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ループラインの軌跡  作者: リノ バークレー
8/72

2-7(8)

 朝10時、普段より丁寧にヒゲを剃り、鼻歌まじりにいつもより 

たっぷり時間を掛け少し淋しくなった髪をセットした。

 小さな簡易クロゼットを開け普段着の少なさに驚くも今から新たに

買い揃える時間もなく、不本意ながらもいつものスーツに身を包み

寮を出た。

 道中どんな話をしようかとあれこれ考えるも社内、プライベート共に

交流がほとんどない僕にとってさして話題などなくその場の雰囲気

に委ねることにした。

 会場は商業ビルの最上階の1室で、パーティー開始時間の10分前

とあって同じような年齢の男女がビル入り口付近に集まり始めていて 

エレベーターの中ではあえて24階のボタンを押す必要もなく到着した。

 会場入り口付近で身分証を提示した後会費を払い、胸に付ける番号

とプロフィールカードを受け取り、スタッフの方の案内で窓際にある

長テーブルに向かった。

 早速プロフィールカード作成に取り掛かり名前、住所、電話番号、

職業まで記入したが年収の欄でペンがピタッと止まってしまった。

 正直に書かなきゃいけないのかな? 

 とても恥かしくて書けない。

 悩んだ挙句空欄としたが趣味、自己アピールなど書く事がいっぱいで

あっという間に開始時間となり司会らしきスタップの女性が

パーティーの概要を説明し始めた。

 会場中心部には細長いテーブルをはさんでお互い向かい合う様

椅子がセットされ、それが会場を2分するかの様に縦に繋げられ、

男女それぞれ窓側から番号順に座って下さいとの事。

 僕は7番なので窓から数えてちょうど7つ目の椅子に座った。

 司会の女性の号令と同時に目の前にいる女性とお互い 

プロフィールカードを交換し5分間のお話タイムがスタートした。

 パーティー開始当初5分じゃ絶対時間が足りないとシステム自体に

疑問を抱いたが実際のところそれで十分だった。

 なぜなら先ほどから女性が一切僕に目を合わそうとせず質問する

気配すらなかったからだ。

 なんとか変な空気を変えようとカードを見ながら必死に話しかけても

「えっ! ……あっ、はい」ばかりでなんとも歯切れが悪い。

 あまりこういう場に慣れてないのかな? なんて思ってたらすぐ 

司会者から号令が掛かり隣の席へ移動。

 するとまた女性が(うつむ)きぎみであまりしゃべってこない。

 ふと先ほどの女性を見ると僕の時の表情と明らかに違いやたら

楽しそう。

 そっか――、イヤな男性にはしゃべるのもイヤなんだ。

 ということは今目の前にいる女性も……、そういうことか。

 そんな風に感じだすと急に悲しくなり次第に目の前がぼやけだした。

 その後の僕は無意識のうちに隣の席、そして隣の席とまるで

意思を持たない商品のように回され続け、気づけばパーティー

の前半が終了していた。

 そして遂にパーティーは後半のフリータイムへと突入したが元々

社交性に乏しく、心がボロボロな今、とにかく一刻も早くこの場

から離れたかったったがそんな勇気もなくだだひたすら苦痛に 

耐え続けた。

 そして待ちに待ったパーティー終了時、当然のごとく僕は

カップル成立させる事なく、例え様のない脱力感からフラフラ

になりながらもなんとか会場を後にした。

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