がないと警察は動けないのです」


「もう実害はでているじゃないですか。いつも監視させられて精神的に参っているのです」


「直接的な被害が出ないと動くことができないのです。例えば何かで傷つけられたとか、現実に付きまとわれているだとか。ツイッターのツイートだけで動く事なんてなかなかできなのですよ」


 と警官はとりあってはくれなかった。確かに実害はないかもしれないが四六時中見られている恐怖というのは恐ろしいものだ、と警官に何度訴えても聞き入れてくれはしなかった。最後には男は警官に「業務執行妨害で捕まえますよ」と言われてしまうのだった。男はトボトボと帰り道を泣きながら帰った。ツイッターを見てみると「警察官がとりあってくれない、なう」「最後は業務執行妨害で捕まえると脅された、なう」「号泣、なう」と書かれていた。それを見て男は何ながら走った。単純に怖かったのだ、もしくは自分以外の皆がイジメてくるようなそんな気がした。


 次の日、男はいつもの出勤時間よりかなり遅くに起きた。そして、ツイッターには「いつもより遅く起きたなう」ときっちり書かれていた。男はあの後は怖くて一人でずっと気分を紛らわせよう酒をずっと飲んでいた、さすがに飲みすぎたのかかなり頭が痛く体もだるい。とりあえず今は風呂にでも入ろう、と湯船に熱めの湯が張るのを待った。待っている間男はなんとはなしにツイッターを見ていた。気のせいではないな、やっぱり誰かが私を見ている。しかし、一点気になる点がある。自分しか分からないことがあまりにも多すぎるのだ。「飲み会に行った店のポニーテールの女定員がすごくかわいい、なう」や「上司に戦敗させてしまって申し訳ない、なう」などだ。自分の感情が入りすぎている。なぜこんなツイートをしているのだろ。

考えれいるうちに「お湯が入りまた」と音声で伝えてくれたので、バスルームに入る。

 体を洗い、ゆっくりと湯船につかる。バスルームから出るとスマートフォンが洗面所のわきに置きっぱなしになっていた。スマートフォンが鳴りツイッターにが開かれる。

 「いま目が合った、なう」

 鏡を見るとそこにはニヤリを笑う自分の顔があった。 

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